表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

終わらないかくれんぼ症候群

作者: たなか

「俺は……やっぱり……かくれんぼ病なんでしょうか?」


「今のところ、まだ断定はできませんが、その可能性が高いでしょうね」


 診察室で向かい合う男と医師。かくれんぼ病、正式名称「終わらないかくれんぼ症候群」は数年前から突如として世界中で流行し始めた奇病です。この病を発症したものは、自分の知人、友人、恋人、家族等がある日突然、煙のように姿を消したと主張します。彼らの証言は非常に鮮明で、あたかもその失踪した人物が本当に実在しているかのように思われます。


 しかし、実際には患者以外、誰一人として失踪者、及びその家族のことを知る人間は確認されていませんし、また戸籍謄本や教育機関の卒業名簿など、いかなる公的記録にもその存在は記載されていないのです。この紛れもない事実を告げられても患者は納得することができず、陰謀論のような妄想に縋ろうとする場合がほとんどです。


「テレビやネットで散々目にしてはいましたけど、まさか自分が発症するなんて夢にも思いませんでした……俺、3歳の頃からアイツのこと知ってるんですよ? 好きな映画に嫌いな食べ物、嘘をつくときのクセ、笑い方……初めてのデート、プロポーズの言葉だって……この記憶も思い出も全部、俺の脳が創り出した、ただの妄想だっていうんですか!?」


「……どうか、落ち着いてください。混乱なさるのは当然です。とりあえずいくつかお薬を処方しますので、しばらく様子を見ていきましょう」


 男は肩を落としたまま診察室を後にします。残された医師は、一人溜息をつき、自嘲気味に独り言を呟きました。


「……大丈夫ですよ……きっとあなたもいつか全てを忘れて、日常に戻れるようになりますから……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 「いつか全てを忘れて、日常に戻れるようになりますから」って、複雑な言葉ですね。幻を現実と混同してしまうのは恐怖ですが、同時に切ないことでもあるんだなと思いました。
[良い点] とても短い作品の中で 得体の知れない奇病の妙な恐怖が 伝わってきました。 これって・・・ 隠れたのか 隠されたのか 隠せなかったのか 隠れられなかったのか 色々な想像をしてしまいますね?…
[良い点] にゃけるっ……・゜・(つД`)・゜・ [気になる点] (この質問は答えなくて大丈夫です。) 真相はどっちなのでしょうね。 [一言] 面白かったです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ