6話『獣人』
扉を開けた先は他の部屋と違い薄暗く、鼻に着く錆と血の匂い
牢の中の人たちは皆、どこかしらに包帯を巻いていた
少し遅れて入ってきた店主が言うには、ここに売られる前からの傷だったり、買い取られた先で受けたものだという。散々痛めつけた末にいらなくなったと言って戻しに来る客もいるそうだ
この部屋には欠損があったり病気を持っていたりする人が集められているのだという。
病気を治すにしても薬などにお金がかかるため治療できず、欠損部位の修復もできるらしいがそれこそ奴隷としての価値以上のお金が必要なため最低限の処置だけで済ませている
ふと一つの牢に目がいった、そこに近ずいて中を覗く
そこには、右手と左足が無く、残った左手と右足もボロボロで耳の切り落とされた男の人がいた。
だが、耳と言っても"人"の耳では無い
そのボロボロの男の人は獣人だった
「……生きてる?」
「ーーーーーッ。」
少し動いたので生きているのだと判断できる
それくらい目の前の獣人は酷い状態だった
「この人にする……。」
「………………は?!」
店主の間の抜けた声、しばらく沈黙が続き「はっ!」と慌てた様子で
「お客様は戦闘能力と知識があり、共に旅をできる
人を探されていたはず!それなのに、こんな1人
でまともに立つことは愚か喋ることもままならな
い獣人を買われてどうされるのですか?!!」
と顔を真っ赤にして説明を求めてくる
「ここでは治せないのでしょ?
だったら他で治すから気にしないで。」
「治すのでしたら元から怪我をしていない先程の者
たちから選べばいいのです!わざわざ大金を使っ
てまで治す必要はないのでは?!」
しつこいな
「お金は払うのだから貴方には問題ないでしょ?
この人を売ってくれないのならもぉここに用はな
いから」
そう言うと、店主は渋々といった感じに引渡しの準備を始めた。人を呼びつけて獣人の彼を出すように指示をして契約のために別の部屋へ案内された