第五生 露西亜 中
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第六生 露西亜 下
十五世紀前半、かつてのモンゴル帝国からの独立し、ロシアは成立した。建国直後のロシアは東欧の一小国に過ぎず、やがて十七世紀に西欧諸国の政治制度や軍事力を取り入れ、東の先住民を次々に征服し、北アジアから東欧地域に跨がる世界帝国を形成する。国号もロシア帝国に変更された。
その後も南下政策を取り、十九世紀末まで領土拡張を続け、最終的に、現モンゴル国や中国東北部から中央アジア西部を植民地化したが、イギリスとの政略駆け引き、通称「グレート・ゲーム」に失敗し、インドを支配することは出来なかった。
日本とも一戦交えるが、日露戦争での敗退は当時のロシア人(主に白人)に屈辱を味わわせる。
だが、第一次世界大戦の長期化を機にロシア帝国は衰退し、1917年に革命によってロマノフ朝ロシアは倒れ、皇帝一族は銃殺され、革命指導者レーニンを中心とする共産政府が誕生する。これは数年後ソビエト社会主義共和国連邦となるが、後の世界恐慌、第二次大戦を経て、独裁体制を強化していく。戦後、米ソ冷戦が東西を分断する中、両国の核開発競争が続く。今のロシアは、ベルリンの壁崩壊を切っ掛けに革命によって興った新連邦政府である。
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現在地モスクワの某高層ビルの一角。長い白ソファーの、自分の右隣にワン・テグン、左にマオ、向かいにビクトル・ツルゲ―ネフ少佐、そして彼の膝の上には、調度父親に甘える子供のように、子供に抱き抱えられたヌイグルミのように、腰まで伸びたストレートの黒髪の、ぴったりした濃い赤色のチャイナドレスを着た小柄な中国人の少女がちょこんと座っている。年齢は推定十代後半。
「この子は梁鶏。私の可愛い小鳥だ」そう言って少佐は少女の頭を撫でる。
何が小鳥だと言いたくなった。俺達が還ったあとの彼女の将来が心配である。
「では本題に入りたい。今我が大韓民国は北の侵攻を国境線でぎりぎりに防いでいる状態。もし北が我が領土の人民を傷付ければ、我が同盟国のアメリカが北に報復し、北の支援国である中国やロシアが参戦した世界対戦に成りかねないでしょう。そこでロシアと中国には政府には北との国交を断絶して、経済制裁を与えて頂きたいのです。帰りには、中国との話も付けます」
ワン・テグンは言う。
他の俺達は付け入る隙が無く、彼が会談を終えて退出するのを待っている。
「北朝鮮には我が国の軍事貿易の大市場がある。只のPMCの頼みで経済制裁を下すのは不可能だ。キューバでの銃器売買も景気が悪いからな」「大統領は現在クアラルンプールを訪問中です。その他の政治家や軍人は全て南北国交処理に駆り出されており、動けるのは軍事企業のみです」
「我々もいくら我が陣営の国とは言え、最近は世界規模の核放棄が行われる中での核開発など、横暴が過ぎると思っていたところ。経済制裁の件、じっくり考えさせて頂きこう」
その時である。俺たちが居る部屋に、非常ベルの奇声が轟いたのは…。
ありがとうございました。