第十話 息子の悲しみを永久に抱いて
……ここは!?なんで俺…こんな所に来てるんだ…
(夜の街に消えた俺は、気が付くと、昔、南雲本家に引き取られる前、両親と楽しく暮らしていた家に来ていた。その家は今では空き地になっていた。そして俺は、近くの公園のベンチに腰掛けていた。スマホの電源も切っていた。しばらく誰とも話したくなかった。そんな時に、霊界から語り掛けられて来た)
≪…澪、菫達が心配しているぞ?…≫
(霊界の家族達の言葉に、俺は菫達を再び悲しませてしまった事を申し訳ない思いを抱きながら、俺は鞄からスマホを取り出して電源を入れると、早速菫から電話がかかって来た)
澪さん!ご無事なんですか!?
(昔のあいつなら泣いていただろうな。でも六年経過したあいつは、本当に強くなったんだなと、でも慌てている所は変わっていないと思っていると、隣から、誠伯父さんが電話口に出て来られた。そしてその声は、少し怒ったような口調だった)
澪!!説教は帰って来てからする。今どこにいるかだけ教えなさい…それだけ知れればいい…
(公園のベンチに腰掛けながら、俺は夜空を見上げたまま、ポツリと通話をつなげて初めて語り掛けた)
…むかし…父さん達と暮らしていた家の前に…きて…ま…す…
(声を聞いた誠伯父さんは、怒った口調から優しい声色に変わり始めていた)
わかった。岬達とゆっくり会話して来なさい。菫ちゃんと麗華ちゃんの事は、お前が帰って来るまでの間、私が守っておくから安心しなさい…それではまたな…
(誠伯父さんが菫を宥める様に語り掛けて通話を切ってくれた。そして、俺は空き地になった空間を見つめ続けていた。すると、背中が温まる感覚に包み込まれると、優しい口調で語り掛けられた)
≪澪よ、先の女子との事を引きずっておる様じゃの…≫
(語り掛けて来たのは親父だった。他にも波長は感じられていた。前方の空き地を見つめながら、親父に対して受け答えをした)
…別に、あの女の事はどうでもいいんだ…どうでもな…
(親父と出会う前の無感情な声色で語り掛けると、親父の大きな手が近寄ってきて、雷でも落とさせるのかと思っていると、髪を優しく撫でてくれた。その暖かな感触は凍った心を解かす様に撫でられていた。それに俺は、自然と涙を流し始めていた)
≪無理をするでない…我が吾子よ、先の女子に対する未だに思いがあったからこそ、裏切りにも似た言葉に行いを…許せなんだろう?…≫
(夜風の冷たさを肌で感じながら、俺は親父の言葉を黙って聞いていた。自らでも忘れていた感情を、親父は見抜いて語り掛けて来てくれた。そんな親父の温かみのある言葉に、俺は涙を流して語り掛ける)
母さんが亡くなって…一人で懸命に生き続けていた。俺にとっては、あいつの言葉は本当に温かみを感じたんだ…
(深く愛し合ったからこそ、その裏切りの反動も大きかった。だからこそ、俺は長い事、女を愛せずにいた)
第十話書き終えました




