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ホッレおばさんと元怠け者のローザ

作者: みなみ

ホッレおばさんという童話を元に妄想しました。






私は物語が好きだった。

昔々の物語。

妖精や精霊、神や悪魔が身近に息ずく世界をいとおしく思っていた。


でも、同時に思った。

悪役と呼ばれるもの達の末路の(むご)さをかわいそうだと。


もちろん殺したあげくとか、手足を切り落としたあげく等の凄惨系えげつなさ系は十分な仕打ちは必要だけど。

無惨な死は当事者が死で償うべきだ。


私がかわいそうだと思うのは主人公より醜い、とか知らず知らずのうちに愛する二人を引き裂いた、との理由で追い詰められ惨めな最後をとげる人達だ。



私はそう、いわゆる悪役になる運命を受けたのかもしれない。

前世の記憶なんて本に関すること以外は朧気。

私が持つのはたくさんの昔話の物語の記憶。

その記憶が私にささやく。

役割を、末路を。


父が妹だと連れてきた美しくも愛らしい幼子を見た瞬間、私は来るかもしれない未来を知った。


だからこそ、抗ってみせよう。

めでたしめでたしなんてくそくらえ。

人生が終わるまでそんなこと分かりはしないんだ。



母が何かを言う前に、私はその子を抱き締めた。



「ありがとう父さん、母さん!

私が妹を欲しいってお願いしたのを叶えてくれたのね!

私、立派なお姉さんになって母さんとこの子を守ってみせるわ!

ねぇ、この子の名前は?」



「マルガレーテだそうだ。

父さんは母さんと久々に話をしたい、まかせてもいいかい?ローザ。」



美しい顔の父が微笑む。

何故、父は普通のありふれた顔立ちの母を選んだのだろう。

美しいものと並べば、隣は霞むか粗悪品にみられる。母が父と並べば醜い女と嘲笑される。

母はそれに耐えられず、心を病みはじめたので都市から離れた緑多いこの村に来たのに。

なんだって父はそんな母を追い詰める真似をするのだろう。



「分かったわ、父さん。

マルガレーテ!可愛い妹!とびきりの場所に案内するわ!」



知らぬ存ぜぬ顔で私は微笑み妹の手を取る。

かわいそうなマルガレーテ。

母の得られぬ愛を求めて健気にひどい仕打ちに耐え、大金を得る娘。

その後でちやほやされたとあったけど、愛されたとはかかれなかった。

王子様が迎えに来ないで終わるお話の主人公。


私は貴女を主人公にはさせないけれど、その代わり愛するわ。

例え平凡顔の私が隣にいることで醜女と呼ばれようとも。

貴女を愛する貴女だけの王子様が迎えに来るまで。


だからどうか、

私と母を悪役にはしないでちょうだい。














あれから十年の年月が流れた。

マルガレーテはそれはそれは美しい少女となった。

周りは彼女が通るたび見惚れたり、そわそわしたりしたが本人は全く気付いていない。


今日も元気に私を起こしに来る。


「姉さん起きて!

ご飯の用意できたわよ!」


「おはよう、マルガレーテ。

今日も可愛いわね。」


「えへへ、ありがとう!

姉さん、凄い!とても素敵な刺繍!」



夜なべして作った胴着の刺繍にマルガレーテは歓声をあげる。

これは自信作だ。

私は寝坊もすることも時々あるが、来るべき将来(妹と比べられ嫁に行けない)に備えて自分の腕一本で生きていけるよう必死に刺繍をはじめとしたお針子の仕事を学び仕事とするまでになった。

仕立屋の仕事もちょっとかじっているので一から服を仕立てて装飾するのもおてのものだ。


今では中々の腕前となり村中どころか、近くの村や街からも刺繍や仕立ての依頼が来ることもあるほどだ。


相変わらず商人として忙しいのか父は年に一度来るか来ないかで居ないに等しい。

どの程度の商人かは知らないが、いつ倒産するかも分からない。

仕送りは貯蓄しておくようにして細々と暮らし、

教会や孤児院には少額ではあるがまめに寄付をしたり慈善活動への協力は惜しまないようにして、

近所の人達とも良好な関係を築くようこの十年心血を注いできた。



「ねぇ、秋祭りは誰と踊るの?」



可愛い可愛い妹は無邪気に尋ねてくる。

秋祭りは若い男女にとってはお見合いみたいなものだ。

村の大半の若い男は妹に夢中。

しかしその中でも何人かは憧れと恋に見切りをつけ将来のパートナーを見繕い、何組かのカップルが生まれた。



「私は少し眺めて仕事をしなきゃ。

ほら、エリカテーナの花嫁衣装頼まれたの。」



そのお陰で大仕事が舞い込んできた。

妹様々である。



「姉さんはそればっかり!

たまにはみんなと踊ろうよ!」



妹に熱をあげる男共と踊って互いに何が嬉しいのだろうか。

分からないほど私は鈍感ではない。

しかしながら妹は悪気など全くない。

大好きな姉と一緒にやりたい、居たいと未だに無邪気に思っているだけなのだから。



「私、刺繍が好きなのよ。そして私の手掛けた衣装で楽しく踊るの皆を見たいの。」



今年の祭りは貴族や金持ちも大勢来る年らしい。

五年に一度の大豊穣祭の開催にこの地が選ばれたのだ。

父も帰ってくると便りが来たので母も嬉しそうだ。

これで金持ちか貴族に妹が気に入られ幸せになってくれれば、私も、村の若者も諦めがつき、別な道を見つけられるのではないのだろうか。

皆が浮き足立っていた。

私も、浮き足立っていた。

物語とは妹の環境も全く違う。

私の性格も、家族の関係も。



だから…


だからそう、私も安心していたのだ。




















気付けば花畑に寝転んでいた。

どこまでもすんだ空。

匂いたつ花々。


私はポカンとした。

おかしい。


だって先程まで大豊穣祭で各村々の代表の美しい少女達が焚き火を囲んで舞を披露しているのを眺めて家路につこうとしていたのに。


そうだ、夕暮れ時で、いきなり後ろから手を捕まれて驚いて…



村のはずれの井戸に落ちたのだ。



あと、もう少しで村のはずれの我が家につく手前だった。



落下の恐怖と水の冷たさと、もがく程に遠くなる水面を覚えている。



血の気が引いた。

私は死んだのだろうか。


だって体は濡れてもいないし、一面の花畑。

これはいわゆる、死後の世界なのだろうか。



どうしよう、残された母とマルガレーテはうまくいくはずがない。

おおらかなマルガレーテ。

繊細で心の弱い母。

無自覚に悪気なく母の精神を削り、追い詰めてしまうかもしれない。


それに結婚衣装を楽しみにしていた娘さん達の衣装も未完成。


後でこっそり食べようと思った美味しい焼き菓子もそのまま。


読みかけの本だってあった。



ぽろぽろと涙と一緒に後悔が溢れてくる。




こんなめでたしなんて望んでなかった。




不意に、こうばしい香りが漂ってきた。

涙で濡れた顔を上げると目の前には大きなパン焼き窯があった。

そこから声がする。



『ねぇ!取り出してくださいよ!

早く取り出して!!』



ぎょっとした。人がこの中に入っているのだろうか?



『早く取り出してくれなきゃボクたちみんな焦げちまう!』



複数系だと、そんな馬鹿なっ!

焦った私がエイヤッと窯のふたを開けると、そこには焼きたてこんがり、なパン(複数系)がいた。

それが口々に焦げる!助けて!早く!と急かすのだ。

恐怖である。

後ずさろうとすると罵られ、私は別な意味で泣きながらそいつらを窯から出した。

服や手が黒く汚れるまで頑張り、全て出し終え、へたりこんだところでパンは喋らなくなり、

まずは窯が、続いてパン(複数系)が忽然と姿を消した。

しかしながら私の汚れだけはそのままだった。

しばらく茫然としたが、とりあえず汚れた手を服で拭き取り立ち上がりあてもなく歩き出した。





『ねぇ!ゆさぶってくださいよ!

早くゆさぶって!!』



唐突に甲高い声が響いた。

気付けばいつのまにか私の側に鈴なりに林檎をつけた木が生えていた。



ああ、まさかこれは。



『ボクたちみんなもう熟れてるんです!

早くゆさぶって!!』



おそるおそる立ち上がり木を揺らす。

足りない!

もっと強く!


その間も口々に指示を飛ばす林檎達。

とてもやかましい。

段々とイライラしてきて力の限り揺さぶってやった。

オマエらみんな落ちて砕け散れ、と心の中で悪態をつきながら。




どどどどどどどど…



滝のように林檎達は落ちてくる。

しかしながら当たっても痛くはない。

私の願いとは裏腹に林檎達は皆無傷で感謝の言葉をのべてくる。

ついでとばかりに重ねてくれと頼まれた。

嫌だったが、ひとつを寄せればあらあら不思議、四方八方から林檎が集まってくる。

そして林檎は喋らなくなり、ただの林檎の山となった。



これはホッレおばさんのお話の通りの流れ。

私は、どうやらマルガレーテの代わりに物語の中に来てしまったのかもしれない。

いやでも、原作ではローザも不思議な世界にやって来ていた。

助けの声を無視し、仕事を怠け、酷い贈り物を受け死んでしまうのだ。



ぶるりと身を震わせる。

ひとつの過ちが私の命を脅かす。



しかしながら、と私は考えた。

怠け者でろくな家事をしなかったローザは悪いとは思うが、普通パンや林檎が喋ったら怖いし逃げるのではないだろうか。




まぁ、一番怖かったのはなんといってもホッレおばさんの顔だろう。


前歯がゾッとするほど大きい、って表現をなめていた。本当に大きい。

出っ歯というレベルではない。

あれだ、ハダカデバネスミに似ている。



「あなたがホッレおばさんですか?」



『おや、あんた私を知っとるのかい…いや、分かっていると言った顔だねぇ。』



「はじめにお願いします、

私をここで働かせてください。

そして報酬に、もとの世界に…私が井戸に落ちた日の朝に還してください。それ以外は何も要りません。」



『ほう、何をするのか分かっているのか。』



「はい、振るうのですよね。」



『ああ。

あんた毛色の変わった子だねぇ。その仕事さえすればどう過ごそうとかまわないよ。

さぁ、お入り。』



こうして私とホッレおばさんとの生活が始まった。







ホッレおばさんは頓着しない人だった。

だから家も所々ぐちゃっとしていて、私には我慢ができなかった。

掃除して、寝床を作って、掃除して、食事して、刺繍をして、掃除して、寝床を作って、掃除して…

位の割合で掃除していた。

そして後任の人がもし来たときに困らないように掃除の仕方やコツを絵も交えて描いていった。

次の人が私と同じ国の人や字を読める人とも限らないし。

ホッレおばさんはある種の冬の女神という説があるから、例え別な国の人だって神の力で話すことは可能だろうから。


ホッレおばさんは前歯が異常に長いので普通の食事をうまく取れないから、食事にも気を使ってみることにした。

本人は食べなくても良いと言ってたけど私が食事をするときには寝ているとき以外必ず来るので、食べやすいもの、美味しいものを考え提供してきた。

今では出されるのをテーブルでワクワクしながら待つまでになった。

お菓子は別腹感覚なのかもしれない。

この頃には私もホッレおばさんにすっかり慣れて、怖くはなくなっていた。慣れって怖い。



そんな暮らしをしていたが母やマルガレーテが脳裏に浮かんでは離れなくなり溜め息が増えてきた。

これは、いわゆるホームシックなのだろうか。


不眠になりかけ仕事が疎かになってはいけないとホッレおばさんに相談すると、彼女はいまいましそうな顔をして『時が来たようだ』と言った。



嬉しさに頬がゆるむのが分かる。

お話の通りなら帰れるのだ。



「ホッレおばさん…

私、仕事のあれこれや食事の事、纏めたのでこれを次の娘に見せて下さいね。

不器用な子でもなんとかなるコツを纏めたので。」



書き記した紙がものすごい量になったのでまとめてみたのだ。

なんちゃって教本である。



『あんたはおかしな子だね。

まぁ、ありがとうね。次の冬に使ってみるようかねぇ。

ひとつ教えてやろう。

運命は変えられない。

戻してもあんたは落ちる運命だ。

思い残しは残らず片付けてからその日に挑みな。

自由になるのは春になってからさ。

今度の冬の娘はアンタだからね、冬の間は私のモノだ。』



そう言って笑ったホッレおばさんの顔は凶悪だったけれども、私にはそれが満面の笑みだってことが分かった。



「ありがとう!」



叫んだ声は届いたかは分からない。私は真っ白な光に包まれ意識を失った。




















「朝だよ!起きて!」



可愛いマルガレーテが私を揺さぶる。

ガバリと私は起き上がって訊ねた。



「ねえ!今何日?

祭は何日後?!」








結果として、私は7日間前に戻されていた。

その間は寝食を忘れるようにして受けていた仕事をこなした。

あまりの鬼気せまりっぷりに母とマルガレーテがなんとか私を休ませようと協力しあって仲良くなったのは嬉しい誤算だった。


そして迎えた運命の日。

私はなるべく過去と同じように過ごした。

違うのは仕事は全部片付けたのと、隠しお菓子を食べたことと、読みかけの本を読破したこと。



そして、私は再び井戸の中へ。

なるべく暴れず力を抜いて浮く努力をする。

その時、上からくみ桶が降りてきた。

必死に捕まり、万が一気を失っても溺れないようポケットに潜ませた編み紐で体をくみ桶とそれに付いた縄に結ぶ。

桶が降りてきたのは私を掴んだ相手が助けようという気はあるということだ。そう信じよう。

寒さと恐怖で私の意識は遠のいていった。




夢を見ていた。

ホッレおばさんの家で暮らす夢。

時々目覚めると、ひどく空腹で枕元にある食事をたいらげまた夢の中へ。

同じ日々を繰り返す。

違うのは最初からホッレおばさんとの距離が近かったこと。



ある日夢の中で、私はパンを焼いた。

夢の中でうつらうつらするといつか聞いたパンの声(複数系)が私を起こす。



『焦げちまう!ほら早く!早く!取り出して!』



必死の声。

私は真っ黒になりながら必死に取り出す。

しかし、取れども取れどもパンは尽きない。

涙と汚れでベタベタになりながらそれでもパンを出し続ける。



その時、




光輝く雄鶏が降り立った。

そして声高々に叫んだ。



『コケコッコー!!!!!

べたっ黒お嬢さんのお帰りだよぅ!!!!』





目を開けると、マルガレーテが母が、父が、見知らぬ人が凄い形相で私の名を呼び叫んでいた。



「どうしたの?」



私が尋ねると、みなピタリと叫ぶのを止めた。

自分のかすれきった声に驚く。



「姉さんのばかあぁぁぁ!

死んじゃうとこだったんだよ!良かった!生き返ってよかったよぉぉぉ!」



涙と鼻水まで垂らしたマルガレーテが抱きついてくる。

母と父も抱き合い泣いていた。

泣いて言葉に詰まったりするマルガレーテをなだめながら話を聞いたところ、私は井戸から救出されたあとずっと寝たきりだったそうだ。

なぜかみんなが眠っている間に目覚めて食事をすると再び寝てしまうようで。

医者も匙を投げ、嘆く母とマルガレーテをかいがいしく父達が宥め、励ましていたそうな。

枕元に食事があったのは、食べ終えるとどこでも寝てしまうからだそうで…


そんな日々を送っていたが私が苦悶の声を上げはじめて、みんなが集まり呼び掛けていたとの事。


それにしても白っぽい服を着たマルガレーテは朝日をあびでまるで、黄金色の服を着ているようだった。

プラチナブロンドもブロンドに見える。

キラキラ光ってまばゆいばかりだ。



「ローザ殿…申し訳なかった…」



見知らぬ人が私に謝ってきた。

いったい誰だろう。

ものすごく美形なんだが。



「私の婚約者で、姉さんが井戸に落ちる原因になった人。

最初は嫌いだったけど、色々助けてくれて…それで…」



頬を染めてるマルガレーテ。

涙と鼻水でぐちゃぐちゃな顔だったけど、とても美しかった。

ああ、この子は自分だけの運命にめぐり会えたんだと分かった。


ちなみに見知らぬ人は私の刺繍の話を聞き、サプライズで友人に送る物に刺繍を頼もうとこっそり追いかけて来たら私がビックリして井戸に落ちたそうな。



「ローザ、マルガレーテ…

実は我々は貴族だったんだ。身分違いの末に駆け落ちしてな…やっと実家にゆるしを得たからこれからは家族で暮らそう。」



久しぶりに会った父はやはり美しかった。

というか、駆け落ちしたのに浮気とかしてマルガレーテ作ったんか。最低だな。

母が心を病みかけたのはそんな背景もあったからだったのだと納得する。


目覚めたら春になっていた。

ホッレおばさんが言ったことはこの事だったのか…と分かった。



少し考えて私は言葉を紡いだ。
















☆☆☆☆☆☆☆☆





ある緑多い村に優れたお針子が住んでいました。

彼女の美しい刺繍を入れたモノを持つと幸せになれると評判でした。けれども、依頼を受けて貰うには条件がありました。

依頼人が直接的頼みに来ること、

そして時々訪れる彼女の友人を見て逃げ出さないこと。


ホッレおばさんと呼ばれた友人はとても恐ろしい顔でしたが、優しい人だったそうです。


ですがいつまでも変わらないホッレおばさん達の見かけを怪しんだ、依頼をしに行って逃げ出した男が彼女を悪魔であると触れ回り大変な騒ぎとなりました。

お針子を知る人はそんなことはないと怒り庇い、関わったことのない人は男の話を信じ彼女達を捕まえようとしました。

すると突然吹雪がお針子の家を包み跡形もなく消えてしまいました。

その後間もなく、

男は病を得て苦しみ抜き死んでしまいました。

男を信じた人も次々同じ病に倒れたそうです。





☆☆☆☆☆☆☆☆☆





「へぇ~、そんな話になっているんですか。

しかしなんで病死したんでしょうね。」



「冬を司る私は冬に流行るものも司るからねぇ。」



「それってインフルエンザ?!!!」



「なんだい、それは?聞かん名だね。」



そんな会話をしながら私は深い森の奥に移動された家でホッレおばさんとお茶をしていた。


私は村に残留して一人立ちすることを選んだ。

妹の花嫁衣装を刺繍すると評判が広まり、依頼がものすごく増えた。

しかも無茶な感じのお偉いさんからの依頼が、だ。

地域密着型の仕事をしたい私はやんわり断ったりしたら、力にものをいわせて潰されそうになってしまった。

そこへ颯爽と何故か現れたのがホッレおばさんだった。

そして無茶野郎は彼女に恐れをなして逃げ出してくれて事なきを得た。

冬以外は眠っていると本で読んでたのに、何故と思ったら小腹がすいて目覚めたとの事。

それから冬以外は私の家で過ごし、冬場は村が雪に閉ざされるので、私がホッレおばさんの元に行く生活が続いた。

あの日までは。



「しかし、こんな山奥…

どうやって暮らそうか…」



「魔女狩りがむかしむかしになるまでは大人しくしておけばいいぞ。

なに、食材はたくさんある。」



ホッレおばさん…いや、美女が笑う。

冬の女神はいくつもの顔を持つらしい。

今、目の前に居るのは妖艶な美女。



ホッレおばさんの家のあるところはいわゆる冥界に近かったようだ。そこのものを食べた続けた私は人という枠からいささか外れてしまったらしい。

わりかし神の眷族もどきになってしまったようだった。


長い長い寿命を持つモノとなってしまった。

いわゆる不老である。



「そうですね、じゃあ貴女のお世話をしながらのんびり暮らしますね。

これからもよろしくお願いします。」



「ローザよろしくね。

それより、この料理を作れるかい?」



妖艶な美女になったホッレおばさんが目を輝かせて見せてくるのは料理本。

恐ろしい出っ歯をやめたホッレおばさんの興味は歯ごたえのある料理のようだ。




私のめでたしめでたしは遥か遠く遠くとなったが、いろんなむかしむかしのお話を覗き見できるのは面白いかもしれない。










ホッレおばさんな話のバージョンは色々あります。

名前もちょっと違ったりしています。

民話や童話面白いです。

継母継姉にいびられるパターンっていうのは古今東西廃れないんですね(笑)


ちなみに原作のローザは黒くベタベタのものが死ぬまでとれなかった…と記されていました。

一説によるとそれは黒死病でそれからヨーロッパにその病が吹き荒れたとも…


ここまで読んでくださってありがとうございましたm(__)m


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― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして、ランキングから来ました!私はホッレおばさんというお話を知りませんでしたので最初は「??」と言った感じだったんですが元の題材を知らなくてもこの主人公の堅実さと賢さがとても好きにな…
[良い点] ホッレおばさん! 子供のこれの童話は「私ならこうするのに」と思いながら読む事が多かったですが それを活字にして頂いた感じで楽しく読ませて貰いました。 冬の女神とのラストも良いですね 恋愛だ…
[一言] この話でわかった事は、顔さえ良ければさほど苦労せずに相手が見つかり 幸せになるって事でしょうか。(父と妹) 母親は浮気した父親なんか捨てて、姉と二人で暮らしていけばいいのに。 駆け落ちしても…
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