挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

ブックマークする場合はログインしてください。

これは通過点に過ぎない

作者:綾川 五月丸
 今日はろくでもない一日だった。朝は寝坊して遅刻するし、時間割は曜日を間違えてほとんどの授業を教科書もノートもなしで過ごした。極めつけは、返却された先月の模試が最低点を更新していたことだ。これでは志望校はおろか、2ランク下の学校にだって行けやしない。全く、これからどうすればいいっていうんだ。
 帰りの電車はガラ空きだった。いつもなら同級生に借りたマンガでも読むところだが、今日はさすがにそんな気になれない。ふと前の座席に座った薄汚れたおっさんと目が合った。不思議な目だ。どんよりと暗く沈んだ表情の中で、その目だけが力強く、すぐには視線をそらすことができなかった。
「あんた、今いくつだ」
 男が話しかけてきた。
 よせよ、今はそんな気分じゃないんだ、絡まないでくれ。
 聞こえないふりをして無視していると
「高校生か。ふん、今どきの学生はろくに返事もできないのか」
 でた。おっさんってのはどうしてこうも説教したがるんだ。勘弁してほしいな、全く。
「俺にも若い頃があった。ずいぶん無茶もした。それで、年を取ると後悔するんだ。ああしておけば、こうしていれば良かったってな。大事なポイントを逃して、人生を失敗したような気になる」
 男の言葉にはその目と同じ力強さがあった。決して声は大きくなく、むしろ聞き取りづらい。だが、聞き流すつもりだったのになぜか無視できなかった。
「俺はその失敗を取り戻そうと必死になった。けど、それは間違っていた。いいか、どんな些細なことも重大なことも、一生の中では一つの通過点に過ぎないんだ。覚えておけ」
 そう言い残すと、急に立ち上がって隣の車両へとフラフラと歩いていった。
 なんだったんだ、あれ。けれど、それまでの憂鬱な気持ちは、まるでおっさんが持って行ったかのようになくなっていた。終着点がどこなのかはまだ分からないけど、確かにこのろくでもない一日も、人生においては単なる通過点に過ぎないのだ。 

評価や感想は作者の原動力となります。
読了後の評価にご協力をお願いします。 ⇒評価システムについて

文法・文章評価


物語(ストーリー)評価
※評価するにはログインしてください。
感想を書く場合はログインしてください。
お薦めレビューを書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ