第三生 激突 下
まだ実験段階なのであまりきつく無い評価をお願いします
第三生 激突 下
包帯が剥ぎ取られた俺の右腕は、既に人の形をしていなかった。
錆びた銅のような紅い腕に山脈のように血管が浮き出(医療ミスで少し腐ってるらしい)、爪は鉄でできた鉤爪と化している。まあ俺は左利きだから問題無いけど…。
「へえ、ええ腕してはんな、兄さん」
一反凝結した空中鬼は、兎を睨んだ狐か、河馬を睨んだ鰐のように目を細め、ほとんど唇を動かすこと無くそう言った。
そして彼は再び気化し、うねるように(温度で判る)襲いかかる。
俺は右手の爪を、意識的に帯電させ、動くことなく、刃を構えて待った。
爪は今、レーザーのような青色を帯びて光っている。
殺気を帯びた気体が八方から斬りかかるが、その攻撃は届かなかった。
奴の攻撃は更に頑丈な防御(兼攻撃)に防がれた。
俺は右手を、周囲の空中に大きく円を描く形で振り回した。
周囲の殺気は消え失せ、さっきまで気体だった生物は細かな肉片となって、トマトの煮汁みたいな血液と一緒に堕ちてきた。一つの戦いが終わった。
「ターゲットを殺害。帰還します」
「ああ、出来れば生け捕りにして欲しかったんだけど、向こうも強いんだから仕方ないよね。まあいいよ、今度食事おごってくれればいいから、じゃぁ、還っておいでよ」
シャオメイが携帯越しにそう言った。
戦闘が終わってその翌日。俺達の隠れ家(どうやら国内)で、俺はつい数分前に開いたばかりの眼をこすりながら、シャオメイの作る朝食(馬鹿な俺に種類などわからないが確実に中華の麺類。氷がスープの中に浮かんでいるので冷たいものだろう。全体的に見て、脂っこいモノには見えない。麺は白色で平たく、インスタントのうどんのようだ)が出来上がるのを待っていた。というか、今食べた。
「ぎゃう、脂っこくない代わりに辛過ぎる!!」
「あっれ〜唐辛子の分量間違えたかな?いや、そんな筈ないよ、日本人は辛い食べ物が苦手なんだ」などと、調理室(というかごく庶民的な台所)に居て姿の見えない彼女に話し掛ける。
「いや、何というのか」
彼女は切り出す。
「あ?」
私は力無く返事する。
「こんな平和なんじゃ、今自分らが争いのど真ん中にいるとは信じられんわ」
「確かに」
「傷の手当、数学少年とメイリンが二人でやったから、ちゃんとお礼言っとくんだよ」
「了解っ」
昨日の自分が信じられない。そう思った朝であった。
読んで頂けただけで感謝です