昭和生まれと石鹸
タイトルを見てなんじゃこりゃと思った人、正解。私自身なんでこんなエッセイ書いてるのかわかりません。ただ何となく書きたくなったので書いてしまおう。
唐突で申し訳ないが、私は石鹸が好きだ。最近主流のボトルに入って液体が出てくるものや、泡が出てくるものではなく、昔ながらの固形石鹸が大好きだ。
新品の石鹸を袋から出してその手に持った時の、あの何とも言えないツルツルの手触り、未使用の石鹸にしかないあのゴツゴツとした綺麗な角の手応え、あの瞬間にはいつも何故か至福の喜びを感じるのである。
だが、最近は固形の石鹸もめっきり見なくなってしまった。どこに行っても手洗い用やボディソープは液体石鹸ばかりである。
別に液体石鹸が悪いわけではない、便利だとは思う。
ただ味気ないのだ。
子供達が外で泥だらけになって「ただいま~‼」と帰ってくる。お母さんが子供達に「おかえり、外から帰ったらちゃんと手を洗いなさい!洗わないならおやつ無しよ!」と声を掛ける。
子供達は水道でさっと手をを濡らすだけで済まそうとするが、そうは問屋がおろさない、お母さんはお見通しなのだ。
そこで石鹸の出番である、そのまま置かれていることもあれば、ミカンのネットに包まれている場合もあるが、どちらにしても子供達は一生懸命に手を洗わなければ泡がたたないのでお母さんは納得してくれない。今の液体石鹸は簡単に泡が立つが洗った気になっただけで本当に手が綺麗になってないんじゃないの?などと、固形石鹸びいきの私は思うのである。
お風呂でも石鹸を使ってタオルに沢山の泡をたてるのは昭和のお父さん達の専売特許だった。洗っても取れない油で汚れたゴツゴツとした大きな手で子供達の為にタオルを泡立てる。そして子供達の体を擦り傷があろうがなんだろうがお構いなしにゴシゴシ洗う。
何とも良いではないか。
とはいえこんなことを書いていながら、現在我が家でも固形石鹸は見向きもされず液体石鹸が人気だ。
全くもって遺憾である。
仕方がないから、自分で買って来て風呂場で使うのだがなくなっても当然補給されることはない。家族の備品ではなくおっさんの個人的嗜好品の扱いなのである。やはり昭和は幻想にすぎずこの21世紀には石鹸の良さを理解するものはもはや存在しないのか?時代遅れなのか?などと毎日湯船に浸かって考えるのであった。
しかし、状況は予測もしない方向に動き出す。ある日我が家に石鹸ブームがやって来たのである。なんだかよく知らないが、ショッピングモールにあるお洒落な石鹸専門店の石鹸がやってきたのである。バターの香りやマンゴーの香り、よくわからないがお肌に良い成分が入っているらしく家族に大人気である。
私としては馴染みのない石鹸だが、とにかく固形石鹸だし万々歳である。時代はまわるのさ、とこのエッセイもめでたしめでたしで終了である。
ん?
おっさん用のじゃないから使うな!だと⁉……………