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2-4

「びっくりしました。ヘリオスさんが動物が苦手なんて」


「……仕方ねえだろ。いい思い出ねえんだから」


 イェソドが作ったサンドウィッチを食べ終えてから、猫は目覚めてすぐに去って行った。

 とうとう空気を読んでくれたか、とほっとした。

 正直、サンドウィッチの味など、どこかへ吹っ飛んでしまった。


「人には、色々と苦手なものもあるので、仕方ないですよ」


「……なんだよ、セレーネは苦手なもん、あんのか」


「ありますよ。料理はもちろん苦手ですし、虫は苦手です。お化けも苦手ですし、こうして異性の方と接するのは、本当は苦手です」


 そう言ったセレーネの表情は、少し陰りが見えて。


「なんだ。昔、なんかあったのか?」


 ヘリオスは、思わず問いかけてから、しまったと思った。

 けれど、セレーネは少し俯き加減で話し始めた。


「凄く単純な事なんですよ。私、ドジでのろまで、何をするにも役に立たなくて。異性には特に嫌われてました。『ドジでのろまの役立たず』って」


 そう言うセレーネは辛い、悲しい、そんな表情は全くせずに。

 ただ昔を思い出して、なつかしむような表情でそう言った。


「でも」


 セレーネは、言葉を続けた。


「私、今こうやってヘリオスさんといる時は平気なんです。……不思議と、平気で。なんだか、とても安心するんです。私を受け入れてくれる異性の人って、珍しくて」


 そう言ったセレーネは、ヘリオスに向けて優しく笑んだ。

 その笑みには、悲しみも苦しみもなかった。

 ただ、柔らかい笑み。


「……馬鹿。惚れてる女に、そんなことするかよ」


 大きな手が、ぐしゃりとセレーネの頭を撫でて。


「そんなお前も、可愛い」


「……え」


 ヘリオスがストレートに言うと、不思議そうな表情をしてから、少し頬を染めたセレーネが、そこにいた。

 そんな事、今まで誰にも言われた事はなかったのだ。

 ドジ、のろま、それだけはよく言われていたのはよく記憶している。

 だから、異性には少しだけ、苦手意識があったのだ。

 けれど、そんなドジでも可愛いのだと言われて、心拍数が上がって行くのを、セレーネは感じていた。

 恥ずかしいような、よくわからない気持ちになった。

 だから、言葉に詰まった。

 そう言われて、どう切り返せばいいのかわからなかったからだ。

 ただ、相手はヘリオスだ。

 こういう女性の扱いも、慣れているのかもしれない。

 そうも感じた。

 けれど、どうも彼の言葉からは本気だという感じしかにじみ出ていなくて。

 感じた事のない心拍数、ヘリオスの優しい瞳に目を奪われる。

 顔が赤くなるのも、止められなくて。

 セレーネは初めて感じるその気持ちに、戸惑っていた。


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