骨ある者の集め方
コルタスの城下町は、お世辞にも活気があるとは言えない。
別に重税がかかっている訳ではないのだが、かといって商売を推奨されている訳にもあらず。
したがって、市民は必要最低限の労働しかしていないということだ。
「こんなんで国の収入足りるのか?」
「足りてません。ハルーシャ様も『軍備にかかる金がない』みたいなこと仰っていたではありませんか」
「......そうだったな」
どの売り子からも声を掛けられることなく、このような話をしながら街中を歩き回る灰色マントの二人組。
言うまでもない、哲秀とナベルである。
哲秀が言っていた「王道戦術」、それは「お忍びで人探し」という織田信長が使っていた戦記物お決まりのパターンなのだ。
「なんか、困っている人を助けたの。そこにいた人が国のお偉いさんで、能力認められてお城に雇われたの。そしたら、自分の才能が覚醒して出世街道まっしぐら!」
というものである。
通常は異世界から召喚されたものが「雇われる側」なのだが、哲秀は「雇う側」である。
それも、「勇者」や「騎士」ではなく「宰相」で。
「さて、誰がいいんだろうな?」
哲秀、これ彼どんな人に声をかけるべきかと相談する。
「あれ、決めてなかったのですか?」
ナベル、完全にそこまで決めていたのかと思っていたので聞き返す。
「ま、根性があれば誰でもいいのだがね。その根性をどうやって測ろうかなって思ってさ。あと、単純にお前の意見を聞いてみたかった」
哲秀はこう答える。あくまでも、客観的な判断をしようと考えているのだ。
「宰相様の第一印象でよろしいのでは?」
「ナベル? ......なるほどな。宰相の俺に信頼を置いて、下手な邪魔をしない。そんで俺の判断に混乱を与えないようにしているってことか? ふん、買いかぶられた気もするが気分が悪いとは思わないな。んじゃ、これから行くところに文句言うなよ」
哲秀、これで決心がついたのだろう。ニヤリとして足を突然別方向に切り返す。
そして、そのまま人通りからどんどん離れていった。
「......誰も文句なんて言いませんよ。宰相にこの国全てがかかっているのですから」
ナベル、周囲に敵がいないことを確認しながら哲秀の後についていった。
さて、ここは誰も近づかないような路地裏。所々に俯いて座っている子供がいる。
哲秀はフードを深くかぶり、そのまま広い所へと足を進める。
周囲の浮浪児たちは、うつろな目でその怪しげな男を窺っていた。
「警戒を怠るなよ」
隣に来たナベルにそうささやいた後、哲秀は周囲とぐるりと見渡す。
そして大きく息を吸い込んで。
「社会の底辺にいる浮浪児たちよ!お主らの中に苦行に耐えてでも上り詰めたい者は居るか!?」
裏路地一帯に響き渡る大声で、彼は問いかけを投げつけた。
次あたり、新キャラ出ます。
里見レイ