表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ただ歌いたいだけ  作者: ムツキ
3/3

うまくいかない

 それから半年がたった。その間に、麻里ちゃんと協力して二曲作ったけれど、どちらも結果はよくなかった。

 両方とも、二千再生前後で止まったのだ。麻里ちゃんはすでに飽きつつあるみたいで、もうほとんどその話はしなくなった。


 きっと麻里ちゃんは「いいのは最初の曲だけだったなぁ」と思っている。私だってそう思ってる。二曲目も三曲目も、どこかしっくりこないし、私自身満足のいく出来栄えじゃなかった。麻里ちゃんも、協力すると言った手前仕方なくといった感じだったし、動画もほとんど簡易的なものになった。


 まぁ、現実なんてそんなもんだと思う。しばらく曲作りはやめて、勉学に励もうと思った。別にアーティストになりたいという野望もないし。

 元々自己満足で始めたことなんだ。うまくいかなくたって当たり前だし、気にしてない。

……でも、一生懸命やったのに。悔しい。



 今回ばかりは、三日で気が変わることはなかった。麻里ちゃんとは相変わらずいい友達だったし、音楽についても時々話をした。

「一曲目みたいなすげーいいのができたら、隠さずにちゃんと言うんだよ?」

 と言われて、少しだけ傷ついた。やっぱり、二曲目と三曲目は、駄作だと思われてたんだと確信したからだ。実際、駄作だった。悲しい。

 でも愛想笑いを浮かべている私の気持ちなんて、麻里ちゃんには伝わらない。おいしそうにガムを噛みながら、下手くそな鼻歌を歌う。私の曲だ。それで、私を見てはにかむ。私はどうすればいいのだろう?



 スランプなんて大層なものじゃない。ただ私には才能がなかっただけ。最初のは、たまたまうまくいっただけ。ビキナーズラックってやつだ。でも音楽にそんなもの、あるのかな? 

 でも二曲目と三曲目は、やっぱり私の実力通りの結果だったと思う。いい曲は作れなかった。悔しい。ふがいない。

 なんで大好きな歌のことで、こんなに苦しい思いをしなくちゃいけないんだろう?

 こんなことなら、最初から形になんてするんじゃなかった。あぁ、つらい。




私 ダメな子ですから

期待なんてされたくないし

自信なんて持ちようないし

全部嫌になっちゃうよ

私 イヤな子ですから

友だちだって少しだけだし

コミュ力だって終わってるし

死んでしまいたくもなるよ


でもそうやって涙こぼしても

いつの間にか 明日になってて

今日も何とかやっていこうと

開き直ってる私です


今日もいいうた書けなかったな

でもでもいつか何とかなるかな

明日はきっといいうた書くから

もう少しだけ我慢して

生きていくこと辛い時もある

でもでも一緒に笑い合えたら

明日もきっといい日になるから

もう少しだけ頑張るよ




「めっちゃいいじゃん! こういうのだよ! こういうの欲しかったんだよなぁ。もー。いつまで待たせんだよオラ!」

 麻里ちゃんは、元気だった。喜んでくれてすごく嬉しかった。

「まぁでもこれ、二曲目と三曲目うまくいかなかったから、できたんだよな。いやぁ不思議なもんだなぁ。よく頑張ったなぁメグメグ」

 麻里ちゃんは強引に私の頭をわしゃわしゃと撫でる。二曲目と三曲目を悪く言われたことは、もうつらくなかった。まぁでも、二度と聞きたくはないかな。


 結果として、この曲も一曲目ほどは伸びなかった。しかし、この曲を投稿してから一曲目の再生数が伸び始めた。いまいち動画の伸び方の仕組みがよくわからないけど、まぁそういう事もあるんだと思う。



 なんか、結局自分が歌いたいのを歌うしかないんだなぁと思った。響くか響かないかなんて、私にはよくわからないし、ただ一生懸命考えて、悩んで、その末にできたものなら、どんな結果でも私はきっと満足できるんだろうな、と思った。

「誰かを喜ばせるため」とか「誰かに褒めてもらうために」とかよりも、ただ私が心の底から素敵だと思った気持ちを、歌おう。

 きっとそれが正しい。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ