とある会社での朝の光景
仕事をしていて思いついてしまいました。
秘書 「おはようございます…社長、また徹夜で内職をされていたのですか?」
社長 「おはよう。いやぁ、ついつい夢中になってしまってね。もう朝かい?」
秘書 「その通りです。ついでに言うと、私は朝から薔薇に囲まれたおっさんの姿など見たくありませんでした。私の爽やかな朝を返して下さい」
社長 「はっはっはっー。イケメン社長としてメディアにも取り上げられる私に薔薇が似合わないということなど、あるはずがないだろ」
秘書 「寝言は寝て言って下さい。くどい顔に薔薇が加わると、くどさが増すだけですから」
社長 「そこは掘りが深いイケメンと言ってくれないか?若い女子社員たちは、そう言ってくれているぞ」
秘書 「私は若くないので、社長がくどい顔をしたおっさんにしか見えません」
社長 「まったく、酷いな。それより、これをみたまえ。1万本目にして初めて納得がいく薔薇を作れたよ。この花びらの重なり具合、色、形。どこから見ても完璧だ!」
秘書 「では、さっさと業者に納入して下さい。会議の時間になります」
社長 「いや、この一本は納入しないぞ!どこかに飾ろう!」
秘書 「やめて下さい。そんな安っぽい薔薇を飾ったら社長室の品が落ちます。いえ、その前に清掃員が捨てるでしょうが」
社長 「捨てるというのか!?この最高傑作を!」
秘書 「それが最高傑作に見えるのでしたら、空き時間に眼科の予約を入れておきます。しっかり検査をしてもらって下さい」
社長 「この薔薇のどこがいけないのだ!?」
秘書 「花びらの重なり具合、色、形、全てです」
社長 「全否定!?」
秘書 「はい」
社長 「容赦ないなぁ。そんなんだから結婚も出来ないんだぞ」
秘書 「社長に言われたくありません」
社長 「私は選り取り見取りだから、いいのだよ」
秘書 「では、早く結婚して跡継ぎを作って下さい。もし、跡継ぎを作る気がないのであれば、次期社長を誰にするのか遺言を書いてから死んで下さい」
社長 「私に早く死んでほしいように聞こえるなぁ。ちょっと、耳鼻科を予約してくれ」
秘書 「予約の必要はありません。そのとおりですので」
社長 「うわっ!思ったよりグサっときた。でも、跡継ぎなら君との子どもがいいな。君に似て図太く強く育ちそうだ」
秘書 「セクハラで訴えますよ」
社長 「君から振った話題なのに!」
秘書 「訴えられたくなければ仕事をして下さい」
社長 「はい、はい。じゃあ、平井君に薔薇を回収するように連絡してくれ」
秘書 「平井君とは?」
社長 「この内職を紹介してくれた社員だよ」
秘書 「……ちょっと、その平井君とお話をしてきます」
社長 「じゃあ、ついでに伝言を頼むよ。次はもっと単純な内職がいい、と」
秘書 「わかりました。平井君を沈める直前に伝えておきます」
バン!
社長 「ドアはもうちょっと優しく閉めようよ。さて、次はどの内職にしようかな」
しばらくして
社員A 「女ターミネーt……秘書が来た!」
社員B 「今日のターゲットは誰だ!?」
社員H 「やめろ!オレは無実だぁぁぁぁ!」
社員C 「平井が捕まった!」
社員D 「全館放送を流せ!今日のターゲットは平井だ!」
放送 『緊急放送、緊急放送。全社員に告ぐ。平井は一斉に避難するように。至急、平井は避難するように』
社員E 「毎朝、毎朝、誰かが捕獲されるな、この会社は」
社員F 「しかも理由がわからないし、法則性もない。昨日は中田で、一昨日は佐々木だったからな」
社員G 「でも、あの女ターミネー……いや、秘書から逃げ切ったら社長から金一封がもらえるらしいぞ」
社員I 「もらえた奴いるのか?」
全員 「……………………」
まさか社長が次の内職を選ぶ時間かせぎのために、社員を生け贄にしていることなど、社員たちは知るはずもなかった。
失礼したしました。