グランバルト『思ってたのと違う』
クロエルハ様があっさり奴隷紋を消し
またも自分の想像以上の出来事に呆気に取られる
会ってから数時間のうちに何度驚かされたか
そんな彼女をよく見ると濡れていた
当然といえば当然だ自分を風呂に入れている時も彼女は変わらずローブを着ていた
「クロエルハ様、服が濡れてしまっています着替えないと風邪を引いてしまいます」
「様って言わないでって言った。敬語もいらない。
もう奴隷じゃないんだから、クロでもクロエでもクロエルハでも好きに呼んでいいから、様と敬語はダメだよ?」
「わ、わかった。」
彼女の圧に負けた。
そんな彼女が濡れたローブを脱いだ。
初めて見た彼女は神秘的な程美しい容姿だった
息をするのも忘れるほど見入ってしまう程に
彼女はこの世界では珍しい
漆黒の髪に真紅の瞳で線が細く少し色白な肌
その額からは鬼のような二本のツノが生えていた
「ク、クロエ…は、鬼族なのか?」
「?違う。」
「でもそのツノ」
「あぁ。…私はね合成獣なの」
「キメラ?」
そういうと、彼女の周りを黒い靄が覆い再び現れた彼女は先ほどの容姿に
背中からは髪と同じ漆黒の翼、そして狼の尻尾のような尾が二本生えていた
彼女の話によると元は翼だけだったが、人間の実験によって鬼と狼を混ぜられたのだという
「気になるなら見えないようにする。」
「違う!ただその、綺麗だからゴニョゴニョ」
最初の印象は真っ黒い何かでそれが女性だとわかってからは魔女か何かと思い、神の御業のような力を見た後は神の使いだとも思ったが、目の前の彼女はそれらすら霞む程だったのだから全然思っていたのと違う
「グランが気にしないのならこのままでいさせてね?
翼とかを不可視にしておくのは疲れる訳じゃないから別にいいのだけどこっちの方が落ち着くから」
「何で顔まで見えないようにしてるんだ?」
「顔を出してるとジロジロ見られて嫌だから。何でかな?目が赤いからかな?確かに、赤い目なんて気持ち悪いよね」
「俺は!綺麗だと思う!」
それに周りの奴らも赤い目を見ている訳では無いと思うし、できれば今までみたいに外でフード外さないでほしいと不思議な思いにかられた。