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杏の思い(2)

 堕天使さんは、話の飲み込みが早かった。ということで、早速応急措置をすることになった。

「これから何をするんですか?」

吸血鬼さんが答える。

「生み直しだ。」

「また体内に入れられて、また堕天使さんの奥さんから生まれてくるんですか…?」

「うむ。うまくいけばこれで元の姿に戻れる。」

「ただし、だな。」

堕天使さんが口を挟む。

「堕天使の力は失われるかも知れないぞ。今は姿を変えることに集中して生むからな。」

「そうなんですか…。」

そうなると、杏のパーティー内での居場所が無くなってしまう。頼むから全て成功してくれ。そう願い続けていた。


 生み直しが終わった。

 杏は明らかに13歳らしい格好になっていた。とても華奢で、スタイルがよかった。顔は大して変わっておらず、幼さが漂っていた。ポニーテールの髪形が可愛かった。

「成功したようだな。」

「そうですね。ところで、力は残っているのでしょうか?」

「そこの杏とやら。飛べるか?」

杏は、華奢な体から羽根を出現させた。そして、室内を1周して下りてきた。

「飛べる…。よかった。」

「全て成功したようだな。」

 僕と杏は、2人で笑いあった。嬉しそうなその笑顔が、僕の心に残った。 さて、戻ったらさよならか。現実は悲しいえど、杏が望んだことなんだから受け入れよう。僕も、杏が家族と会うのを希望しているはずだ。だから、泣くな。泣くなよ、僕。


 地球に戻ってきた。杏はちゃんと元の姿に戻ったようだ。

「どうする?まず家族に会いに行くか?」

杏は悩んだ後、静かにうなずいた。

「家族への言い訳、考えてるのか?」

「全然。どうすればいいかな?」

「もしもの時は、僕の家にお世話になってましたって言ってもいいよ。呼び出されたら、話合わせるから。」

「ほんと優しいんだな。ありがとう、斬…さん。今までありがとうございました。」

そっか。一応僕の1つ下なんだな。

「うん…。とりあえず、じゃあね。後でパーティーの皆にも会いに行こう。」

「わかりました。ありがとうございました、さようなら。」

後ろ姿を見送った後、少し泣いた。

 さて、ほぼ1人暮らし用に家の整理するか。


 翌日の新聞。けっこう大きめに記事が載っていた。『行方不明少女、無事発見』ははは。僕の家に泊まり込んでた事まで載ってるし。こりゃ事情聴取求める電話もそろそろ来るかな…。

 その時。ピンポーン。ん?誰だろ…。


 はぁぁ…。緊張して疲れた。警察署に入るのは初めてだった。話合わせるのは何とか出来たけど、「何ですぐ報告しなかった。」と追及されてそれに答えるのはすごく大変だった。迷惑かけてすいませんでした、と謝って終わりだったので、思ったよりは楽だった。

 明日、午前中の練習終わったら皆にも話しとくか。

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