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フリマの宇宙人

 日曜日に川島さんに呼ばれて国際平和管理機構へ行った。またしても厄介な仕事を依頼されてしまった。


 今回は警察からの依頼ではないので殺人事件とかではないだろうと思っていたら、宇宙人だって!

 昨日天王洲にある商業施設で行われたフリーマーケットに宇宙人が現れたらしい。その宇宙人に接触して、地球に来た目的と仲間の有無、そして潜伏場所を聞き出すことが今回の依頼内容だそうだ。

 宇宙人と戦ったりしなくていいんだよね? だいたい宇宙人ってどんなんだろう? 見ただけでわかるのだろうか?

 そんな事を思っていたときだった。

「フリーマーケット、楽しそう! フリマで販売ってやってみたかったんだ。何を売ろうかなぁ」

 みらいが脳天気な事を言い出した。普通にフリマへ買い物に行けば良いじゃないか!

「そうですか、それならば来週出店出来るように手配しておきましょう。

 ええぇぇ、なんで川島さんまで! みらいのペースに巻き込まれているよ~

 フリーマーケットの出店はみらいの希望で、ヱヴァンゲリヲンのフィギアなどのグッズを売ることになった。グッズは川島さんの方でそろえてくれるらしい。

「昨日フリーマーケットに現れた宇宙人、正確には地球外知的生命体って言うのですが、その宇宙人を特定する為の資料作成を進めています。来週の土曜日には資料を渡せるようにしておきます」

 川島さんはそう言って微笑んだ。


 帰宅してからのみらいは、テンションあがりっぱなしで、翌日からフリーマーケット出店の準備に追われていた。

 インターネットで何かを調べていると思ったら、いきなり私を呼んで自分のボディーサイズを測らせて、その後私のサイズも測っていた。翌日には張り切ってどこかへ出かけて行ったし。きっとみらいは妙な事を考えているに違いない。こわいよ~

 そして金曜日には、届いた荷物をうれしそうに開きながら言った。

「明日の衣装はこれにするから、着てみようよ」

「これって! この格好でフリマに行くの?」

「当然でしょ。お店やるからには、目立たないとね! どうせならお客さん、イッパイ来てくれた方が楽しいでしょう?」

「ムリムリ、無理だよ~、こんなので外歩けないよ~、恥ずかしいよ~」

「そんなこと言わないの! 明日の朝、警視庁の浜田さんが車で迎えに来てくれるから大丈夫だよ。あかり、すごく似合っているよ。カワイイ!」

「そう言う問題じゃないと思うんだけど……」

 いくらヱヴァのグッズ販売だからって、コスプレまですることは無いと思うけど……。みらいがアスカで私はレイのコスプレ。せめて第三新東京市立第壱中学校の女子制服なら良いのに、みらいが用意したのはプラグスーツ! も~最悪!

「あかりは後ろに居るだけで良いからね。接客は私がするから」

 当然でしょう! こんな格好で外に出るだけだって恥ずかしいのに、接客なんか出来るわけがないでしょう! みらいは妙にテンション高いし。嫌な予感がどんどん大きくなってきた。


 当日の朝、みらいと私がプラグスーツに身を包んで待機していると、浜田さんが車で迎えに来てくれた。今回からエージェントとしての活動をするときは、最低でもアイメークとカラーコンタクトレンズを着用することにした。リーンベルみたいにメイクで気持ちが強くなれたらいいんだけどね。

 私は川島さんが用意してくれた資料を読みながらフリマ会場へ向かっていた。資料に依ると、『今回の地球外知的生命体はオリオン大星雲(M42)にあると思われる惑星から来たらしい。ただし惑星の正確な位置及び名称は不明である。そのため便宜上オリオン星人と呼ぶ。外見の特徴は、地球人に酷似したいわゆる美形で、身長は190センチ程あり金髪で碧眼、暗い場所では皮膚が微かに発光する』そうだ。

 暗い場所ではってことは、昼間は光ってないの? 日本では確かに目立つけど、これじゃぁダダの美形外国人じゃない。それらしい人を見付けたらどうしよう。いきなり捕まえる訳にはいかないよね? 日本語を話すのかな? 強いのかな? 武器とか持っているのかな? この資料、肝心なところが書いてないじゃない! まぁ、宇宙人なのに詳しく書いてあったら、それはそれで怖いけれど……。

 みらいは宇宙人のことには全く興味がないみたいだ。資料も受け取っただけでろくに見もしない。みらいの頭の中は、フリマのことしか無いんだろうな。あーぁ憂鬱、今日はどうなるんだろう?


 天王洲に到着したら、お店の準備はすでに出来ていた。フリーマーケット会場の中でも、全体が見渡せる絶好の場所を確保してあった。でも、全体が見渡せるだけに、何処からでも見られる場所だ。こんな所でプラグスーツですか?

 みらいは商品確認に余念がない。本当にフリマやりたかったんだね。

「あかり、その椅子取ってぇ。私、ここに座るから、あかりはそっちね」

「はいはい、わかりました。ここで良い?」

「オッケー、じゃぁ、今日一日よろしくね」

 周囲にはイロイロな店が入り乱れている。左隣りは若い女性三人組みの古着屋さん。シャツやスカート・ワンピース等とアクセサリーも売っている。

 正面は雑貨屋さん。ママより少し年上くらいのおばちゃんが一人でやっているようだ。

 左隣りは若いお姉さんがふたりでやっている古本屋さんだ。普通の本も売っているけれど、七割ほどがアニメ雑誌やコミックだった。とても嬉しいことに、二人のお姉さんもコスプレをしていた。初音ミクがいる。もう一人の名前はわからないけど、やはりボーカロイド系だろう。いくらか気が楽になった。

 しかし、ここの二店だけが浮いている事は紛れもない事実だ! 後は出来るだけ人が寄ってこないように祈ることにしよう。


 時間がたつにつれてフリマのお客さんもしだいに増えてきた。まだ宇宙人の特長に合致する人は見当たらない。

 ただ、私達と隣の古本屋さんの前には、カメラを持った男の子が集まって来ちゃった。みらいと隣のボーカロイドさん達は握手をしたりポーズをとったりと、愛想よく撮影に協力している。

 私もみらいに促されて仕方なくポーズをとり、男の子達のカメラに収まっていた。

 写真を撮られている割にはグッズの売上は少なくて、みらいと一緒に撮影されたアスカのフィギアと、私と一緒に撮影されたレイのフィギアが各一点売れただけだ。

 それでも、みらいはテンションマックス状態! 私のテンションはダダ下がりだ。

「あかり、良いじゃない、その冷めた感じ。レイちゃんっぽいよ、あかりも役者だねぇ」

 みらいが満面の笑顔で言う。

「そんなのじゃ無いよ! 全く、こんなに写真撮られて恥ずかしいよ!」

 こんな写真がネットとかに載っちゃったらどうしよう?


 お昼を過ぎた頃から、お店の前に集まる男の子の数がどんどん多くなってきて、とうとう警備員さんが整理を始めた。

 どうやら、みらいと私とボーカロイドさん達の画像がネットにアップされているらしい。そのせいで人が集まって来ているようだ。どうしよう、来週から学校行けなくなっちゃうよぉ。


 男の子達のカメラに撮られるがままになっている間に、フリマの終了時間が迫ってきた。

「あかり、そろそろ終わりの時間だね。片付けようか」

「そうだね、さっさと片付けちゃおう! 残念ながら宇宙人現れなかったね」

 ヤッター! やっと終わった! と喜んでいると。

「うん、来なかったね。明日はきっと来るよ。明日も頑張ろうね」

「えっ! 明日もやるの?」

 みらいさま~、お許しを~。

「当然でしょう! まだ任務は終わって無いんだからね」

 ガックリ肩を落として、ますますテンションを下げていると、フリーマーケットの運営会社の人がやって来た。私達と隣のボーカロイドさん達に話があるらしい。

「今日はお疲れさま。貴女方のお陰様で大勢のお客様が来場してくれました。有り難うございました」

 ヤバッ! 感謝されちゃったよ。明日もヨロシクなんて言われちゃうのかな?

「大勢のお客様が来てくれたのは良いのですが、一部のお客様と出店者からクレームが入りまして……。貴女方の撮影をする人達のせいで、買い物が出来ないとか、店にお客様が近付けないと言ったクレームなのです。それで、本当に申し訳ないのですが、明日はコスプレ無しでお願いしたいのですが、いかがでしょうか?」

 あぁ~神様はいるみたいだ。

 みらいとボーカロイドさん達は渋々了承した。私は危うく飛び上がって喜んでしまうところだった。


 今日もフリーマーケットでヱヴァンゲリヲングッズの販売があるのに、みらいのテンションは昨日の様には上がらない。販売自体よりもコスプレの方がやりたかったみたいだ。

「ねぇ、誰がクレーム出したと思う? 向かいの雑貨屋のオバサンだと思うんだけど。撮影でポーズとっていたときに、目が合ったらスッゴク睨んでいたし……、絶対そうだよ!」

 朝食を食べながらみらいが言い出した。

「誰だって良いじゃない、確かに撮影の男の子達で通路は通れなくなったし、グッズもあんまり売れなかったじゃない。それに警備員さんまで出て来ちゃったんだから仕方ないよ」

 私も雑貨屋のオバサンだと思っている。でも、そのお陰で今日はコスプレをやらなくて済んだ。オバサンには感謝しています。

「あー、何かムカつく! 今日はグッズ売りまくるぞ!」

 みらいは完全に目的を間違っている。宇宙人のことは忘れてしまったの?

「あのさぁ、川島さんからの依頼覚えている? 今日は宇宙人探しを頑張ろうよ」

「わかっているけどさ……。何だかスッキリしないんだよねぇ」

 今日も浜田さんが車で迎えに来てくれた。

「浜田さん、今回は警察からの依頼じゃ無いのに協力してくれるんですね? 助かっちゃいますけど、お仕事の方は大丈夫なんですか? 警察の仕事も忙しいんでしょう?」

「僕のいる部署は結構自由になるんですよ。それに機構には、いつも捜査協力してもらっているからね。これくらいの事はしないとね。みらいちゃんとあかりちゃんにも会えるしね」

「そう言えば、川島さんは現場に行くことは無いんですか?」

「彼が現場に出たって言う話しは聞いたことが無いな。その割には現場の状況に詳しいんだよな。不思議だけどね」


 みらいのテンションはフリーマーケット会場に着いても低いままだ。仕方がないので、準備は私が仕切るしかなかった。隣の古本屋さん達も、何だか元気がない。やっぱりコスプレ無しが不満な様だ。

「コスプレはダメなんて、ガッカリだよね」

「そうだよね、昨日は楽しかったのに、残念だよねぇ」

「今日はワンピースのナミとロビンのコスプレを用意していたのに……。ヤル気出ないよね」

 元アスカのみらいと元ボーカロイドさん達はコソコソと愚痴を言い合っている。昨日ネットに載ったため、カメラを持った男の子も来ていたけど、コスプレをしていないので残念そうな顔で帰ってしまった。それでも昨日より売上は良い感じで、みらいもしだいに元気になってグッズ販売に精を出している。

 お陰でみらいに接客を任せて、私は宇宙人探しの為、周囲の監視に集中する事ができた。


 お昼のお弁当を食べ終わった頃だった。フリマ会場に背の高い外国人らしい人がやって来たのを発見した。

「みらい! あれ、あの人、そうじゃないかな?」

 見るからに美形の外国人を指差して言った。

「かもしれないね。とりあえず後をつけて見ようか」

 みらいと私はお店を隣の元ボーカロイドさん達に頼んで、美形外国人を尾行することにした。


 適当な距離を保ちながら尾行を開始した。美形外国人は運河に架かった橋を渡り、さらに運河沿いを歩いて行く。

 尾行なんて初めてだからどうして良いかわからないけれど、意外と気付かれないものだ。普通の人はあまり振り返ったりしないみたいで、美形外国人も一度も振り返ることなく国立港大学の敷地へと入って行った。

「どうしよう、大学に入って行っちゃったよ」

「大学なんて誰が入ったってわからない所だよ。普通に入って行けば問題ないよ」

 さすが女子大生、警備員さんに止められる事もなく普通に入れた。でももし、プラグスーツを着ていたらどうだったろう? クレームを出してくれた雑貨屋のオバサンには、再度感謝です。

「あの美形外国人、この大学のひとかなぁ」

「それはわからないよ、私達だって入れるような所だからね」

 大学入口付近の建物はきれいで近代的だったが、奥の方にはかなり古い建物も建っていて、美形外国人はその古い建物のひとつに入って行った。みらいと私もその建物に入ることにした。

 建物内は外と違って尾行には向かない。見通しが悪いし、廊下の角を曲がるとすぐに部屋のドアが並んでいる。そのうえ、基本的には無関係な人はいないはずなので、怪しい動きはとても目立ってしまう。出来るだけ目立たない様に注意をして進んだ。

 美形外国人が廊下に並んでいる部屋のひとつに入って行ったのを確認した。その部屋のドア横には、民俗考古学研究室と書いてある。

 みらいと私がお互いの目を覗き込みながら、ドアをノックしようか考えていたときだった。

「どうかしましたか?」

 背後から声を掛けられた。みらいと私は驚いて、同時に振り返った。そこには、さっき部屋に入って行ったはずの美形外国人が立っていた。美形外国人は、呆然と立ちすくむみらいと私に笑顔で言った。

「こんにちは、君たちはここの学生じゃ無いよね。僕のことを尾行していたみたいだけれど、何か用事が有るのかな? 立ち話も何だから、中に入ろうか」

 美形外国人は研究室に入ってしまった。みらいと私は黙ったまま、お互いの意思を目で確認してから美形外国人の後について研究室へ入った。

「コーヒーと紅茶、どちらが良いかな? コーヒーはインスタントしか無いけれど……」

「えっと、紅茶をいただきます」

 みらいが答えた。

「そちらのお嬢さんは?」

「あっ、私も紅茶を……」

 かろうじて声は出た。でも、この美形外国人は本当に宇宙人なのだろうか? 端整な顔立ちに優しげな微笑み、危険な感じは全く無いけれど、どこか現実ばなれしている。CGのキャラクターと対面しているみたいだ。


 私達は、美形外国人に促されてテーブルについた。

「はい、紅茶です。私の顔に何か付いていますか?」

 みらいも私も美形外国人の顔をじっと見つめていたことに気付き、慌てて目を逸らした。

「僕からも聞きたい事がいくつか有りますが、先に貴女方の質問に答えた方が良いかな? そんなに緊張してないで、何でも聞いてごらん」

 未知の人と話をするのは、みらいに任せた方が良いだろう。私は暫くの間は黙っていることを決意した。


「あの~、外国の方ですか?」

 みらいは当たり障りの無いことから聞き始めたつもりだったのだろう。しかし、話しはいきなり本題に入って行った。

「外国と言えば外国かもしれないけど、少しニュアンスが違いますね。私は地球の人間ではないからです。実はオリオン大星雲の中にある惑星から来たので、あなた達地球人が言うところの宇宙人という事になります。惑星の名前はその星の言語で無いと発音できないので、「クラリオン」としておきましょうか。あなた達地球人が想像した、反地球という存在の名前です。そして、私の名前はスティーブ。これも地球で暮らすための呼び名ですけど、呼び名が無いと不便でしょう。現在はこの国立港大学で准教授をしています」

 この人、何の躊躇もなく自分が宇宙人だと告白しているよ。こんな告白をするのは、かなりの変人か、冗談と本当の区別がつかない異常者、又は私たちの事や目的を知っている人のどれかだろう。それ以外には思いつかない。どの場合でもヤバイよ~

「そうですか。では、スティーブさんがクラリオン星から地球に来た目的は何ですか? まさか観光ってわけ無いですよね?」

 みらい凄い! 全く動揺してないよ。こんなに異常な会話なのに普通に話をしているよ~。

「目的ですか? それは我々クラリオン人の歴史調査の為です。我々クラリオン人の歴史には、大むかし他の星に移住した人々がいたと言う記録が有るのですが、その移住先は明らかになっていないのです。それが最近の調査で、地球である可能性が高いという事が判明しました。地球の歴史を調べると、今の地球人の生い立ちには多少不自然な部分が有るのです」

 なんだか話が大きくなってきた。私達地球人の生い立ち? 全然わからないよ~

「不自然なことって?」

 みらいはこの状況をどう理解しているのだろう?

「まずは、地球人の歴史を理解してもらわないと話が進みませんね。現世人類ホモ・サピエンスは、200万年前にアフリカでアウストラロピテクス属から別属として分化して、40万から25万年前に現れました。人類は230万年前から140万年前まで存在していた原人ホモ・ハビリスの頃から石器を使い始め、長い時間をかけて次第にその技術を洗練させてきました。しかし、5万年前以降、現生人類の文化は明らかに大きな速度で変わり始めました。既存の技術に新しい知識を取り入れ、釣り針・ボタン・骨製の針のような人工物を作り、死者を埋葬し、衣類を作り、高度な狩猟技術をあみだし、洞窟壁画を描き出しました。このホモ・サピエンスの唐突な文化的進化の時期と、我々クラリオン人の星間移住時期とがほぼ同時期であることがわかったのです。私はその時期に、地球人とクラリオン星人の間で文化的交流が有ったのではないかと考えています。クラリオン星人の文化や志向と、現在の地球人のそれが似ているものですから……。その文化交流について調査・研究をするために地球に来ました」

 う~ん、学校の授業を受けているみたい。解ったような、解らないような、ビミョーな感じだ。みらいは解ったような顔をしているけど、どうなのだろうか?

「一人で来たわけじゃ無いですよね。何人で来たんですか? 宇宙船で来たんでしょうけど、その宇宙船は何処に有るんですか? あと、現在何処に住んでいるのかも教えて下さい」

「今回地球に入ったのは私一人だけです。宇宙船には、研究者が一名と乗務員が三名残っていて、現在は大気圏外に停泊しています。私は天王洲のホテルに宿泊しています」

 ホテル名とルームナンバーを教えてくれた。

「クラリオン星人は、数千年前からクラリオン星と地球を行き来していて、地球人の生活に入り込んでいます。地球人と結婚して子孫を残している人たちもたくさんいます。今では区別がつかないくらい地球に入り込んでいますよ」

 もしかして、近所にクラリオン星人やその子孫が居るのかもしれないんだ。

「話がちょっと長くなりましたが、理解して頂けましたか? 次は、僕の質問に答えてもらえますかね? まずは、貴女方二人の名前を教えて下さい? 名前を知らないと不便ですからね」

「私がみらい、そして、この子があかりです。不躾ぶしつけな行動と質問をお詫びします」

 みらいと私は軽く頭を下げた。

 みらいは、こういう時に頼りになる。さすがお姉ちゃんだ。聞きたいことを概ね聞き出してくれた。後は早く帰りたい。

「みらいさん、あかりさん。僕が宇宙人だと言っても、二人とも驚かなかったですね。と言う事は、僕が宇宙人であることを知っていて尾行をしたわけですね。なぜ判ったのですか? 以前から地球に居る仲間に、国際平和管理機構という組織が有ることは聞いています。貴女達はその関係者なのですよね?」

 どこまで話していいのか解らないけど、きっと私達よりスティーブさんの方が国際平和管理機構の事についても詳しいのだろうと思った。みらいも同じ意見らしく素直に答えた。

「はい。スティーブさんが地球に来た目的を聞き出すことが、国際平和管理機構から私達への依頼でした。私達の知らなかった、地球人とクラリオン星人に関することまで、色々教えていただきありがとうございました」

 スティーブさんは、帰り際に、いつでも遊びに来なさいと言ってくれた。


 フリーマーケット会場に戻ったのは、もう終了間近の時間だった。お店では、私達の代わりに、元ボーカロイドさんがエヴァグッズの販売をしてくれていた。

「ただいま~、ありがとう、大変だったでしょう。はいこれ、店番してくれたお礼」

 みらいは、帰りがけにコンビニで買ったスイーツを渡した。

「お帰り~、ヘッチャラだったよ。エヴァグッズ、結構売れたよ。昨日のネットを見た人がかなり来てさ。写真の美人姉妹が居ないって怒っている人もいたよ。私達が居るのに、失礼しちゃうよね!」

 元ボーカロイドさんは楽しそうに笑いながら言った。元ボーカロイドさん達と、元アスカと元レイの4人はコンビニスイーツを食べてから、お店の片付けを始めた。


 お店を片付けたみらいと私は、国際平和管理機構へ行き、川島さんに報告することにした。みらいが宇宙人のスティーブさんから聞いた話をすると、川島さんは大きくうなずいた。

「そうでしたか、クラリオン星人ですか。クラリオンとは、太陽を挟んで対称の位置に有るため、地球からは見ることの出来ない惑星で、地球と同じ様に生命が生まれ、同じ様に進化をしていると考えられていた惑星のことですね。スティーブさんの研究はどのくらい進んでいるのでしょうか? ちょっと気になりますね。まあ、歴史研究の為の地球滞在ならば特に問題ないですね。ご苦労様でした」


 川島さんはアポなしで来てもいつも居るようだ。私達への依頼用資料の作成とか、その為の下調べとか、いったい誰が行っているのだろう? 川島さんはずっとこの部屋に居るのだろうか? 今回の宇宙人に関しても、直接話した訳でもないのに、こんな突拍子もない話を簡単に信じられるのはなぜなのだろう? だいたい、国際平和管理機構って言う組織自体、いったい何なのだろう? インターネットで調べても何もヒットしないし、だいたい私みたいな女子高生がエージェントなんて……。謎が多すぎるよ。


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