12 勝負をしました、一
「秘剣! 流星斬!!」
跳躍して最上段から勢いよく振り下ろした愛刀、青蒼が小型の禍がつを真っ二つに切り裂く。
「……なんてな」
これは某人気漫画の主人公の必殺技だ。
ジャンプして剣を振り下ろすだけなのだが、エフェクトとかが掛かってとてもかっこよく見える。
まぁ、俺にはそんな特殊能力ないのでただの兜割りになってしまったが……。
この世界にはゲームなどによくある数値化されたステータスやスキル、魔法や必殺技といったものが存在しない。
最初のうちはそういうものが存在するのではと期待していたのだが……現実はそんなに甘くない。
だが、こうして体を鍛えてみれば速く刀を振れたり高い位置まで跳べたりと、今まで見聞きしてきた必殺技の真似事くらいはできるようになっていた。
なので俺はこうしてひとりの時、そういう『遊び』をやっているのだ。
うん、こんなの見られたら恥ずかしさでもう組に帰れなくなってしまうからな……。
組頭である雷剛から「たまにはひとりで依頼を受けてみろ」と言われ俺、義助、春香は個別で依頼を受けて禍がつを狩っている。
一応それなりに実力がついて認められたと思う。その上でさらに個人の力を伸ばすための期間なのだろう。
ひとりなので当然荷物の管理もやっているのだが、日帰りで終わりそうな依頼でもサバイバル関連、携帯食料など地味に多い。
刀一本で来ることもできるが……今までのことを思うと最低限の荷物くらいは持っておきたい。
いつもは番士として荷物管理をしてくれているさやも特訓期間中で文治郎、純玲に着いていっている。
竹クラスのふたりはよくコンビで依頼を受けており、一度見学させてもらったことがあるけど……あのレベルの依頼はまだまだ俺たちには無理だ。
そんなふたりのサポートをするわけだから当然さやも大変だろう……無事に帰ってきてほしい。
「お、また出たな」
考え事をしていたらまた小型の禍がつが湧いてきたな……。
「いくぞ……剛天爆光風極千桜―――」
遊びは、続く。
「あ、おかえりなさい。広樹さん」
「ただいま、日向」
帰り道で日向とばったり出くわした。
俺の受けた依頼、【青石の回収】はランダムドロップに阻まれた結果、朝までかかってしまった。
そこから町まで戻って各種手続きを終えたらそろそろ太陽がてっぺんに来ようかという頃だった。
「義助さんも春香さんも今朝戻ってきましたよ」
「それじゃ俺が最後か……また小言言われるな」
「こうしてちゃんと帰ってきたのですから広樹さんはすごいですよ。さぁ、帰ってご飯に―――」
「おぉ、そこにいるのは日向じゃねーか!」
空気を読まずに割り込んでくる、このなぜか気に障る声は……
「よぉ、久しぶりだな」
「……大我さん……」
色傾奇の金髪野郎だった。
1週間以上空いてしまった……ちょっと書くの遅れてますが、いったん投稿します。




