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ただ歌いたいだけ  作者: ムツキ
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ともだち

「すごく素敵です。次回作期待しています!」

 ストレートなコメントが嬉しかった。でも、もっと欲しいとは思わなかった。十分だったし、満足してしまっている自分がいた。

 そもそも、私はこれを誰かに聞いてもらって、それで……そもそも聞いてほしいなんて思ってなかった。でもたまたま麻里が私の歌を聞いて、それで流されるように投稿しただけだった。だから冷静に考えてみたら、私が褒められているというより麻里の行動力が褒められているような気がした。


 ところで、彼女は虚栄心が強くておしゃべりだから、動画を投稿したことをきっとみんなに言いふらすんだろうなと憂鬱になっていたのだけれど、それは杞憂に終わった。意外なことに、麻里は「このことは、二人だけの秘密だかんね」と笑ったのだ。なぜか尋ねてみると「これは本当にいいものなんだから、自然に任せたくない? なんか、自分たちからアピールするのは、違う気がするじゃん?」

 麻里にもそういう感覚があるのだと少し驚いた。

「まぁでも、もしメグちゃんが我慢できなくなって言いたくなったら、言っちゃっていいと思うよ。結局これ、私は手伝ってるだけで、メグちゃんの曲なんだから」

 こういうところがあるから、麻里は皆から好かれるのだろうと思う。鈍感だし、無自覚に人を傷つけたりするし、ルールも全然守ろうとしないけれど、でもなんか純粋で、暖かい優しさみたいなのがある。

「私、麻里ちゃんのそういうところ、好き」

 私が勇気を出して笑いながらそう言うと、麻里は呆れたように笑いながら「そういうの反則だわメグちゃん!」と叫んだ。

 そして「うちらは親友だ!」と、肩を組んだ。男同士みたいだなぁと思った。でも、こんな関係が、心地よかった。


 あぁこの気持ちを歌にしたいと思った。麻里のために……でもさすがに照れくさいのでやめた。


 でも結局、三日くらい経ったら気が変わる。別に見せなくてもいいから、作るだけ作ってみようと思ってしまうのだ。



 ほんと馬鹿なんだから 私たち親友だなんて

 ほんとに嬉しかったんだ ひとりで思い出して

 さすがにちょっとイタイよ 素直になれない私なんだけど


 いつか忘れちゃうのかな この綺麗な想い出も

 友情は永遠だなんて 簡単に信じられないけれど

 そんなのどうでもいいから かすれた声のありがとう だけ


 今はまっすぐに伝えることはできないけれど

 ずっと ずっと ありがとうって


 一緒に揺られた電車の中で 言ってくれたこと忘れないから

 私もちょっと抜けてるけれど あなたはもっと馬鹿だよね

 ひっくり返ったポップコーンも くしゃみが顔にかかったことも

 ムカつくことは多いけれど あなたがやっぱ好きだから



 さすがにこれは見せられないなと思った。スマートフォンのプレイリストに突っ込もうか迷ったけど、やめた。ほんとにこれは見せられない。でも……でも五年後とかに、実はあの時こんな曲も作ってたんだって教えられたらいいなと思う。今は無理だけど、いつかきっと、面と向かって、自分の気持ちを伝えられたらいいと思う。



お読みいただきありがとうございました!

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