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05 組に入りました

 いきなり現れた髭面のおっさんに、俺たちは面食らった。


 一歩間違えれば不審者と言われそうな風貌だが……この人が組頭くみがしらか?


「……あなたが組頭ですか?」


「そうだ。『勝刃しょうじん』の組頭、雷剛らいごうだ」


 勝刃……それがこの組の、ギルドの名前か。


「はじめまして、広樹ひろきといいます。文治郎もんじろう純玲すみれに命を助けてもらい、こちらのさやと共に組に迎えていただきたく参りました」


 ここがどこにしろ、第一印象が肝心なのは変わらんだろう。今こそ社会人の対人スキルを見せるとき!!


 まとめて挨拶してしまったが……さやも慌てて頭を下げてくれている。


「これはこれはご丁寧に……まぁ、堅苦しいのはなしでいこうや」


「……ではそうさせてもらおう」


 雷剛は俺たちの前にドカッと座り、髭を撫でながら値踏みするように俺たちを見ている。


「話は文治郎から聞かせてもらった。お前らの事情は分かってるつもりだが……命を懸けるだけの覚悟はあるのか?」


「俺は行く宛がない。慣れない土地でやっていくには、この縁は願ってもないものだ」


 もっとかっこいい理由を言えたらよかったのだが……かっこつけるだけ無駄だろう。


「あたいは……たくさん稼いで、父ちゃん母ちゃん、村のみんなを楽させてやりたい!」


 さやはいい子だな……一緒に依頼をこなせるようになったら、しっかり守ってやらないと。


「……よし分かった。お前らを組に入れてやろう」


 思っていたよりあっさり入れたな……。


「まずは見習いからだ。たっぷりしごいてやるから覚悟しておけ」


 雷剛がニヤリと笑う。

 ……これはアレだ。体育会系の、しごくのが好きな人の目だ……めちゃくちゃ楽しそうですげー怖い。


「さてそれじゃ……おーい、お前ら入っていいぞ」


 そう呼びかけると、また襖が開き、若い男女と……


「あっ」


 さやが声を漏らす。


 次いで入ってきたのは、長い赤い髪の少女だった。

 これまで出会った人はみんな黒髪だった。それがいきなりの赤い髪だ。

 夕焼けを受けてさらに色が深みを増してまるで燃えてるかのようだ。


色髪いろがみ! あたいはじめて見た!」


 さやが興奮気味に言う。


「おぅ! 火の色と同じとは縁起がいいだろ? さすが俺の娘だ!」


 雷剛がドヤる……って、娘!?

 改めて少女を見るが、とてつもない美人だ。渋かっこよさがなくはない雷剛の遺伝子を引いてるとは思えない……きっと母親似なのだろう。



「―――」



 一瞬、頭痛がした。

 なにか思い出しそうになったけど、すぐに分からなくなってしまった……。


「こいつらが新しく組に入る広樹とさやだ。で、こいつらはお前らより少し先に入った新入りの義助ぎすけ春香はるか、こっちは俺の娘で日向ひなただ。こいつは退士じゃないがこの家の家事一切を取り仕切ってる。怒らせると晩飯抜きにされるから気をつけろよ?」


「お父様、私はそのようなことはしません!」


 日向は少し顔を赤くして否定している。かわいいな。

 一方の雷剛は楽しそうに笑っているが……そういうことばっかりしてると嫌われるぞ、おっさん。


 義助と春香は軽く一礼だけした。

 さや以外にも同期がいるのか……てことはこの4人でパーティーを組むことになるかもな。


「まぁ他にもいるんだが今は遠出してるからまた今度な。よし、顔合わせ終わり! 飯だ飯!!」


「はい、ただいま」


「あ、あたいも手伝う!」


 雷剛を先頭に日向、さやが出て行き部屋には俺たち新人退士3人が残された。


「えーと、広樹だっけ? よろしくね!」


 春香が手を差し出してきたので握手に応じる。なんとも人懐っこい笑い方をする子だ。


「ほら、義助も」


「いいだろ別に。まぁ、足を引っ張るなよ、おっさん」


「おっさ……俺はまだ27だ三十路前だぞ?」


「みそ? いや30前なら十分おっさんだろ」


 こいつ……いや冷静になれ、俺。ここで安易に「そういうお前は何歳だ?」なんて言えばカウンターを受けるもんだ。どう見てもこのふたりは若い。張り合うだけ無駄だ。

 ここは年長者として余裕のある振る舞いをするべきだ、うん。


「……まぁ、仲良くやろうや」


「……ふん」


 俺がそれ以上張り合わないことに拍子抜けしたのか、義助は仏頂面でそっぽを向いた。春香は苦笑しているし、この態度は珍しいものでもないのだろう。


 たとえ気に入らない相手であっても、共に働く以上は私情は挟むべきではない。命がかかるとなればなおさらだ。


 俺が大人で色々助かったな、少年。






 その後は全員で夕食をとることになった。


 ご飯に味噌汁、漬物に豆腐……「これぞ和食!」といったメニューだったがこれがうまい。

 正直に言えば現代の食事よりはなにかしら劣っているだろうと侮っていたが、うまい。

 俺の感想に日向は安心したように、嬉しそうに笑った。さやが日向の腕を褒め、日向がさやを手際がいいと褒め返す……早くも仲良くなったようだ。

 文治郎と純玲はなにやら依頼の話をしているし、義助と春香は訓練の話をしている。

 雷剛は……みんなを眺めながら楽しそうに酒を飲んでいる。


 三者三様な光景に、俺は自然と笑っていた。なんか、いいなこういうの……なんでそう思うかは分からんけど。


 まぁ、そう思っていたのもつかの間、雷剛にダル絡みされ酒を無理矢理飲まされ、寝落ちするまで相手をする羽目になったのだが……。




 年齢はそれぞれ……


雷剛(37)、広樹(27)、文治郎&純玲(19)、日向(17)、義助&春香(15)、さや(10)


 ……と考えてます。


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