釣り仲間(2)
夏休みに入った。
今週、海水浴に行った時の夢を何度も見た。おかげで朝からシャキンとしている。ほんと、一生忘れられないだろうな。
「斬さん、本当ですか?」
エイかサメかの話をすると、釣り仲間達はものすごい食いついてきた。
「この辺でエイやらサメやらが釣れたっていう話は、基本投げ釣りの外道だな。」
「んじゃ、今回は全員投げ釣りで行くの?」
「専門に狙うなら、な。基本待ちの釣りだから、俺は横で渚釣りをする。」
「俺も投げタックル一式ともう1セット別のタックル持ってきますよ。」
「そうか。んじゃ、今週中に仕掛けとか調べとくよ。」
次の日。
「とりあえずエイの方調べてきた。仕掛けはワイヤー使うね。だいぶヘビータックルだった。エサはドジョウ。」
「ドジョウですか。魚食べるんだったら、ルアーでも行けそうですね。」
「俺のタックルだったら余裕だな。ギャフとナイフ忘れるなよ。」
「そうですね。尻尾には毒あるので釣ったら切らないといけませんし。」
「ギャフか…。ツルツル爺さんに借りるか。元漁師だし持ってるだろ。」
「ツルツル爺…?」
「誰ですか?」
「あぁ、僕の親戚だよ。元漁師の。」
「そうなのか。」
「んじゃ、日曜日だな。」
「楽しみにしてるよ。」
「絶対釣りたいですね!」
そして日曜日。先週海水浴に行った狭い砂浜に3人と大夢という、いつものメンバーが集まった。
砂浜の端の方に大夢と海督、小さめの堤防の砂浜側に僕、磯に面している側に大可士がスタンバイして、釣りを始めた。
3人思い思いの場所にエイ釣り用の仕掛けをぶっ込み、もう1本の竿で釣りをする。
お、来た。最初に魚がかかったのは僕だった。クイクイと竿を引っ張るような引き。
「お、案外引いてる…。」
期待しながら仕掛けを上げると…
「ふ、フグーー!?」
間抜けな顔がそこにあった。しかも無駄に大きい。ツルツル爺さんの奥さんはフグ捌けるはずだし、持って帰ろ。
海督がルアーで釣り上げたのはヒラメだった。
「だいぶ大きくないかー?」
「87cmでーす!!」
すげぇな。この浜には化け物サイズの魚しかいないのか?
「むっ…!!」
巧みな竿さばきで大可士が釣り上げたのは、メジナだった。
「へー。この辺にこのサイズのメジナいるのか。」
「俺もこの辺では手のひらサイズしか見たことないな。」
測ってみたら32cmあった。
浜に来て2時間が過ぎた。皆それなりにいい釣果を上げていたが、エイ釣り用の投げ竿に反応があった人はまだいない。
「昼ちょっと前か…。そろそろあの時間だな。」
そう呟いた途端、僕の投げ竿が海中に引きずり込まれかけた。
「おおぉぉ!?」
ドラグが鳴るどころの話ではない。叫んでいる。
「来たか。」
大可士が振り向いて声をかける。海督と大夢もこっちを見ている。
「前のよりデカイかも…?」
竿が手からすっぽ抜けていきそうだ。少しずつ糸を巻く。竿が上がらない。
「悪い。手伝って。」
「あいよ。」
2人がかりで竿を持つ。何とか魚が逃げるのと逆方向に引っ張る。リールを頑張って巻く。
「斬さーん!」
「なんだー?」
ギャフを抱えた海督が声をあげる。
「浜で上げた方安全じゃないですかー?」
「そうだな。うおぉっ!?」
また引きずり込まれそうになった。
「ごめーん、海督も手伝ってー!!」
「わかりました!」
3人がかりで、少しずつ浜に魚を誘導する。
格闘すること20分。腕から汗が吹き出ている。こんなに汗をかいたのは久しぶりだ。
「そろそろ上がるぞ!」
「大夢!ギャフ頼む!」
「わかってるって。」
ギャフを大振りに構える。寄せ波で波打ち際に近づいてくる魚影を、3人はしっかりと見た。
「…デカイ。これがエイか?」
「水族館でもこんなのは見たことないな。」
「とっとと仕留めよう!!」
「おう!」
次の寄せ波で、更に近づいたエイにギャフをかけた。
「おらぁぁぁぁぁ!!!」
ギャフにかかった魚体を、大夢が力づくで引っ張り上げる。
「「「よっしゃあ!!」」」
魚体を見て、しばし呆然。それだけ大きかった。
「尻尾切るぞ。」
僕が尻尾を切ると、少し小さく見えた。だが、やはり大きかった。よく竿がもったものだ。
ここで、大夢が現実を知らせる。
「あの…これ、チャリで持ってけなくないっすか?」
「「…あ。」」
海督と僕の声が重なる。
「俺は、計画を立てた時点で疑問に思っていたが…。」
「大可士、どうする…?」
「お前、里亥さんのメールアドレス持ってるんじゃないのか?」
「あ、迎えに来てもらうの?」
「そうするほかないだろ。」
というわけで、里亥さんが来るまで少し待機。
「お、来た。」
「何釣ったんだぁ?おぉ、すげぇ…。これ中学生が釣る魚じゃねぇだろぉ?」
「いや、釣れちゃったんで…とりあえず家までこの魚持ってきたいんです。」
「運び屋ってわけかぁ?ま、乗ってけ。」
こうして家に魚を降ろした後、歩いて浜にチャリを取りに行く。
そして戻ってきた。
「あー、なんなら時間あるし今食ってくか?」
僕は料理が好きなので、エイを皆に食べさせることにした。
「これ、捌けんの?」
「…頑張れば。」
…そして1時間後。斬は諦めかけていた。この化け物エイめ…。仕方なく、大可士のメジナと海督のヒラメを刺身にして出した。
「あれっ、エイは?」
「諦めた。親戚に頼む。」
「うおっ、メジナうまいっす!」
「本当か?」
大可士も食いつく。
「うまい。」
楽しく食事を終えて、全員が帰った後。台所はエイによって7割が占領されていた。ツルツル爺さんの家に電話かけて、奥さんに色々捌いてもらうか。
なんだか今年の夏休み、すごく楽しくなりそうだな。




