第二話 母から子へ紡がれし思い
……貴方、まさか澪君!?
(東雲家の屋敷の前に到着した俺に語りかけてくる年めいた女性は、俺は直ぐに分かった。母の旧友の東雲小百合だった。彼女は俺の姿を見ると、俺に駆け寄って来ていきなり頬を叩いて来た。そして怒鳴り散らして来た)
貴方!!なんでもっと早くあの子の元に帰って来なかったのよ…そうすれば、あの子が一人で全てを抱え込むような真似しなくて済んだのに…。貴方も男なら責任を取りなさい!!
(小百合にビンタされた俺は、彼女がなにを言っているのか、直ぐにはまだ理解を出来ていなかった。そして騒ぎを聞き付けた、東雲家の面々がぞろぞろと出て来ると、小百合の元に駆け寄り始めた。そしてその中には、菫の父、巌雄の姿もあった。本来この男が村を治める厳の爺さんの後を引き継ぐ者と考えていた)
君、澪君に言いたい事は山ほどあるが、一先ず菫と君達の娘を迎えに行きなさい!!言いたくはないが、命令だ!!
(巌雄の言葉に俺は完全に混乱してしまっていた。君達の娘?俺と菫の娘だって言うのか…さっきポスターで見た菫が抱える娘が、俺と菫の子供!?それを理解した途端に、俺は菫達の元に向かう前に、菫の両親の前で土下座をした)
誠に申し訳ありませんでした!!何も知らなくて…言い訳は致しません…
(東雲家の皆様は、ただ無言で俺の事を見つめて来ていた。そこに下駄を鳴らしながら近寄って来る、一人の老人の声が聞こえて来た)
ようやく帰っておったか…この不届き婿が…。まぁ、全ては菫が望んだ事よ…。子を産む事を決めたのも、澪、其方に告げずに出産をする事を決めたのもな…。その時、あの者はわし等に土下座をして頼んできおったわ
(顔を上げて爺さんの方を向いた時に、俺の目に飛び込んで来たのは、悲しみと喜びが混同する表情だった。そして爺さんは菫がなんと言ったか教えてくれた)
私は、あの人のお荷物にはなりたくないんです。そして強き母になって、この子と共にあの人の元に行こうと思います。この村を後世の世に残すと、憐のお爺様と約束した。あの日の約束を共に果たすまで、私は立ち止まりません!!
(俺は、その話を爺さんから聞きながら、目頭が熱くなるのを感じていた。そして両膝を地面につけながら両手の拳を強く握り、爺さん達の方を見つめて語り出す)
俺も昔、霊界の親父達に言われた事があります
(目を閉じて遠き日に親父達に言われた言葉を思い返していた)
≪古き悲しみを切り捨てるのではなく…幸せな思い出を共に歩む者達と、辛き思い出を超える思い出を紡ぎなさい。そして一人で抱えるのでなく私達に吐き出しなさい…≫
(目を閉じながら俺はゆっくりと立ち上がると、目を開いて小百合、巌雄、そして杖を持ちながらこちらを見ている厳の爺さんの厳しい瞳にも臆する事無く、強い口調で語り出した)
菫と娘を迎えに行って来ます!!
(使用人の方達も幸せそうに拍手をしながら、俺の背中を見送ってくれた。そして菫の父と母は肩を抱き合いながら、こちらを見つめていた。そして俺はメットを下げてバイクを走らせた。菫の向かった。娘のいる幼稚園に向けてバイクを走らせて行った)
第二話書き終わりました。




