第四生 中東 下
マフラディーンとシャオメイが闘います
第五生 中東 下
マフラディーン老人の首に伸びた、白紙のように白く、昆虫みたいに細い日本の腕は、当然シャオメイのものだろう。そのまま対象に巻き付き、締め上げる。
マフラディーンの顔からは南方人独特の血色が徐々に消え失せていく。だが、首を絞められたくらいで死なないのが、軍人のウザサというものである。
「甘いな、軍人は普通退職後も最低機関銃一丁は家の何処かに隠し持っているものなのだよ…来い、アフマディー!!!!」
その瞬間、屋内に一つしかない机と四脚しかない椅子、剥き出しの土の床(というか地面)が、激しく揺れた。俺と孔明は直感で屋外に出る。家は、床(地面)が抜けて沈んだ。代わりに、四本脚の蜘蛛のような重機が浮上した。
高さは9メートル程。色は白。やや煤を被って汚れている。
下に向かうほど太くなる脚。裏は吸盤になっているのだろう。
四本脚の中心には、野球ボールのような球体型の基部(胴体)。
頭には一機の砲台と一個の眼。肩にマフラディーン。
シャオメイはどこにいるのかわからない。
だがその直後。シャオメイは立ち上る黒煙の中、蜘蛛の後ろから10メートル程飛び上がって、マフラディーンに襲い掛かろうとする。素手だ。
だが(というかむしろ当然に)、蜘蛛の基部から飛び出した、黒い紐のようなもので本体に繋がれた矢尻のような武器に腹を抉られて鮮血で《半放物線》を描きながら、地面に叩き付けられる。
蜘蛛の砲口がシャオメイに向けられる。「シャオメイ!!」孔明と俺は同時に叫ぶ。
砲弾が放たれ、地面を抉る。だが、シャオメイは抉られていなかった。
砲弾を体操選手みたいに横に跳んで避ける。
そのまま彼女が砲台に追われながら逃げ廻るので、蜘蛛の周りは穴だらけになる。しかしそれは遊び。刹那、蜘蛛の鈍い反応を交わして、彼女は砲台の正面に飛び上がり、懐に隠していた手榴弾のピンを抜き、砲台にぶちこむ。砲台は内部から紅く膨れ上がり、爆発。電子脳を失い、立ったまま停止するマシン。戦いは終わった。
「お前、素手は無謀だ」
俺はシャオメイに言う。
「自殺する気かと思いましたよ」
と孔明。
「ふん、色目人に殺されたなんてボスに報告されたらおちおち死ぬことも出来ん」
普段とキャラが変わっている!?
「さあ、ジイサンも殺したことだ。還るぞ」
シャオメイは勝手に議決した。
だが、後々あの老人は生きており、何度も刃を交えることになるのである。
次回もよろしければ…。