感覚だけのオーディション
ソファに座り、そわそわした様子で待っていると、リョウさんが書類を持って私達の方へときた。
「 お待たせ!ここはね、一応オーナーがいるんだけど、僕が管理を任されてるんだ。僕の感覚では君たちは全然オッケーだよ! 」
「 感覚!? 」
「 そう、僕がこの目で見てみて駄目なら入れない。僕の感覚のオーディションだね 」
そんな感覚だけのオーディションなんて聞いた事もないけど。
「 でも、ここ高いんじゃ……ないですか?」
「 僕の感覚でしか入れないから家賃は今はいらないよ 」
「 え!? 」
隣をみると、イツキとかいう人は、静かにガッツポーズをしていた。
「 でもね、一応みんなが帰ってくるまで部屋には入れないから、ここで待ってて。ちなみに僕はね、メロンの部屋に住んでいるよ 」
さっきからこの人は、何を言っているのか。
逆に不安になってしまうくらいに、私の心はザワザワとしている。
「 あの、すみません。メロンて何でしょうか? 」
「 ここはね、オーナーの意向で部屋番号がフルーツで呼ばれているんだ。101号室がメロンだよ 」
そういう事だったんだ……。オーナーってどんな人なんだろう。
きっと変わった人に違いないだろうな。
それでも今は家賃もなく、住まわせてもらえるなんて、今日は、ついてる日なのかもしれない。
きっとなんとなくだけど、私の感覚でも、大丈夫……だと思いたい。