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破壊神の剣が装備できません  作者: にゃろん
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 王都から遠く離れた田舎の村、ましてや孤児院の楽しみは少ない。そんな孤児たちの一番の楽しみは、先生のお話しだ。


「先生、早くお話し聞かせて!」

「早く、早く」

 

 孤児たちは頻りにお話しをせがむが簡単に物事は進まない。


「はいはい、皆さんの大好きなお話しは夜のお祈りの後にしますよ。それでは聖女様にお祈りを捧げましょう。時間は今日も1時間です」

「1時間なげーよ!でも、お話し聞きたいからお祈りする!」

「はいはい、皆さん頑張ったら、皆さんが大好きな聖女様の伝説をお話ししますよ。それではお祈りスタートです」


 孤児達は思い思いにお祈りを始める。この孤児院は、世界を救った聖女を神格化し、信仰している聖女教の教会でもあり、何かと宗教色が強い。お祈りに集中していない子は、先生に分厚い聖典で頭をぶん殴られる。今日も居眠りした1人が犠牲となり聖典の餌食になったが、1時間が経過し楽しいお話しタイムとなった。先生は教会のシスターでもあり、お話の腕前はかなりのものだ。


「はいはい、それでは今日も聖女様の伝説をお話ししますね。今から500年もの大昔・・・」


 今から500年もの大昔。悪い悪い竜の王ともっと悪い悪魔の王がいました。竜の王と悪魔の王はそれぞれの眷属を集め人間を苦しめました。竜たちは町や村を火の息で焼き払い、大人も子供も丸呑みに食べてしまいます。悪魔たちは悪い心を人々に植え付けます。悪い心を植え付けられた人々は、いがみ合い、いたる所で争いが始まります。争いはどんどん大きくなり、国中で人間同士の殺し合いが始まりました。その光景はまさに地獄です。


 ある日、1人の少女が現れました。少女はいがみ合う人々から、聖なる力で悪い心を追い払い、争いを収めていきました。大きな町、小さな村、世界中の争いを収めて行きます。悪の心から解放された人々は少女のもとに集まり、人々を襲う竜と戦いました。竜たちは巨大で狂暴でしたが聖女と人々は力を合わせて戦いました。この戦いの中で1人の剣の達人が現れます。剣の達人は聖女を守る存在、聖騎士と呼ばれました。たくさんの犠牲は出ましたが、何とか竜たちと竜の王を北の山脈まで撃退しました。聖騎士は竜の王の首を切り落とし、王を失った竜たちは聖女に降伏し、北の山脈から外に出ないことを誓いました。

 

 竜退治を終えた聖女と聖騎士と人々は悪魔の王の城がある東の森に向かいました。聖女の周りには悪い心から解放された人々が国中、大陸中が集まり、聖女と共に戦い悪魔を退治して行きました。ついに聖女たちは悪魔の王の城に辿り着きます。悪魔の王は聖女たちのあまりの強さに恐れを抱きます。恐れを抱いた悪魔の王は異界の門を開き、破壊神を召喚しました。破壊神は雲まで届くほど大きな巨人のような姿で右手に巨大な剣を持ち、剣は一振りで西の山脈を吹き飛ばし、一振りで大陸中央に大きな亀裂を作りました。破壊神の力は強大でした。大きな大きな犠牲は出ましたが、聖女たちは力を合わせて戦い、ついに聖騎士の剣が破壊神の右腕を切り落としました。切り落とされた右腕は巨大な剣を掴んだまま大地に落下し、束のみを残し地面に突き刺さりました。巨大な剣を失った破壊神は力を失い、聖女によって再び異界の彼方へ追い払われました。


 聖女の活躍により破壊神を倒し、世界に再び平和が訪れました。人々は世界を救った聖女に感謝し、村々国々に教会を作り、毎日聖女様に感謝のお祈りを捧げました。これが聖女教の始まりです。皆さんも聖女様に感謝し、しっかりと日々のお祈りをしましょうね。めでたしめでたし・・・

 

 ちなみに破壊神の剣が突き刺さった場所が観光地になり、いつの間にか村になったのが皆さんの住んでいるこの剣の村です。なんでも、剣を引き抜くことが出来れば、破壊神の力を手に入れることができるそうですね。王都の騎士たちが、10人がかりで挑んでも抜けなかったので、誰にも抜くことは出来ないと思いますが。


 先生は十八番の聖女様の伝説を語り終え、子供たちを見渡した。思いっきり盛り上げながら、お話をしたのでみんな目を輝かせながら先生を見ている。きっと聖女様への信仰心が高まっただろう。と思ったが、1人の少女が「グカーグカー」といびきをかきながら爆睡中だった。


「コラー!レイナさん、また居眠りですか!」


 先生はドスン!と分厚い聖典で少女の頭をぶん殴った。子供たちから一斉に笑いが起こるが、少女は「グカーグカー」と、いびきをかきながら眠り続けた。レイナは居眠りの常習犯で、お祈りの時間も居眠りをして頭をぶん殴られている。12歳になっても居眠り癖が治らない困った子だ。


「やれやれ・・・たくさん頭を叩くと益々悪くなってしまいますし・・・レイナさんは困った子ですね・・・今日は、もうお休みの時間なので、お話の時間はこれで終わりです。ベッドに入って聖女様に感謝しながら寝ましょうね。起きそうにないから、リュカ君は今日もレイナさんをベッドに運んでね」


「はーい」と、言って黒髪の少年リュカはレイナを背負ってベッドルームに向かった。ベッドに寝かせ、毛布を胸元までかける。レイナは「グカーグカー」いびきをかき続けていた。茶髪でショートカットのボーイッシュな彼女は、よだれで口元はベトベトだが、リュカにとっては天使のような寝顔に見えた。少しドキドキしながら、よだれを拭き取ろうと手を伸ばすと、レイナはパチッと目を開き、


「おはよう、リュカ。そろそろ、村に出かけよう!」


 睡眠たっぷりのレイナは元気いっぱいにベッドから飛び起き、窓を開け孤児院から飛び出していった。

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