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56.その紳士たちの姿を暴け その2


【View ; Syuko】


 放課後。

 体育館の二階の手すりに寄りかかりながら、私は眼下で練習しているバスケ部を眺めています。


 一緒にいるのは、花道さんと陽太郎くん。

 そして、雨羽先輩と、倉宮先輩。


 今回の協力者オールスターといった感じです。


「本当に、バスケ部の誰かが犯人なのかな?」

「決めつけるコトは出来ないが、高確率でそうだとは思う」


 陽太郎くんと雨羽先輩は元々顔見知りだったのか、気にせずやりとりをしています。


「それで。容疑者は絞り込めた。だがどうやって確定させる?」


 倉宮先輩の言う通りではありますね。

 容疑者を絞り込めても、あと一歩が足りません。



 容疑者――二年C組に在籍しているバスケ部員。


 それが……


 男子

  ・富蔵(フグラ) 露定(ロテイ)

  ・梅塔(バイトウ) 雨史(アメフミ)


 女子

  ・安芸津(アキツ) 柚梨(ユリ)


 ……以上の三名です。


「女の子の可能性もあるの?」

「ゼロではないだろう。女子だからという理由で容疑者から外す理由もない」

「なるほど」


 花道さんの疑問に、陽太郎くんが答えます。

 なんていうか、全ての疑問に真面目に答えようとするあたり、律儀といいますか何と言いますか。


「……あれ? 十柄さん十柄さん。体育館の入り口見て」

「入り口、ですか?」


 唐突に、花道さんに名前を呼ばれ、言われるがままに視線を向けました。


「三年生……でしょうか?」

「うん。でもバスケ部って感じしないし?

 今日はバスケ部以外が体育館を使ってないから、何の用だろ?」

「…………」


 そのメガネを掛けた男子生徒は、バスケ部を見学しにきたという様子でもなく、何かを探すようにキョロキョロとしています。


 確かに動きの怪しい人ですが、それ以上に――見覚えがないのに、どこかで会ったことがあるような不思議な既知感がある人ですね……。


 観察していると、その三年生がこちらを見て――そしてホラー映画の登場人物なんじゃないかと思ってしまうくらいに大袈裟な驚愕顔を見せました。


 何に驚いているんでしょうか?

 そして、驚いている彼の元へ、練習中のバスケ部の男子が一人近づいていきます。


 あれは――富蔵(フグラ) 露定(ロテイ)先輩ですね。

 容疑者の一人ということは二年生だと思いますが、三年生のメガネの人と何とも気さくな調子で声をかけているようです。


 二言三言の言葉を交わすと、メガネの人は頭をかきむしりながら、逃げるように去っていきました。


 ……なんだったんでしょう?


「んー……あのメガネパイセン、富蔵パイセンに用だったのかな?」

「そんな感じですね」


 あ。富蔵先輩がこっちを――どちらかというと、陽太郎くんを見てる感じですかね?

 なんか地団駄踏んでるような気がしますが……。


「雑魚め。他人に嫉妬するな。自分をもっと磨けばいい」


 それを見ていた倉宮先輩が何か言っています。

 ええっと、つまり――


「もしかして、新堂パイセンが女の子に囲まれてる気に入らないって奴だった?」

「正解だ。花道」


 サラサラした茶髪に、すらっとした長身で、バスケ部の富蔵先輩です。

 見た目だけなら結構モテ要素ありそうなんですが……。


「富蔵はお調子者がすぎるんだ。

 黙っていればモテるが口を開くとモテない典型例のような奴だよ」


 陽太郎くんからの評価は結構辛辣なようです。

 ともあれ、富蔵先輩の人柄は何となくわかりました。


「他の人はどうなんですか?」

梅塔(バイトウ)くんは多少知ってるよ」


 そう口を開いたのは雨羽先輩です。


「私は神社で、彼はお寺の生まれだからね。

 そういう神仏繋がりで、ひとまとめにされたりするから」

「そもそも神社と仏閣では全く違うのだがな」


 肩を竦める陽太郎くんに、雨羽先輩は苦笑いを浮かべるだけにとどめました。

 何か言いたげではありますが、ここで言うほどのことではないとの判断なのでしょう。


 そんなやりとりを聞きながら、私は眼下へと視線を向けます。


 お寺生まれ――その通りに……というと語弊があるかもしれませんが、とてもガタイの良い坊主頭の人。

 それが、梅塔(バイトウ) 雨史(アメフミ)先輩です。


 見ての通りパワフルで、その身長とガタイを活かすべくセンターを任されているのでしょう。

 ゴール下で、恐らく三年生のセンターだと思われる人と、リバウンドの練習をしていました。


「真面目で木訥とした感じの人ですね」

「エロ坊主だ。あれは」


 即座にツッコミを入れてきたのは、倉宮先輩です。


「富倉らと筆頭に。教室や廊下で堂々と。下ネタトークしているぞ。デカい声で」


 …………。


 富倉先輩ともども、容疑者としての怪しさが一段階増しましたね。


 気を取り直して、女子バスケ部の方へと視線を向けます。


 長身で中性的な顔立ちの二年生。

 立ち振る舞いは王子様って感じで、歌劇団などにいそうな風貌の方。

 それが安芸津(アキツ) 柚梨(ユリ)先輩です。


「安芸津先輩に関しては誰か知ってますか?」

「安芸津君か……」


 メガネのブリッジに人差し指を当てたまま、陽太郎君が何とも言えない表情を浮かべています。


「いわゆる女子にモテる女子だ」

「やっぱりそうなんですね」

「だが――」

「だが……?」

「美少女が好きだと公言している。二次元もリアルもどっちもオールオッケーだそうだ」

「…………」


 何なんでしょう。

 人柄を聞いて、可能なら容疑者を減らそうと思ったのに、三人が三人とも怪しさが爆発してる気がします。


「あ、わたしナンパされたコトあるよ、安芸津さんに」

「あたしもー!」


 雨羽先輩も花道さんもナンパされたって……。


「知っているか。あいつ。

 いつだったか。無垢な美少女に。たどたどしく罵ってもらいたい。とか性癖を暴露してた」


 …………。


「リョナ体験なら任せろー!」

「そのテンションの上げ方はどうなんだ、花道君」


 指を鳴らしてからシャドーボクシングを始める花道さんに、ツッコミを入れる陽太郎くん。

 果たしてツッコミを入れるべきはそこなんでしょうか……。


「人柄で容疑者を絞ろうとするのは難しそうですね」

「全くだ」


 これ以上、どうやって絞るべきでしょうか。

 悩ましいところではありますが――


「おまえがラクガキ犯だろー! ってとりあえず殴るとかどう?」

「誰をです?」

「一人ずつ順番に? 全員?」

「ダメです」

「却下だな」

「論外だ」

「みんな冷てぇ~!」


 花道さん、割と本気そうだったのが、また何とも……。


「ねぇ鷲子ちゃん。モノさんって頼れないかな?」

「モノさん、ですか?」

「うん。ラクガキ犯って開拓能力者でしょ?

 モノさんは、能力を使おうが使うまいが、見抜けるんじゃない?」


 なるほど。手としては悪くないですね。

 でも、問題は――


「悪くないかもしれませんが、モノさんは神社から動けません。

 どうやって確認して貰うんですか?」

「あ、そっかー……。悪くないと思ったんだけどなー……」


 残念――と、しょんぼりする雨羽先輩ですが、花道さんの様子はちょっと違いました。


「神社ってどこにあるの?」

「濡那原神社ってわかります? 四葉橋(よつばばし)方面の」

「分からないけど、四葉橋なら分かる。そんな遠くないよね?」

「ええ、まぁ……」

「ふっふっふ。良いことを閃いた」


 人差し指と親指で作った谷間に顎を乗せ、キラーンと目を光らせる花道さん。


「花道君。本当にそれは使えるアイデアか?」

「イケるっしょ。エロ二人に美少女好きが一人。

 あたしにかかれば呼び出すくらい、ちょろいし!」

「呼び出す?」


 任せたまえ! と自信満々に言いながら勿体ぶるので、とりあえず私たちはそのアイデアとやらを無理矢理聞き出すことにするのでした。


 聞かずに任せる?

 花道さんの言動や行動を思えば、それはありえない選択肢です。はい。




【TIPS】

 陽太郎――冷静になってみるとハーレム状態なのだが本人は気づいていないらしい。



=====




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