第七話 未来を共に見つめる者達との食卓
ああ、悪いな…帰り遅くなる…
(景の家で夕食を作り終えた時には、外は既に暗くなっていた。凛が景の看病に、寝室にお粥を持って行った後に、俺は菫に電話をしていた。帰りが遅いと心配するかもしれないと思い…)
「ええ、わかりました。凛ちゃんの事、お願いしますね…」
(電話口では、麗華が文句たらたらと言った感じで菫に詰め寄っている。その声が微かに聞こえて来ていた。そんな二人の微笑ましい模様が頭に浮かんでいる時だった。隣にいる駿も眠たそうにしていた)
遅くならない内には帰るから…またな…
(電話を切ると、俺は駿に毛布をかけてやっていた、その時だった。霊界から語り掛けられて来た)
≪澪、すっかり父親の表情になったの…微笑ましい事この上ない…事よ…≫
(霊界から語り掛けられて来た声は親父のものだった。俺があの人に出会ったのは、年も押し迫る大晦日前日の事だった。愛する女から裏切り行為にも似た事を受けた俺は、誰も信じられずにいた。そんな時に親父は現れた。あの人に出会わなければ、今の俺はいない…。だからこそ、あの人には感謝しても仕切れない恩がある)
…俺はさぁ…親父、…変われて来ているのかな…?景には、鋭い剣先が無くなったと言われた…。守りたいと思う物が出来たからかな?…
(景に言われて、俺は鏡を見てビックリした。自然と笑みを浮かべられている自分が、そこにはいたからだ。最初はこれが俺なのかと驚いていた。だが、菫や麗華、天河村に住まう者達全員が今では愛おしく感じられていた。そして親父は、とっても穏やかな声で俺に語り掛けて来てくれた)
≪澪、我が吾子よ…其方は変われて来ている。だが決して、それは己が弱くなったのではない。かけがえのない者、その者達を…得る事により…其方の世界の色は…灰色の世界ではなく…華やかな色同士達が混ざり合う、素晴らしき世界に生まれ変わろうとしている…それを決して忘れる事なかれ…我が愛し子よ…≫
(親父の言葉を受け取った俺は、駿の隣から立ち上がり、窓際まで移動して夜明かりが灯り始めている街を見つめながら、片目から自然と涙が流れ落ち始めていた。だからこそ、俺は感謝の思いの言葉を、親父や霊界にいる家族達に送りたかった)
…ありがとう……親父…そして…皆…
(語り終えた後に俺は目を閉じると、霊界の家族達から拍手喝采を受け始める。悪霊達に嫌になるほど、夢を、悪夢を見せ続けられて来た俺にとっては…家族からの拍手は微睡から目を覚ます様な拍手だった。その時、背後の駿が起き始めて来た)
……お腹空いた……
(寝ぼけ眼の駿は、目元を擦りながら起きはじめる。そんな駿に自然と笑みを浮かべて振り返ると、俺は夕飯を食べるのに食器を並べ始める)
第七話書き終えました




