扉の向こうは別世界
「 ん?あれ? 」
私は、震える手で二度ほどブザーを押してみたが、誰も出てくる気配すら感じなかった。
もしかしたら、誰もいないのかもしれない。
そう思った矢先……。
「 ねぇ、こっち開いてるよ 」
「 ちょっと勝手に入ったら駄目でしょ 」
隣にいた、瀬戸イツキとか名乗っていた男の人は、少し小さい扉を勝手に開け、中へと入って行ってしまった。
大丈夫なのかな。と思いつつ、私もその人の後へとついていってしまった。
その時だった……。
ガチャっと重そうな扉が開いた。
「 君たち、何してるの? 」
その重そうなドアから顔を覗かせたのは、ふわっとした雰囲気のイケメンだった。
「 す、すみません。ブザー、何度か……鳴らしました! 」
私はそのイケメンに言葉にならない声でひたすら謝ってしまった。
「 私達、あの矢印を辿ってここまで来たんです! 」
そのイケメンは、急に笑顔になり、私達にこう言った。
「 あぁ。シェアハウス希望の人か。じゃどうぞ、こちらです 」
そのふわっとした雰囲気のイケメンがその扉をしっかりと開け、私達が中へと足を踏み入れた瞬間、まるで別世界に来た様な、そんな感覚になった。いくつものシャンデリアがキラキラと輝いている。
「 ここがシェアハウス!? 」
「 そうだよ。ここは、いわゆる共有スペースってやつかな。えっと、僕の名前は、田辺リョウです!よろしくね!書類持ってくるから、座って待ってて 」
そう言われた私達は、目の前にあるソファーへと座った。
「 わぁ。何これ、フカフカすぎる……。ちょっと、ねぇ 」
私は小さな息が漏れたような声で、イツキに話しかけた。
「 なんだよ…… 」
「 ここって豪邸すぎない?高くて住めないんじゃないの? 」
こんな豪邸は、セレブが使うシェアハウスなのかもしれない。絶対に住めるはずが無い。
書類などを持ってこられた所で、向こうから断られるのが、目に見えてわかっていた。