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11.味方と後ろ盾は大事です 1

評価、感想、ブクマ、ありがとうございます٩( 'ω' )و


 モノさんへの自己紹介と、自分の知識に付いての説明を終えると、モノさんはなるほど――と一つうなずきました。


「継承記憶転生者かぁ……これはまた珍しい人に会えたネ」


 おどけた調子のモノさんは、やはりおどけた調子で訊ねて来ました。


「前世が男で、今が女ってどういう感じ?」

「どうと言われましても……私の場合、女性として生きてきた自分の記憶領域に、《前世の記憶》という領域が増えたようなものですので。

 多少の人格や性格への影響はあれ、パーソナルな部分は十柄鷲子……つまり女性なのです。

 まぁ男性に対する理解力などは上がっているかと思いますが」

「じゃあ混乱したり、思わず自分の身体を堪能してみたりとかは無いのか」

「どうしてそこで残念そうな顔をするんですか?」


 私がツッコミを入れるモノさんは一度にへらっと笑ってから、少しだけ顔をシリアスに寄せます。


「ともあれ、君はこの世界を一度物語として体験しているわけだネ――そりゃあ、私の存在を知っているよネ」


 それに対して、私は現代を楽しみながらもモノさんが最終的に求めているものも理解しているのだと口にすれば、何とも複雑そうな顔をしました。


「君がそれを与えてくれるのかナ?」

「物語の最後の戦いはそれでしたので」

「そうか」


 モノさんは目を伏せてしばらく黙り込みます。

 しばらくの間、沈黙が流れたあと、ゆっくりと目を開けたモノさんが、人好きする笑みを浮かべ――


「分かった。君に協力するとしよう。

 ところで、私との出会いを二年ほど前倒す理由はあるのネ?」

「手っ取り早く味方を増やしたかったというのが理由の一つです。

 今し方のヘアー&エイリアンというのは物語の中では出てきていない人です。

 引きこもり気味の鷲子のままならば出会わなかった相手。きっと物語の中では別の誰かがやっていたであろうコトを私はしてしまいました。

 これからも、そういうコトが多々あるのだとは思ってます。

 ……ここは物語ではありませんから。私は……私たちはこの世界で生きているのです。

 行ける場所や人との繋がりは物語の範囲で完結するコトなくどこまでも広がっています。物語の期間が終わってもそれぞれの営みは続きます。

 だからこそ、自分の知識にはないイレギュラーが発生した場合の相談相手という味方を早めに作っておきたかったのです」


 そう、今の私はこの世界で生きている。


 だけど、私は知っています。

 この世界がフロンティアアクターズという物語の通りに進んでしまった場合、大規模な危険が街に……世界に迫るということを。


 それを解決するのは、私が高校二年生になる頃に結成されるだろう開拓部という主人公たちが所属する非公式部活動の部員たちです。

 そこには私も含まれています。


 正直、主人公(HERO)とイチャイチャする鷲子ルートは勘弁願いたいですが、だからといって大規模な危機から街や世界を救うのはやぶさかでもないのです。


 いえ、むしろ――それだけはしなければならないと考えています。


 その為には、未知なる危険すらも踏み込んでいく勇気というのが時に必要となることでしょう。

 だけど、勇気だけで何もかもが解決できるわけではありません。


 だからこそ、可能な限りの勝率を高める為の手段をいくつも用意しておくことに越したことはないと思っています。


「物語通りに状況が動かない可能性を君は恐れないのかい?」

「恐いと言えば恐いですが……でも本来――未来(さき)というのはそういうものでしょう?」


 ヘアー&エイリアンと戦わなければ、まだもうちょっと迷っていたかもしれません。

 ですが、すでに未知と交戦してしまいました。


 ならば覚悟を決めるしかありません。


 何より――


「そういえば、理由の一つというコトだけど、他にも理由があるのかネ?」

「ええ。恐らくですけど、こっちの方が重要かもしれません」


 そう。

 数多くの物語において、自己の持つ秘密の秘匿は重要である反面で、秘匿に必死になるあまりに、ストレスで潰れてしまうイベントが数多くあります。


 その秘匿事項を口にするだけで心臓が止まるような即効性のリスクがあるのならばともかく、私の抱える秘匿事項にそういう即効性のリスクはありません。


 だから――


「抱え込んだ秘匿事項に付随する諸問題やストレスに関して、相談できる相手を作っておきたかったんです」


 私はモノさんに会いたかった。

 この人であれば、きっと理解してくれると信じていたから。


「なるほど。心の平穏というのは確かに大事だものネ」


 合点がいったとモノさん。

 理解して頂けたのであれば何よりです。


「そういう意味では冴内警部と知り合えたのも大きいかもしれません」


 事件に関して秘匿する難易度がかなり下がりますからね。


「シューコちゃん。君はどこへ向かっているのかな?」

「未知なる未来へ――なんて言えればカッコ良いかもしれませんが、そういうカッコ良いものではなくて、未来のイベントを知っているからこそ、単純に平穏な未来が欲しいのかもしれません」


 その上で、自分の知識の中にある回避不能な諸問題をどうにか解決するか――そんなようなことを漠然と考えているだけですから。


 あ、回避可能な主人公の鷲子ルート突入だけは全力で回避するべくがんばりますよ?


【TIPS】

 濡那原神社は夏になると、

 JK前後の子たちが肝試しにやってくることもあるという。

『……いたいけなJKを驚かすのって楽しいよネ?』


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[一言] 神ってか悪霊の類いじゃないか(汗)
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