王女様からの情報
「全く、宰相なのに文字も読めないとは。あきれたものね」
哲秀の隣でこのように言いたい放題の少女。コルタス王女のミーシャである。
何の前触れもなく哲秀の前に現れ、「宰相特別監視員」と名乗り、無茶な注文を叩きつける。
まあ、世に言う「お転婆王女」に部類される人物だろう。
「こちらの世界とは使っている文字が違うんですよ。今、対応表でやりながら覚えています」
時差ボケの哲秀、精一杯の力を使い仕事と王女への対応をする。監視員とは、邪魔をするものなのだろうかと考えることは、寝ぼけてても出来る。
「ふーん。あんたも大変なのねえ......」
他人事にしゃべり続けるミーシャ。
「王様、おらの、村に、架かる、唯一の、橋が、壊れてし、まいました......『建設』っと」
どうでもいいことは無視して作業を続ける哲秀。
一定時間過ぎると、眠気とは体内に沈みこまれていくものだ。哲秀も、ようやくその状態を発動するのに成功。そのため、慣れも伴い作業効率が上がる。
「えーと......『農業』、『財務』、『軍備』。ほんと、色々頼まれてるなあ」
黙々と整理をしながら、多種多様な問題に呆れ返る哲秀。
「パパは怠け者だからねー」
相づちをうつミーシャ。コルタス王カーサー六世は、身内も認めるダメ王様らしい。
「陛下は、女遊び以外は何をしておられるのです?」
「うーん......知らない! だって、パパはめったにミーシャのとこに姿見せないんだもん」
「ご、ご家族で食事を取られないのですか?」
ミーシャの衝撃発言に、疑問が次々と浮かぶ哲秀。
「ないわ。パパもママもお兄ちゃんもお姉ちゃんも、みーんなバラバラだもん」
「は、はあ......」
なんか急に暗い話になったと思い、言葉に詰まる哲秀。
「だーかーらっ! ミーシャはこれからテーデと一緒にご飯食べるからね~!!!」
そう言って、哲秀の肩を思いっきり叩くミーシャ。
「何故ー!!!」
思いっきり倒れる哲秀。整理された書類が宙を舞う。
「監視員は年中無休なのよ!!!」
「意味わかりませんー!!!」
散らばる書類を必死にかき集めながら、出来るだけの抗議をする哲秀。
かくして、哲秀には王女様が無理矢理仲間になってしまったのだった。
少し短いですが、キリがいいのでこの辺で。
里見レイ