嫌悪
「わーい♪ わーい♪ は・じ・め・て・の給食♪ おなかすいた~♪ ごはんおかわりしよっかなぁ~♪」
上機嫌のライト君。レフティは、といえば・・・
「・・・」
つーんとおすましして、自分の席に座っている。
そんなレフティに、女子のある一人が、声をかける。
「あの・・・ よかったら、こっちで一緒に給食食べない? 」
「・・・ もちろん、よくってよっ」とレフティ。心なしか、ほっぺが赤くなってる。
レフティ、机を抱えて、女子軍団の机の島に合流する。
「ライト、だっけ? 君もこっちおいでよ! 」
男子グループから声がかかる。
「アイあいサー!! もちろんさー!! みんなで食べれば、もっとおいしーQ--ショーック!! 」
・・・ ライトの言うことについて、いちいちコメントするのはやめておきましょう。
給食当番から給食を受取り、レフティもライトも、それぞれ女子の島、男子の島に漂着したところ、事件は起こった。
は、は、はくしょーーーーん!!!
男子の1人が、盛大にくしゃみした。くしゃみした男子の前に座っていた男子は、給食を咀嚼した食物とよだれの飛沫を顔に浴び、硬直している。
「ご、ごめん!! おれ、花粉症とかになっちゃって、吉岡、ホントにごめん!! 」
「・・・ きったねえなあ、もう・・・ とりあえず、ハンカチ貸してよ」
吉岡君、ハンカチで顔を拭くと、席をたって流し場に顔を洗いに行った。
その様子を見ていた先生、やおら吉岡君の席に近づくと・・・
「あー、衛生上問題あるし、吉岡の給食は片付けるね」
先生、吉岡君の給食のプレートをさも汚なそうに運んで、片付けてしまった。しばらくして、吉岡君が教室に戻ってきた。
「あれ、俺の給食は? 」
「先生が汚いって、片付けちゃったよ? 」
「えぇー、じゃ、新しいのもらえるんですか、先生? 」
「そんなわけないだろ・・・ あー、コンビニでもいって、なんか買ってきてもいいぞ」
「そんなぁ、お昼のためにおこずかい持っているわけないじゃないですか。先生、くれるんですか? 」
「ふざけんなよ、俺の問題じゃないだろ。じゃあ、我慢しろ、一食くらいなんだ」
くしゃみをした男子が、吉岡君に申し出る。
「ごめんな、吉岡、おれがくしゃみしただけなのに・・・ 俺の分、やるよ」
周りの男子が応援する。
「ほら、ごはん、半分とっていいぞ。」
「おれ、にんじん苦手だから、たべてくんない? 」
「ぼくは牛乳がにがてだから、のんでいいぞ」
「ちょっと待った、お前ら。だめだ、だめだ。給食はちゃんとひとりひとりの栄養を考えてできてんだ。それをわけちゃったら、足りなくなるだろ。食べかけを食べさせるのも衛生的じゃないし。これは吉岡と加藤の問題だ、分けちゃダメだ」
えええええええ!!!!! おい、先生よ、ナニ言ってんだ? 友達の助けあいをそんなことで否定するのか。
「先生、僕、お腹空いてるんだけど・・・ 」
「くしゃみした、加藤に言えよ」
ぽかーん・・・
開いた口がふさがらないとは、このことだ。一体、この教師何を考えているのか? 給食を分け与えて、何か健康上の問題が生じるのを恐れているのか? 結局、被害者である吉岡君は、給食を食べることなく、この日一日を終えることになった。
次の日のこと。
「レフティちゃん、どうよ、あの先生? 」
「どうもこうも、ありゃ駄目ね。一体どういうつもりかしら? 」
「おいら、あの先生嫌い! ヨッシー、お昼のあとずっとお腹空かしてたよ」
そんなことを言いながら、あたいらは今日も学校に向かった。そして、また事件が起こった。
「はい、みなさん、コンパスを出して下さい」
「あれ? あれ? ない! 」
「コンパスの足の片方が針になってます。そっちの足をノートに・・・ おい、吉岡、何してんだ。早くコンパス出せ」
「先生、僕のコンパスなくなってます」
「なに~? お前、家から持ってくるの忘れただけだろ」
「違います! 僕、ちゃんと確認して、机の中に入れました」
「あ~、もういい、お前は隣を見とけ」
そういって、算数の授業は進んでしまった。先生、どうして吉岡君の言うことはハナから取り合わないんだろう。信じていないのだろうか。それとも・・・
そして、吉岡君のコンパスは、意外なところから出てきた。
授業が終わり、教室の掃除をしているときだった。レフティ、ライトもお掃除当番で、吉岡君たちと教室の片付けをしている。吉岡君が机を教室の後ろに運んでいるとき、ライトが吉岡君と軽くぶつかってしまった。
「悪い! ごめんなりよ~ 」
「いいよ、大丈夫・・・ あれ? これって・・・ 」
「あ、コンパス落ちちゃった・・・ ってこれ、吉岡って名前が貼ってある」
「うん、僕のだ」
「この机、誰の? 」
「斎藤んじゃん。斎藤! お前なんで、僕のコンパス持ってるんだよ! 」
「え、いや、その・・・ さっき拾って・・・ 」
「さっきって、いつのことよ。拾ったなら、すぐ吉岡君に言いなさいよ」とレフティ。
「レフティ、いいよ、コンパス戻ってくればいいから」と吉岡君。
掃除当番の間でごたごたしていたところ、先生が教室に入ってきた。
「おい、なにやってんだ、早く片付けろ」
「先生! 吉岡君のコンパス盗ったの、斎藤君なんです」とレフティ。
「え? 本当か? ・・・斎藤、ちょっと来い」
そういって、先生は斎藤君を教室の外に連れ出した。なにかごちょごちょ話していたかと思うと、斎藤君を先に帰して、先生が教室に戻ってきた。
「吉岡、コンパス戻ったらそれでいいんだろ? じゃ、掃除終わったら帰りなさい」
「先生、それひどくないですか? 算数のときに、僕の言ったことウソじゃなかったでしょ? 」
「先生、お前にウソだなんて言ったか? もうどうでもいいじゃないか、帰れ帰れ」
吉岡君、しょぼんとして帰って行った。神様修行中のあたいとしては甚だ不穏当ながら、この先公、プチっと殺しちゃっていいですか? と思わざるを得なかった。




