万引きの理由
スーパー丸●で万引き犯に間違われた日から、2週間以上経った。
「レフティちゃん、どこ行っちゃったのかしら・・・。 もう2週間も帰ってこない。」
右「・・・ふぁあああ。大丈夫だよ。おいらたち、死ぬことはないんだし。」
「そうはいってもねえ・・・。」
今日も帰ってこないかな、とあきらめかけたとき・・・
年の頃は5、6歳の今時珍しいおかっぱ頭の女の子が鳥居をくぐりぬけた。
「ただいまー! 」
「え? あなた誰? どこの子? 」
あ、変身解くの、まだだった。どろんどろん
そこには、みなれた白い狐が佇んでいた。
「レフティーちゃん! 」
左「ただいま。あぁ、疲れた。」
「どこ行ってたのよ! 心配するじゃない! 」
左「どこって、万引き婆さんのところよ。あの婆さん、もう万引きしないと思うわよ。」
そう言って、レフティが語りだした。
☆
あたしね、あの婆さんの後、ついて行ったの。そしたらなんと、大きなお屋敷に住んでるのよ。婆さん、大きなお屋敷で、一人で暮らしてんの。
婆さんの心の中、読んじゃった。旦那さんは実業家で、結構稼いでいたけど、10年ほど前に亡くなってるわ。子供は、娘さんがいたんだけど、小さい頃に病気で亡くなっちゃってるの。そんなんで、一人暮らししてる、さびしーい婆さんなのよ。
そこで、あたし、その娘さんそっくりに化けて、婆さんが屋敷の外に出たときに、声をかけてみたの。
婆さん、目をまんまるくして、「そ、園子かい?」って。園子ちゃんていうのね、娘さん。わたし、わからない振りして首をかしげたら、安心したようで、「・・・お嬢ちゃん、なんの用?」って聞くから、「スーパー丸●ってどこ?」って聞いたの。婆さんも買い物に行くつもりだったみたいで、ついておいでって私を連れてってくれたわ。
その日は婆さん、万引きしなかった。
それから毎日、婆さんが買い物に行くのを見計らって、婆さんの前に娘さんの姿で現れてあげたの。「おばあちゃん、今日もスーパーに行こう?」って。
もともと、そんなに悪い人じゃないのよ。道すがら、いろんな話を聞かせてくれたわ。旦那さんと旅行に行った話とか、戦争の話とか。
スーパーに入ると、あたしはすっと姿を消すわけ。婆さん、最初のうちはきょろきょろあたしを探してたみたいだけど、そのうちあきらめちゃうの。どこの子かわからないしね。
そして、今日。
いつものように、婆さんのお屋敷前で待ってて、婆さんと一緒にスーパー丸●に行った。今日の婆さんの話は、園子ちゃんのことだったわ。生まれてからうんと可愛がってたんだけど、体が弱くて・・・ ガンが見つかってからはあっという間だったらしいわ。
婆さんがスーパーに入るのを見届けて、姿を消したの。
婆さん、ずっと万引きできなくてストレス溜まってたんでしょうね。
油揚げの袋とって・・・ 自分の手提げ袋に入れたの。
あたし、その瞬間、娘さんの姿で現れて「おばあちゃん、なにやってるの?」って声をかけたの。
婆さん、最初に会った時みたいに、目をまんまるくしてあたしを見たわ。
そして・・・ 「園子、そんなおばあちゃん嫌いよ。」って言ってやったわ。
婆さん、まんまるくした目から涙をぼろぼろこぼして、「園子、ごめんよ、ごめんよ」って泣きだしたわ。
わんわん泣くもんだから、店員さんが寄ってきたの。それで、店を飛びだして今帰ってきたってわけ。
「・・・。一番見られたくない人に見られたってことね。しばらくしたら、また園子ちゃんになって、会ってあげなよ。そうしないと、また悪さするかもよ。原因は寂しさみたいだし。」
右「・・・婆さんのことはいいから、油揚げとってきておくれよ! 」
左「とってきちゃだめでしょ。
そうだ! 今度婆さんに、ここに油揚げをお供えしなさいって言ってあげるわ。そのぐらいの仕事はしたでしょ、あたし。」
☆
それからしばらく経ったある日。例のお婆さんがやってきて、お賽銭箱の横に、油揚げの袋を二つ、置いて行きました。
「神様、ありがとうございます。園子に会わせてくれて、ありがとうございます。」
左「ライトの分も頼んどいたのよ。えらいでしょ、私。」
右「わーい、ありがとう! レフティちゃん! 」
あのぉ、私の分は・・・?




