政策による『人間の兵器化』
1980年代後半。地球に迫ってきて、1995年には衝突すると考えられていた巨大隕石への対策を、世界規模で考えなくてはいけなくなっていた。そこで、先進国でありながら外交に閉鎖的であった日本(海外との貿易面では協力的であった。いくつかの国とは同盟や条約を結んでいた。)にも、国際会議への参加が求められた。しかし政府は「自分の国は自分で守る」と言ってその要求を突っぱねた。先進国である日本の開放化は当時の世界で最も求められていたことであり、それを達成した国家は史上最高の国家として永久的に褒め讃えられるとまで言われた。そこで日本の開国に乗り出したのが、隣国であるソーレーン連邦であった。1987年、ソーレーン連邦は対話を求めた。日本政府は丁寧にお断りして、一度は引き下がった。その後、これが最後と通告された1994年の対話で決裂した日本とソーレーン連邦は、戦争寸前の状態になった。ソーレーン連邦は海岸沿いにミサイル発射塔を大量に新設した。1995年を過ぎ、結局巨大隕石は地球を掠めて通過した。その頃日本政府はというと、超極秘研究として『人間の兵器化』を研究者と共に研究していた。その間に、ソーレーン連邦は直接攻撃を仕掛けてきた。日本は、同盟国であり世界の保護者と呼ばれるザウス合衆国との同盟を利用してザウス合衆国の軍隊に応戦をしてもらった。その間に研究は進み、ついに完成したのが、肉眼では見えづらいほど小さいチップのような『特殊才能開化装置』だった。
なぜこれが『人間の兵器化』に繋がるのかというと、これは装着された個人個人が没頭している趣味、特技、習い事などの才能をレベルアップさせ、それに合わせた特殊能力を手に入れられるというものだった。また、その趣味などに関わる服装をしていると人間から並外れた攻撃力、防御力、身体能力も得られた。しかしその能力は凶器並みなため、着けたらすぐ使えるという訳ではなかった。レベルアップできる趣味などは1つに限られ、レベルアップさせるための条件もあった。その条件が、『その才能で他人に大きな影響を与える』というものだ。
こんな『特殊才能開化装置』を新生児に装着することを義務付ける法律が『新生児に対する特殊才能開化装置装着義務法』だった。これが1997年に成立して、翌1998年4月1日0時から実行された。国内ではものすごい反対意見が噴出したが、この情勢ではやむ無しとの声が多く、成立した上で実行された。
しかし2001年1月、『特殊才能開化装置反対集団』が大規模クーデターを起こした。政府は、国民を守るためということで『新生児に対する特殊才能開化装置装着義務法』を廃止し、新生児への装着も2月28日をもって停止した。この結果、反対集団の活動も収まった。だが、この年の末頃、ザウス合衆国の軍が少しずつ撤収していく予定であることを発表。ソーレーン連邦も兵隊の投入を少しずつ減らし、その代わりに機械兵を導入すると発表。日本の先進技術をもってソーレーン連邦の機械兵を迎え撃つと声明を発表したものの、苦戦した。
2003年には、反対集団がまた活動を活発化。今度は特殊才能開化装置の取り外しを求めて活動した。政府はまた国民を守るためということで、取り外しに近い手術を受けられるようにすると発表。そして、それ以来反対集団は活動していない。
無効化の手術は希望者が殺到した。その無効化の方法は、特殊才能開化装置にしか作用しない特殊な光線をそのチップにあて、溶かして体内を巡らせ、最終的に便と共に体外に排出されるという方法だった。
ソーレーン連邦がよく攻撃してきたのは主に秋田県の沖の海上の基地であった。基本的に本土直接攻撃は日本もソーレーン連邦もしなかったため、犠牲は最少限だった。しかも、現在(2005年)は高性能な機械兵による攻防が主だったので死者はほとんどいなかった。
このような紆余曲折があった末、今に至った…。と、長ったらしい担任の話を要約して何とか理解できた。僕ってやっぱり着いてるんだよな、その装置。でも、今まで何も起きてない。小6なのに、まだ。おかしいのかな…?
この思い悩む少年(?)こそ、館斬。彼は何度も『特殊才能開化装置』を起動した人間の戦いを見てきた。かっこいい。純粋にそう思っていた。でも、彼にはそれが着いていても起動しない。そんな悩みを抱えた少年を主人公とする、難しいようで楽しい話。それが、この物語である。