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42/112

42.入学式がありました

お待たせしました

第二章開始です


今回は2話連続更新。1/2


【View ; Syuko】


 入学式を終えて、会場である体育館から移動して、教室に戻り、あとは教室で先生を待つだけ。

 そんな何とも言えない空き時間、私のスマホが着信を告げました。


 連絡用SNS『Linker(リンカー)』へのメッセージ受信の知らせがでています。

 私はアプリを起動して、メッセージ内容を確認しました。



霧香

《入学おめでとー!》


霧香

《そろそろホームルームかな?》


霧香

《終わって、帰れるようになったら連絡してね》


鷲子

《ありがとうございます》


鷲子

《了解です》



 雨羽先輩からのメッセージに、私は少しだけ文面を考えてから、返信しました。


 考えたわりには簡素になってしまった気がしますが、私にとってはこれが限界です。

 前世の知識に頼りたくとも、そもそも前世の自分もこの手のSNSでのやりとりは、こういう簡素なものだったようで……。


 ようは、そういう魂なのでしょう。そういうことにしておきます。




 何はともあれ、ついに入学してしまったという感じですが……。

 来年に編入してくるだろう主人公(HERO)への対策を本格的にしていかないといけない一年が始まりを告げたのです。




 さてさて。

 ホームルームを終え、帰り支度を終えた私は雨羽先輩へとメッセージを送ります。


 お父様は入学式にこそ来てくれたものの多忙の身。

 式が終わり次第、帰ってしまいました。


 迎えはいるかと聞かれましたが、私はそれに首を横に振ったので、ここからは自由時間です。

 そもそも、ここはどこにでもあるふつうの進学校ですからね。


 お金持ちが多い学校とは違いますから、いちいち迎えが来られても困ります。

 そもそも、そういうのが嫌だからこそ私はここを選んだワケですし。


 ……いやまぁ選んで受験して合格した後に、前世の記憶とやらを手に入れてしまったものだから、ややこしいことになっちゃってますけれど。


 そこはそれとして気持ちを切り替えていくとしましょう。


 などと、一人であれこれ思考を巡らせていると、雨羽先輩からの返信が来ていました。



霧香

《おつかれさまー!》


霧香

《うちって校門がいくつかあるけど》


霧香

《消防署の隣にある門ってわかる?》


鷲子

《校庭の横に作られた桜並木の道の先ですよね?》


霧香

《そうそう。そこそこ!》


霧香

《そこで待ってるから!》


霧香

《一緒に帰ろー!》


鷲子

《わかりました。

 今からそちらへ向かいますね》



 一人でいても、やることはありませんしね。

 せっかくですから、先輩と一緒に帰ることにしましょう。


 Linkerでのやりとりを終えて、スマホをしまった私は鞄を手に、教室を出ます。


 前世の記憶のせいでしょうか。

 ゲームの中にある世界を、自らの足で歩いているようで、なんだか奇妙な気持ちになります。


 そんなことを考えながら歩いていたからでしょう。

 前から走ってくる男の子を認識していませんでした。


 ドンっと、右手に衝撃があります。


「おっと、悪いな。急いでてよ」

「あ、いえ。こちらこそ、ぼーっとしててすみません」


 向こうから走ってきた男の子とぶつかってしまったようです。


「ケガとかは?」

「大丈夫です。そちらも急いでるんですよね? 気にしないで平気ですよ」

「そっか。なら良かった。じゃあな」


 そうして走り去っていく彼の姿は、どこかで見た覚えが――


「あ」


 そうです。思い出しました。


 天然の綺麗な茶髪に、シニカルさとお調子者らしさが同居したようた顔。


 あれは――大杉(オオスギ) 玖郎(クロウ)


 正史(ゲーム)のフロンティア・アクターズにおいて、転入してくる主人公(HERO)と最初に友達となり、以後は彼と行動の多くを共にする親友。

 ゲームの都合上、ほとんど喋らない主人公の代わりに、主人公の分まで喋って物語を引っ張っていく重要人物です。


 ゲーム内では、パワー系の能力を開拓能力に持つ一方で、多方面に対するバフとデバフの初級スキルに加え、回復系の初級スキルまで覚える万能型。

 さらに攻撃力に関するバフだけは最上級のものまで取得します。


 序盤は器用貧乏、中盤以降はパワー特化という変わった成長曲線を持つキャラクターでした。

 パーティ中成長率2位という高い攻撃力にバフを盛った一撃は、かなり強力な反面で、防御力だけはパーティ中最下位。素早さもそこそこ高い程度の為、打たれ弱いし、回避も期待できるほどではない――という偏ったスペックのキャラではありました。


「黙っていればイケメンという設定はダテではない顔でしたね」


 走り去っていく大杉 玖朗の背中を見ながら、いずれは道が交わるだろうことに思いを馳せていると、再び後ろから人が走ってくる気配を感じて、振り返ります。


 振り返った先に、男の子が一人こちらへと駆けて来ています。

 なんだか妙に走る人に縁がある日です。


 そんなことを考えながらその場から少し横にズレました。

 すれ違いざま、何かが左手にこすれ、思わず手を引っ込めるように動かします。


 恐らくは、今横を走り抜けていった人のカバンの金具か何かでしょう。

 ケガは特になってなさそうなので、気にするほどのことでもないですね。


 小さく息を吐いて気を改めて顔を上げると、校門のところで雨羽先輩が手を振っているのが見えます。


 私は小さく手を振り返すと、少し小走りでそちらへと向かうのでした。


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