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「びっくりしました。ヘリオスさんが動物が苦手なんて」
「……仕方ねえだろ。いい思い出ねえんだから」
イェソドが作ったサンドウィッチを食べ終えてから、猫は目覚めてすぐに去って行った。
とうとう空気を読んでくれたか、とほっとした。
正直、サンドウィッチの味など、どこかへ吹っ飛んでしまった。
「人には、色々と苦手なものもあるので、仕方ないですよ」
「……なんだよ、セレーネは苦手なもん、あんのか」
「ありますよ。料理はもちろん苦手ですし、虫は苦手です。お化けも苦手ですし、こうして異性の方と接するのは、本当は苦手です」
そう言ったセレーネの表情は、少し陰りが見えて。
「なんだ。昔、なんかあったのか?」
ヘリオスは、思わず問いかけてから、しまったと思った。
けれど、セレーネは少し俯き加減で話し始めた。
「凄く単純な事なんですよ。私、ドジでのろまで、何をするにも役に立たなくて。異性には特に嫌われてました。『ドジでのろまの役立たず』って」
そう言うセレーネは辛い、悲しい、そんな表情は全くせずに。
ただ昔を思い出して、なつかしむような表情でそう言った。
「でも」
セレーネは、言葉を続けた。
「私、今こうやってヘリオスさんといる時は平気なんです。……不思議と、平気で。なんだか、とても安心するんです。私を受け入れてくれる異性の人って、珍しくて」
そう言ったセレーネは、ヘリオスに向けて優しく笑んだ。
その笑みには、悲しみも苦しみもなかった。
ただ、柔らかい笑み。
「……馬鹿。惚れてる女に、そんなことするかよ」
大きな手が、ぐしゃりとセレーネの頭を撫でて。
「そんなお前も、可愛い」
「……え」
ヘリオスがストレートに言うと、不思議そうな表情をしてから、少し頬を染めたセレーネが、そこにいた。
そんな事、今まで誰にも言われた事はなかったのだ。
ドジ、のろま、それだけはよく言われていたのはよく記憶している。
だから、異性には少しだけ、苦手意識があったのだ。
けれど、そんなドジでも可愛いのだと言われて、心拍数が上がって行くのを、セレーネは感じていた。
恥ずかしいような、よくわからない気持ちになった。
だから、言葉に詰まった。
そう言われて、どう切り返せばいいのかわからなかったからだ。
ただ、相手はヘリオスだ。
こういう女性の扱いも、慣れているのかもしれない。
そうも感じた。
けれど、どうも彼の言葉からは本気だという感じしかにじみ出ていなくて。
感じた事のない心拍数、ヘリオスの優しい瞳に目を奪われる。
顔が赤くなるのも、止められなくて。
セレーネは初めて感じるその気持ちに、戸惑っていた。
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