第四生 中東 中
次回くらいでまたバトル入ります
第五生 中東 中
2009年 中国福建省
花園に、一人の少女がいた。身に纏う深紅のマオドレス(チャイナ服)は決して身体に貼り付いたものではないが、その小柄な身体と整った顔立ちには、若干の幼さと高貴な美しさがあった。
無限のように広がる背の低い花園の上に、少女は踊る。蝶の舞うのを見ながら、胡蝶になる夢を観るように…。
だが直後、大火の波が虫を、草花を呑み込んだ。
少女は火の下ってきた方向を振り返る。そして、顔を引き吊らせ、目には固まった血のような色を浮かべた。そこには、炎の線を吹く銃器を両手で抱えてゴソリゴソリと歩いてくる、数十人という黒い兵士の群れが…。
「お前の知り合いであるあの中国人の娘、彼女が住んでいた村を壊滅させたのは私だ」
丸レンズの老眼鏡の奥にわずかな水滴を浮かべる、中東人独特の鉤鼻に、褐色の肌の老人、マフラディーン氏。黒色の瞳の奥に映る紅い色は、彼があの日見た花園を焼く炎のようであった。
「あのまま中国の軍備拡張が続けば、彼らが中東に攻め込んでくる恐れがあった。あの村には中国軍有数の軍事基地があった。私は軍人の癖に血を見るのが嫌いだった。だから火炎放射器を使った」
火炎放射器で、住民を村ごと焼き払った、老人は自分の口から出る言葉の一つ一つの重味を背負うように言った。
「あの娘が私がここに居るのを知ったら、彼女の心は憎しみに煮えたぎり、必ず殺しに来る。だから頼む。私のことは彼女には黙っていてくれ」
最後に彼は、涙を流しながら言った。
彼女の村に着くまでは、国境貿易の商人に変装し、一般的な日本製の大型乗用車で向かったという。「いや、まあ何なんですけどね、ご老人」
俺は語りかける。
「ん?」
マフラディーン氏は言う。
今度は蘭孔明が言う。
「もう来ちゃってるんです、彼女」
「…!!」
老人の顔が引き吊る。
彼の背後から、小さな白い手が二つ伸びた。
ありがとうございました