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絶対殺すガール(24)  作者: ロッシ
第七話 フードコートの激闘
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絶対殺すガール=かささぎ 7-1

 上階から万が一でも襲撃がないとは限らない。

 レッドチームの三人は、慎重に、けれど素早く、長いエスカレーターを登りきった。


 三階通路も、二階と同じく吹き抜けを囲むように設置されている。全く同じような造りだ。

 破砕し飛散したガラス片や、無数に転がる薬莢の山の中、吹き抜けを囲むように点々と人間が倒れている。


『微量な呼吸による流体は観測不能だけど、少し時間が空いてるから体温に差が出始めてるよ。三十五度を下回っているのは十一名。残りの四名の生存者の場所を送ったよ』


 かささぎのクレホ内に表示される俯瞰図に、四つの光が点滅を始める。

 三人は散開すると、生存者の手足をを結束バンドで拘束し……とは言っても、全員が全員、脊椎を銃撃されており、一命こそ取り留めてはいるが再起不能だろうが……エスカレーター脇に集めて転がした。


「ここまでで殲滅したテロリストは二十一。残りは少なくて十。多ければ八十か」


 VBが通路の先に視線を移す。

 吹き抜けをもう一つ越えた、次のエスカレーター広場の脇。

 吹き抜け通路から直角に伸びる通路の先に、フードコートはある。


「八十はないな。そこまで人員に余裕があれば、この騒ぎに増援が来ない理由がない。敵襲に対し、攻勢ではなく守勢に回るのは、少数で迎え撃つ時だ。残存勢力は十五から多くて二十程度だろう。人質を確保しつつその周囲を固めてると見るのが妥当だ」


 かささぎの意見にVBも同意する。


「だろうな。各出入り口を固めてた人員を招集してると考えても、その程度だろう。ま、バリケードを張ってるとして、フードコートなんつー場所は開けてるもんだ。絶対の跳弾なら、入口から狙撃で仕舞いだろ」

「その件だが、伝えておくべきことがある」


 VBの脇にしゃがみ込み、テロリストの死体を順に回ってハンドガンから銃弾を抜き取りながら、かささぎが言う。


「跳弾仕様の弾丸のストックが底をついた。今後の戦闘は私もこっちの普通の弾丸を扱うことになる」

「えっ!? マジすか!?」


 その告白に真っ先に反応を示したのは渡名喜となきの方だった。


「緊急招集だったからな。ちょうど在庫が減っていて、納品前だった」


 途端に渡名喜もまた、テロリスト達の自動小銃をかき集めると、銃弾を補充しだす。


「あんたを頼れないってことは普通に乱打戦ってことだろ? たまんねーな。弾がいくらあっても足りやしねーっす」

「おう、いい心がけだ。戦場で誰かを頼ろうとすんのが間違いだったな。俺らも少しは頑張るとするか」


 VBもまた、笑いながら落ちてるマシンガンからマガジンを抜き取ってポケットに詰め込んでいた。


 

 ーーーフードコートに繋がる通路。曲がり角で牽制を行いながら進んでいく。

 通路は無人。

 眼前に広がるフードコートの出入口にバリケードはなし。そして、フードコート内部にも人影はない。

 フードコートは大まかに見れば、通路に並行するように横広に伸びた造りとなっている。

 出入口を入ると、そこから左手に向かって奥行のある空間が広がっている。

 見える範囲にテロリストがいないということは、つまりは奥の方に固まっていると見て間違いないだろう。


「待ち伏せされてるんすかね?」

「だろうな。フードコートに入った瞬間に集中砲火ってとこか」


 向かって左側の壁に背を預け、腰を落としながら進む三人。

 飛び出すのは危険だ。

 何か囮でも投げ込んで様子を見るかと相談をしている時だった。


「ここから入るぞ」


 最後尾のかささぎが、壁の扉を開ける。

 そこは、フードコート入口脇に構える、ラーメン屋の従業員口だった。

 敵は恐らく通路に集中力を傾けていると見られる。

 であれば、ラーメン屋の厨房から侵入しカウンターから飛び出せば、若干の奇襲にはなり得るだろう。


「いいアイディアだ」


 先陣を切ってラーメン屋に滑り込んだかささぎに、VBと渡名喜も続く。


 厨房内は暑かった。

 緊急かつ強制的に退去させられたせいで、コンロの火が消されてなかったのだ。


「おいおい、他のテナントもこんな状態か? 急がねーと火事による二次被害なんつーのも起きかねねーぞ」


 ガスの元栓を捻りながらVBが苦言を呈している。

 かささぎは一直線にカウンター下へと進むと、身を隠しながらソフトキャンディ大の小型カメラをカウンターの上に取りつける。


「おい、絶対の。食うか?」


 背後からのVBの呼びかけに振り返ると、そこには冷蔵庫から失敬したと見られるチャーシューの塊が差し出されていた。


「このチェーン店のは旨いぞ」


 受け取った棒状のチャーシューを抱え込むと、かささぎはインカムの向こうにいるウイに向かって話しかける。


「繋がるか? 敵策を頼む」

『OK。繋がってるよ。ちょっと待ってて。二分かかるから』


 相棒の返答を聞き遂げると、かささぎはカウンターに背を預けて、脂ぎったラーメン屋の厨房に腰を降ろす。

 そして一息だけつくと、冷えて脂の固まったチャーシューの塊にかぶりついた。


「どうだ? 旨いか?」


 同じく調理台を背にし、手負いの左脚を投げ出しながら座るVBが問いかける。

 かささぎは口内の体温でとろける脂分と、しょっぱくて歯ごたえのある豚肉を噛み締めながら、軽く頷く。


「そうだろ、そうだろ。で、索敵完了まではどのくらいだ?」

「二分だそうだ」

「そうか。じゃ、少しでも身体を休ませとけ」

「ああ」


 かささぎはゆっくりとチャーシューを咀嚼そしゃくしつつ、VBへと話しかける。


「おい、レッドツー。お前、こういうの、詳しいのか?」


 チャーシューを軽く掲げながら、そう尋ねる。


「あ? まぁな。俺の趣味はラーメン屋巡りでな」

「そうなのか。……おい、これが終わったら、私も連れてけ」

「おう、いいぞ。とびきり旨い店だけ連れ回してやるよ」

「そうか。楽しみだ」


 その二人の会話に耳を傾けつつ、渡名喜はやはりわびしそうに携行食レーションを口に運んでいた。


『お待たせ、かーちゃん。索敵完了だよ。ちょっと言いにくいんだけど、そのフードコートは広すぎて手元の機器じゃ全域までは索敵不可能だったの。やれてて手前半分のみかな』

「奥は目視か?」

『ごめん。そうなる』

「まぁいい。その代わりお前は随時、敵策を怠るな。移動に合わせて奥を探れ」

『分かった。じゃあ、手前のマップを送るから』


 ウイの言葉からほんの僅か遅れて、かささぎのクレホに俯瞰図が表示される。


「俺にも見せてくれ」


 かささぎに覆い被さるように、VBと渡名喜もクレホを覗き込む。


 ウイの作成したマップによると、フードコート内のテーブルや椅子を利用したバリケードが、奥に向かって三箇所、互い違いに配置されており、その背後にはそれぞれ三名ずつのテロリストが潜伏してるとのことだ。


「ま、特に変わった点もねー、至って普通の布陣だな」

「とりあえず手近なバリケードを奇襲で制圧して、そこを拠点に徐々に奥に攻め込む流れっすかね?」

「セオリーだな。だが、問題は人質の安否だ。現状、生存が確認できてねー。もし生きてたとしても、こっちが時間をかけて攻め込めば、それだけ相手に人質をどう使うべきか考える猶予を与えることになる」

「最悪は盾として利用されるってことっすね?」

「ああそうだ。俺達の任務はかなりふんわりしたものだが、それでも究極は人質の奪還が成功条件になるだろう。人質に危害が加わるのは旨くねーな」


 頭上で交わされる会話に辟易したかささぎが、二人を振りほどいたと同時だった。


『こちらグリーンワン。レッドチーム、聞こえるか?』


 渡名喜の警察無線から、マグワイア警部の声が漏れ聞こえてきた。

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