9話『衝撃』
お風呂場に入った私は衝撃の光景を目にした
そこにあったのは"桶"だけだった。
水が出る蛇口も石鹸もなかったのだ
「。……これはどうやって使うの?」
「?そこにある桶に水を貯めて体を洗うんです」
「どこから水を出すの?」
「生活魔法でです」
「生活魔法というのはお湯も出せるの?」
「いえ、皆、水だと思いますが」
私の質問にグランは難なく答える
つまり、水で体を洗うと言うこと?冬でもそうなの?この世界には冬がないのかな?皆そうなの?
それともこの宿屋が安いから?これが普通?
疑問が次から次に絶えず湧いてくる
とにかくお風呂はお湯じゃないとダメだ!
と考えることを一旦放棄し
能力をフル活用する
グランの服をぬがせ、椅子替わりの桶に座らせ
お湯を創造しシャワーのように上から降らせる
髪を濡らしたらシャンプーを創造しグランの髪を洗う何度も洗い直しピカピカになった
最初、お風呂くらい1人で入れるからとめちゃくちゃ抵抗されたが私が全力で能力を使わなければここまで綺麗にはならなかっただろう。
何がそんなに嫌だったのか…「!」グランは虎の獣人つまりネコ科だから濡れるのが嫌だったのか
クロエルハはグランの髪を温風で乾かしながら見当違いの考えでひとり納得する
髪を乾かし終え、能力を使って作ったグランのサイズに合わせた服を着せると奴隷商にいた彼だとは想像もできないほど綺麗な獣人が目の前に立っていた
(前から思っていたが私の能力は割と便利だ)
白銀色の髪と黄金色の瞳、髪の色と同じ耳と尻尾の先は黒く、少し褐色した肌は彼の凛々しさを際立たせていた。こういうのをイケメンというのだろう
「クロエルハ様、このように綺麗にしていただき
また、服まで用意していただいたこと重ね重ねお
礼申し上げます。本当にありがとうございます」
「様なんて付けなくていい。
それに、お礼も何度も言わなくていい。」
「ですが、私はクロエルハ様の奴隷であり」
「じゃあ、グランは奴隷じゃない
私はこの世界のことを全然知らないからそれを教
えてくれる人と一緒に旅をできる信用できる人を
探していたの、だから奴隷である必要はない」
「ですか、奴隷契約によって縛られていますし何よ
り私が貴方にお仕えしたいのです!」
「グランは奴隷じゃないと一緒にいてくれない
の?」
「!!いえ!!たとえ奴隷でなくても一緒にいま
す」
「じゃあ契約を解除しても問題ないね」
「はい!…ですが、契約解除には再度奴隷商に行き
店主の許可をもらい隷属魔法による契約解除の儀
が必要です」
「それなら平気」
と言いグランに向け手をかざすと奴隷紋が浮かび上がり綺麗に消えた。