第六話 豪雨の中の悲報
(洞窟を飛び出た俺に、霊界の親父や友人達は何度も声をかけて来ていたが、俺は強い口調で返答した)
あの婆さんが、どんな思いで自らの主を屋敷から送り出したと思っているんだよ!?そんな婆さんまで、この山で死なせる気かよ!!
(使用人の婆さんの想いを俺は胸に抱きながら、登って来た山道を全力で下り続けていた。その時だった。視界に一瞬人影が見えたと思い立ち止まり、その人影を探していると、土砂降りの雨の中で、使用人の婆さんが樹木にしがみ付いている姿を発見した。俺は婆さんの傍に駆け寄って行った)
大丈夫か!?なんでこんな土砂降りの雨の中、山に入って来た…
(婆さんの身体を支え始めると、完全に身動きが取れない程に豪雨になって来た。婆さんと樹木にしがみ付いていると、婆さんは豪雨の中で小さく囁いて来た)
憐様にもう会えない気がしたんです。ですから、私、あなた達が出かけられた後考えていました。そんな時に雲行きが怪しくなって来たのが見えたものですから、お迎えに上がろうとしたんです…
(婆さんの言葉を受け取った俺は、虫の知らせか婆さんも爺さんが老い先短い事を知っていたんだな、現に婆さんの腕の中には、何かを大事そうに抱きかかえてあった)
その抱えている物は一体なんなんだ?…
(婆さんは少しだけ自らが濡れているのにも関わらず、抱き抱えて居た物を見せてくれた)
これは……合羽か?
(確かに濡れてしまった合羽では効果も半減してしまう。そして合羽の数を数えた時に、俺は婆さんに伝えるか悩んでしまう)
憐様?どちらに居られるのですか?あの御老体では体を冷やしては命にかかわってしまいます。急がなくてはいけません!!
(その言葉を俺は無言のまま婆さんの手を抑え始める。そして無言のまま、首を横に振って見せた)
えっ……憐様がどうかなされたのですか!?
(婆さんの身体は、寒さなのか震え始めていた。だから婆さんに合羽を羽織らせる)
もう…爺さんは……いないんだ…
(その言葉に持っていた合羽を地面に落とし始める。その後、婆さんは菫が居ない事を読み取って、違う解釈をしてしまう)
……菫様とお山を降りられたのですね…それなら…私達も……
(その言葉に俺は婆さんの両肩を力強く掴んで、真剣に見つめた。豪雨の中で、雨の音で声が聞き取れない中、俺は怒鳴り知らす様に語り掛けた)
爺さんは…死んだんだ…北条小夜の墓の前で…。幸せそうな笑顔だったよ……
(その俺の言葉を聞いた婆さんは、真実を直ぐに受け入れられなかったのか、俺に向かって怒鳴り散らして来た)
なんで!!お屋敷で最期を迎えさせなかったのですか…憐様のご遺体は何処にあるのですか!?
(あの優しかった婆さんが、態度がまるっきり変わり始めてしまう。俺の事を睨み付ける様に、婆さんは睨みつけていた)
第六話書き終わりました。




