不思議な張り紙
その商店街のシャッターには、不思議な張り紙が何枚も、何枚も貼られていた。
よく見てみると……。
『 住居者募集!二名まで! 』と書かれ、奇妙な矢印が書かれている。
「 何、この矢印。こっちって事なのかな 」
その他の詳細などは全く書かれていない。なんとなく気になり、暇だった私は、その矢印を追い始めていた。
「 こっちにも……こっちにも矢印がある 」
導かれる方へ進んでいく。周りを見渡してもまだ家がある気配すらない。本当に家があるの?
私はこんなふざけた矢印を追うために、都会にきたわけではない!ふとこんな気持ちもよぎったけれど、投げやりな気持ちにもなっていた。
今は住む場所さえ見つかれば、あとは何でもいい。そして、私はどんどん矢印を追って行った。
その矢印は、住宅街に入ったところで途絶えてしまった。
「 あれ?何処なの? 」
やっぱりふざけた矢印だったのか。
ついてない時は、何をやっても上手くいかないし重なっていろんなことが起きてしまう。
なんとなく楽しくはなかったけれど、普通には生きてきたつもりだった。
マキに言われた一言で、私の中の何かが切れてしまった。私は、見返してやりたい気持ちを抱えながら、飛び出してきたものの、私の心は折れかけてしまっていた。
そんな自分の弱さも嫌になっていた。
今まで気づかず生きてきたけれど、私ってこんなに弱かったんだ……。涙が溢れそうになってきてしまっていた。
色々考えながら、ただひたすら真っ直ぐ住宅街を彷徨い続けていたら、豪邸が出てきた。
門のところには、『 ここ! 』と書かれていた。
「 まさか、こんな豪邸じゃないよね 」
絶対違う。こんな立派な家なわけがない。
何かの間違いではないかと思い、私はその門の前で立ち止まっていた。
「 本当にここなのかな? 」
立ち止まっていた私に、気弱そうな男性が後ろから声をかけてきた。