203号室と205号室
「 それじゃ、ここに名前とか書いといて 」
「 は、はい 」
私達は、渡された書類に目を通しながら、書き込む。
「 ねぇ、なんか楽しそうだね、ここ 」
イツキが、笑顔で私にそう言った。この人、こんな笑顔するんだ。先程の冷たそうな表情とは、全然違う表情をしていた。
「 私達、何のフルーツなんでしょうね 」
私も笑いながら、こう答えていたら、ドアが急に開いた。
眼鏡をかけ、上の方にお団子頭をした女性がこちらを見ていた。
「 は、はじめまして。私達ここに住む事になりました 」
私は、慌ててソファから立ち上がり挨拶をしたが、その女性は、軽く会釈をし、どこかへ行ってしまった。
「 書類書けたかな? 」
「 今、眼鏡をかけた女性が…… 」
「 ナーナの事かな?彼女、会釈してた?」
「 あ、はい…… 」
「 じゃ、大丈夫って事だ、彼女、人見知りのアニメ好きなんだ、ヲタクって感じかな 」
なんだか、不思議な女性だったけど、かなり若そうな雰囲気だった。
「 大丈夫だよ、ここの人達、かなり個性的だけどいい人達だから 」
「 よ、よかったでーす 」
私は苦笑いをしながら、書類を差し出した。
「 よし、2人とも書けたね 」
こんなに凄い豪邸で、家賃いらないとかどんなお金持ちがオーナーなんだろう。
「 今日は、みんな帰って来ないかもな。じゃ僕から伝えておくから、部屋へ案内するよ 」
私達は、立派な階段を上り始めた。
「 君達は、二階の部屋だよ 」
階段も物凄く綺麗にしっかりと手入れが行き渡っている感じだった。
「 203号室と205号室だからね 」
「 わかりました 」
「 ヒカリちゃんが、205号室だから、こっちだよ 」
イツキは、渡された鍵で203号室へと入って行ってしまった。
「 ここだよ 」
私も渡された鍵でドアを開け、中へと入ってみたら……。
「 何この部屋…… 」
部屋の中は、私の想像をはるかに超えているものだった。