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挑戦と条件

 それは、今日の朝食後のことである。


「やあ、宰相!」


 突然、だが当然のように将軍ヴァルドは哲秀に声をかけてきた。


「お、お初にお目にかかります。将軍のヴァルド様ですよね?」


 ナベルから事前情報をもらっていたので、「誰ですか?」と言わずに済んだ哲秀、笑顔で対応。

 ただ、この時は来てほしくなかった。前述したとおり、この時哲秀は城内に「大役をつける」といった知らせを出しており一人も来ていない状態だったからである。


「先ほど出されたあの命令、どのような趣旨がおありなのですかな?」


 そしてまさしく、その話題を持ち出すヴァルド。彼が来た目的もそれ関係なのだろう。


「そのままですよ。私の下で働いてくれる要員を探しているんです。何せ、大臣までいない状態ですので」


「バッカモーンー!!!」


 穏健に対応した哲秀だが、ヴァルドはもとから起こる気満々だった様子。いきなり怒鳴り始める。


「この由緒正しきコルタス王国の政務をなんだと心得ておる? おぬしは異世界より参った救世主だから目をつぶるにしても、それ例外のものは血統の良いものにせんか!」


「しかし、誰も大臣などを務めようとしないではありませんか」


「それを何とかするのがおぬしの職であろう! さっさとこんな命令撤回して、貴族へ挨拶に行ってくるのだ。いいな!!!」


 そう言って彼が立ち去ったのだ。

 このことにより、哲秀は会って間もないヴァルドを苦手視するようになった。



「しょ、将軍。ここは宰相の執務室です。一体何用でございますか?」


 さて、所戻って現在の執務室。

 色々文句を言いたいところだが、彼の体格が良すぎて口答えできないでいる哲秀。


「おぬしが軍備に口を出そうとしていると聞いてな、要望を言いに来たまでよ」


「予算、おいくらをご希望ですか?」


「金一千万! これを一か月以内に用意せなければおぬしの首を切る!!!」


 大声で無茶な宣告をするヴァルド。


「はいー?」


「あ、兄上? 金一千万といえば国家予算の二倍ですよ。さすがの宰相でも不可能では......」


 ハルーシャも、兄の強引さに難儀を示す。


「ハルーシャ、この男は国の救世主となるべき存在だ。ましてや、どこの馬の骨か分からん連中に政治を手伝わせている。しきたりを破るというのなら、前例を破るくらい見せてもらわなければ王も納得すまい」


「ですけど......」


「ふっ。わが主にとっては、赤子の手をひねるようなものでございます」


 さて、ここで登場したのはナベル。足音一つ聞こえない出現だ。


「ナベル!? いきなり何言ってやがる! っていうか何でここにいるんだよ?」


「宰相様が私の名をお呼びになりましたので、参上したまでにございます」


「ああ、そういや呼んだな。じゃなくて、ちょっとこっち来い!」


 哲秀、自分抜きで話を進められないよう一度ナベルを部屋の隅へ引っ張る。


「お前、何か有益な情報があって言っているんだろうな?」


「もちろん。第一、この国は政治自体がボロボロ。宰相様でなくても救世主になれるような状況でございます。私の情報を使えば、金五千万は確実です」


「そうか、お前は色々知っているもんな。よし、信じよう。お前の情報、俺が使いこなして見せる!」


「それでこそわが主、近い将来の大英雄でございます」


 と、部屋の隅にて会話を二往復する二人。


「いやはや、お待たせいたしました将軍様。どうぞ、金一千万を軍事予算として差し上げましょう」


「ほう、従僕に言いくるめられたのかな? まあよい。失敗したら命がないことを忘れるなよ」


「ええ、もちろん。ただし、成功時にはそれなりの報酬をいただきますので」


「よかろう。男に二言はなしだ」


 先ほどとは打って変わった哲秀の堂々ぶり。ヴァルドも半ば乗せられるように受諾する。


「テーデ......」


「姫様、彼を信じましょう。きっと大丈夫です」


 心配するミーシャをなだめるハルーシャ。

 さあ、大事業が始まる。


いやー、やっぱり無茶ぶりミッションは華が咲きますね。書いてて楽しいです。

里見レイ

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