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2-2

「お姉ちゃん」


「何ですか? いーちゃん」


「なんで昨日の男が家の中にいるの!」


 イェソドはヘリオスを見るなり、そう言った。


「いらっしゃったので、お家にお招きしただけですよ」


 そう言って、イェソドに微笑みかけながらヘリオスに冷たいお茶を差し出す。

 一方のヘリオスはこの姉妹のやりとりを昨日から見ている。

 イェソドは淡い青色のツインテール、姉と正反対の勝気な黒い瞳、フリルの服は好きそうだが、どちらかというとパンクテイストのフリルが好きなようで、姉のふわふわ感とは違い、びしっと決まった服が好きらしかった。

 姉よりは少し身長は低いが、あまり変わらないし、傍から見ればどちらが姉で妹か、あまりわからないかもしれないぐらい、口うるさい妹はしっかりしている。

 どうやらヘリオスはイェソドにはあまり受け入れられていないようだった。

 一方のセレーネには、自分がここに来た目的すらよく理解されていないようだった。

 普段のセレーネも、恐らく毎日イェソドに何かしら言われているのだろうが、全く堪えていない。

 ただうかがい知れるのは、イェソドはセレーネが大切であること、愛故こうして口酸っぱく何度も何度も注意や助言をする事だと言う事だ。


「お姉ちゃん、この人どんな人か知ってるの?」


 この問いかけのセレーネの返答に、ヘリオスは愕然とする事になる。


「ヘリオスさんですか? 有名な方ですか?」


 まさか、と思った。

 ヘリオスの噂を全く知らないという事実は、ただただヘリオスを絶句に追いやった。

 何より、昨日会ったばかりの見ず知らずの男を、例え自然に着いて来ていたとしても、いとも簡単に家に招き入れるとは、セレーネはちょっと色んな意味で危ない。

 正直、リアルにヘリオスは驚きと不安に襲われた。


「有名っていうか、いろんな意味で有名だよ。女の人よく連れて歩いてますよね?」


 やっぱりイェソドは、ヘリオスに対して警戒心がたっぷりのようだった。

 ヘリオスを見る瞳に、完全ににじみ出ている。


「別に俺は好きで連れ歩いているわけじゃない。女が寄ってくるだけだ。けれど、勘違いするな。彼女に会いに来たのは、俺のモノにするためだ」


「じゃあ、ヘリオスさんはとてもモテるんですね。ああ、でも、こんなに綺麗なお顔立ちとモデルさんみたいな雰囲気だと、そうかもしれませんね」


 一方のセレーネは納得したように、うんうんと頷いて言う。

 どうやら、本当にヘリオスの事を知らないらしい。

 それに、あまり人の話も聞いていないのか、ヘリオスの言葉も気に留めていない。

 逆にイェソドは頭を抱えた。

 セレーネは、完全にヘリオスに狙われている事をはっきりと理解したからだった。

 イェソドは、ヘリオスの噂にいい印象を抱いていない。

 数多の女性をたぶらかしている遊び人、そう思い込んでいるからだ。

 好きで連れ歩いているわけではないというヘリオスの言葉も、正直あまり信じてはいない。

 仮に、妹で大切な姉を取られる、というのはどこか複雑な気分なのだ。

 姉が好意を持って相手が好きなら応援するところなのだが、立場が真逆すぎる。

 というより、そもそも姉は相手の言っている意味がさっぱりわかっていない。

 それに、こんな姉だ、いつどんな過ちが起こるかわかったものではない。

 本気か遊びかわからない男に、姉を渡せるわけがない、妹として姉を守る義務がある。

 現在のところ、そう感じていた。

 ただ一人、セレーネだけは、イェソドがそんな感情を持っている事や、ヘリオスがなぜ自分のモノにしたいからと言って会いに来たのか、そんな感情すら気づかないまま、重大な事項だと思ってはいないのだ。


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