上京当日
私の名前は、高井ヒカリ。
今日、私は田舎から旅立ちます!
「 ヒカリー!準備できたの? 」
「 今やってるとこ 」
私は今日、田舎から上京する。荷物も最小限に抑え、たった一つのスーツケースだけで。
「 よし!これでオッケー! 」
私はリビングへと移動し、両親の元へと行く。
「 私、そろそろ行くね! 」
「 ヒカリ、お父さんもお母さんも応援してるから 」
「 ありがとう 」
駅まで車で送ってもらい、新幹線へと乗り込んだ。
またね!この街!私は心の中でそう呟き、胸を弾ませていた。
お母さんが作ってくれたおにぎりを食べながら、窓から見える景色を眺めていた。
このおにぎりも当分食べる事も出来ない。
何気なく食べていたおにぎりも、今日は物凄く美味しく感じていた。
これからどんな事が合っても、私は幸せを掴み取りたい。
神様、未来の私は、幸せを掴み取れていますか?
私は子供の頃から、これといって楽しいことも無く、平凡で普通だった。中途半端で何をやっても長く続く事はなかった。それでも明るい性格だけが、私の取り柄だった。
環境を変えたいと思ったのは、数日前……。
「 ヒカリって、普通だよね……。楽しい? 」
親友だと思っていたマキに言われた、この一言だった。ずっと何かを変えたい、このまま人生終わってしまうのかと悩んでいた時にこんな事を言われてしまったからか、胸に何かが突き刺さったような気持ちになってしまった。
きっと、私の背中を押してくれたに違いない。
私は、そう思う事にして、この上京を決めたんだ。
都会に知り合いなどいない私は、バイトで必死に貯めたお金だけが、頼り。
住むところも決まっていなければ、どこに行っていいかも分からない。
おにぎりを食べ終えた私は、うきうきした気持ちと裏腹に、不安たっぷりのなか、新幹線の中で眠ってしまっていた。