8話『彼の名前』
潰れた喉と目、骨折、全身の打撲も治った彼は信じられないと言った様子で体のあちこちを触って確かめ勢いよくこちらを向き
「ーーーッあ……あり……が…………ます。」
と声になりきならない声でお礼を言ってきた
だけど、まだ治療は途中だ
今度は 能力 : 創造する世界 を展開する
創造するのは彼の無くなった手足と耳
だがここで問題がある。名前の通り私の能力は創造だ
考えたものを現実に引き起こせる、それは考えられればひとつの生命でも創り出せる、逆に考えられなければ創造することが出来ない。
私は手足のある頃の彼を知らない、残った手足があるから対になる物は作れるだろう、そこは良い
ただ、一番の問題は"耳"だ人間の耳であったならば合いそうなものを創ればいいが獣人の耳なんて見たことがないし、そもそも彼はなんの獣人なのだろうか?
「…ねぇ、貴方なんの獣人なの?」
「…、と……、…ら」
「虎?」
虎かぁ〜。自分の知っている虎を思い浮かべてみる。
ライオンしか出てこない""
諦めて彼の記憶を覗かせてもらう
しかし、それは彼の記憶なため彼自身の姿は見えない
記憶の中で彼の父親らしき人物が見えた、やっぱりライオンみたいな耳が生えているので虎とライオンは似ているんだと認識し創造を始める
能力の展開を終えるとそこには、手足の生え揃った彼の姿があった、ちゃんと神経も繋げた、筋肉量も左右対象だ、ほぼ元通りと言っていいだろう
問題の耳は尻尾と同じ白銀色で尻尾の先も黒かったので同じように先の方が黒くなっているライオンのような虎の耳だ。
彼は目を見開いて固まっていた
しばらくして動き出した彼は、勢いよく床に膝をつけ頭を下げ涙をボロボロと流しながらお礼を何度も言ってきた………………耳が気になって仕方がない。
何とか落ち着いてもらい、そういえばと名前を聞く
「名前はなんて言うの?」
「グランバルトです」
さっきお礼を言い続けたおかげか声は掠れているがだいぶ喋れるようになっていた彼はそう名乗った
「じゃあ、グランって呼ぶね。
私はクロエルハ、これからよろしく。」
簡単に挨拶を終え、グランが汚れてることを思い出す
傷は治して綺麗になったけど、髪は血で固まっていたり土汚れも酷くドロドロだ
なので、グランをお風呂場に連れて行ったのだがそこは衝撃的だった。