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「じゃあ、行ってきますね」
「お姉ちゃん、メモ通りに買い物して来てね。あと寄り道禁止! ふらふらーってどっか行くの禁止だからね!」
「わかってます、いーちゃん。私、子供じゃないんですから」
そう言って、姉――セレーネは「行ってきますね」と家から出て行った。
「……やっぱりお母さんの買い物、あたしが引き受けるべきだった……」
いーちゃんと呼ばれた妹――イェソドは、頭を抱えて、面倒だと断った事を後悔した。
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卵と牛乳が切れている、という母の言葉に「いーちゃんが行かないなら、私が行きます」と自ら言ったセレーネ。
他のものもお願いと買い物メモを持たせて、セレーネに買い物を頼んだ。
しかしこの姉、セレーネは、妹であるイェソドよりもしっかりしていない。
むしろ、それすら本人は気づいていない。
「あ、猫さん」
行き帰りに必ず通る公園で、セレーネは猫を見つけた。
そして、イェソドに「寄り道をしないように」と言われた事をすっかりと忘れ。
「日向ぼっこですか? 私も少しだけ、一緒に日向ぼっこしましょう」
そう言って、猫が日向ぼっこしながら気持ちよく眠っている横に、セレーネはそっと座った。
特段、猫は目覚めることなく、すやすやと眠っている。
「こんなにお天気がいいと、眠くなってしまいますね」
猫の隣で、暢気にそんなことを言うセレーネ。
買い物した袋を傍に置いて、空を見上げる。
青い空に、雲がふわふわと漂っている。
「今日も平和ですね」
幸せそうに、そう呟いた。
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