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ロック・ザ・稲荷  作者: ひざ小僧
第6章 温泉に行こう
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地縛霊

す、すみません!! すぐコンコン通信で、穴守様の許可をいただきます!


「そうするがよい。ほう(報告)・れん(連絡)・そう(相談)は神の間でも通用するのじゃよ。・・・ ところで、四谷の稲荷よ、ちょっと頼まれてくれんかの?」


ははぁ~! なんなりと、この私めでお役にたてることがあるのであれば!


「そこの駒井旅館な、温泉プールがあるのじゃ。そこにな、居着いちゃった霊がおるんじゃ。地縛霊ってやつじゃな。」


れ、霊ですか! なるほど!


「なるほども掘るほどもないのじゃ。わしはあやつを救おうと思って、ずっと念を送っているんじゃが、一向に反応せんのじゃ。この間の戦争な、あれにいって、南方で亡くなった霊らしい。この地に縁があるからやってきて、駒井旅館に居着いたことはわかっているんじゃが、それ以上は自分の殻に閉じこもってしまって・・・。


わしほどの力をもってしても、ああ頑固に凝り固まってしまうと・・・。そこでお主じゃ。飛んで火にいるなんとやら。ひとつ、あやつを救ってくれんかの? 」


ええええ!! そんなご無体な! あたいらは、修善寺に縁もゆかりもございませぬ! まして、山王様でさえ無理なら、あたいらなんて・・・!


「いやいや、わしよりあやつに近いお主らなら、もしかして少しはこころを開くんじゃないかと思うのじゃ。・・・ どうだ、やってくれんか。成功したら、お主らの格を上げていただくよう、豊受姫殿(穴守稲荷のご祭神)に推挙してもいいぞ?」


ははははい! やらせていただきます!





はぁ~、とんでもない仕事請け負っちゃったよ。・・・ あれ? あたいら、休暇を楽しみに来たんじゃないの? う・わぁー、やられた。結局、仕事じゃないの!


「しょうがないよ、あんだけ上位の神様がでてきちゃったら、逆らおうったって、逆らえないじゃない? 」


レフティはいつだって現実的だ。


「あんな爺さん、やっつけちゃえば?」


ライトは妙に楽天的。


「ばかっ! あんな爺さんでも、その気になれば、あんたなんかフッと消せちゃうのよ! 」


「ほ、ほんと!? ごめんなさいっ! 」


あたいらは、夕餉のころに、駒井旅館に帰って行った。


台所を探し当てた。板さんたちがいそがしく準備をしている。次々と、お膳が出来上がってくる。


あたいらは、夕餉(ゆうげ)の「精」をいただく。すぃ~


においをかぐような感じだろうか。すぃ~。おいしいねぇ。


「うん、おいしい! 」「おいしいわね 」


実体化したら、もっとおいしいんだけど・・・。あ、あたいらが「精」を吸うと、もれなく「薄味」になります。なので、関東、東北でこれをやると、お店が文句を受けることしばしばです。ごめんね!


地縛霊とやらに会う前に、風呂はいろっか。


「「賛成! 」」


駒井旅館のお風呂は、明治初期から変わっていない。まず、きちんとした洗い場がない。一応、ボディーソープ、コンディショナー、シャンプーのセットはおいてあるが、席毎のカランやシャワーなどない。お風呂奥中央に、(かめ)が二つある。ひとつは熱い源泉が流れ、もうひとつは冷水がたまっている。客は、桶に熱い湯と冷たい湯を混ぜ合わせ、洗い用に使うという寸法だ。


それはさておき、お風呂に入る前に、ひと悶着あった。ライトが、一緒に入るといってきかないのだ。あたいは構わないんだけど、レフティがとても嫌がって・・・


「ばかっ! 何考えてんのよ! 実体化して入るんだから、いやよ! 」


「なんでだよー。僕だけ男湯なんて、さびしいよお。それにちょっと怖いし・・・ 」


ぶつぶついいながら、ライトは男湯に入って行った。


あたいは、自分の記憶の中で一番絶好調だったときの体で、実体化した。


お湯をはじきそうな、ぴちぴちした白い肌。背中から臀部にかけて、なめらかな曲線をえがく。つんと上を向き存在を強調する双丘。双丘の頂きには、ピンクのボタン・・・。ほどよく脂をつけたお腹から下に、ふわふわと柔らかそうな若草。すらりと伸びた足から、お湯につけていく。


はぁあああ~。極楽、極楽。やっぱ、温泉っていいわあ。


レフティは、花ならば蕾、果実ならば青い林檎といった少女の姿になって、あたいの隣でお湯に身を沈めた。ふっくらとしかけの胸や、これから発達しそうな細腰など、そちらの趣味の向きにはたまらないだろうな。


「ロックちゃん、なにじろじろ見てんのよ! いやらしい・・・ 」


い、いやらしいって何よ。それにしても、日ごろの疲れが吹き飛ぶ感じねえ。


「ホント、ホント。はぁ~、癒される~。」


癒されるなんて言葉、どこからおぼえてくるんだか。そのとき・・・


「たいへんだ、たいへんだ、たいへんだ!!」


裸のライトが飛び込んできた。ちん○ん、まるだしだ。


「きゃーーー!!! 」


こら! ライト! 入ってきちゃだめでしょ!!


「あの爺さんがお風呂に入ってきたんだよ! いつまで遊んでるんだ、早く仕事しないと、消しちゃうぞって! 」


あたいとレフティ、同時に立ち上がって


「「そりゃ大変だ! 」」


ザバァー


「・・・ うわぉ」目をまんまるくするライト。

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