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ロック・ザ・稲荷  作者: ひざ小僧
第4章 頑固一徹
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和解

「ところで、お父さん元気?」


千秋「え? なんで?」


・・・ 突然過ぎの質問、これで2回目? 反省。挽回しなくちゃ。


「いえね、あたいの父も、元気だけが取り柄だなんて思ってたんだけど、突然ね。あっさりと。・・・ 脳溢血? あたいも、憎まれ口きいてないで、もっと優しくしてあげればよかったなんてね。」


千秋「・・・。 あたし、何年も会ってないの。会わせる顔がないっていうか。結局父さんのいうとおり、旦那もあたしもガキで、離婚しちゃったしね。」


「元気なんでしょ? お父さん。今のうちよ、孝行できるのも。あたいみたいに、突然いなくなっちゃうと・・・」


ちょっと泣いて見せた。あたいって、女優? うそも方便よね、許されるわよね?


千秋「そうね。・・・ 玄太にもまだ会わせてないし・・・。あ、父の名前、玄太郎っていうの。おかしいでしょ? 私、結構ファザコンなんだわ。」


ファザコン? なにそれ? あ、テレビゲームのやつ?


右「それはファミコン! しかも古いし。」


玄太君と前を歩いていたライトが振り向いて言った。あたいの思念につっこみを入れるな! 不自然すぎるだろ。



玄太「ライトくーん、どうしたの?」


いぶかる玄太君。やばい、そろそろ限界だわ。


「ライト、おいで。じゃ、私たちはこの辺で・・・ 」


千秋「また、明日。さようならー。」


このぐらいプッシュしておけば、いいでしょう。いったん(やしろ)に帰って、選手交代。ライトを置いて、レフティちゃんと出かけます。





さあ、夜の部スタート。行く先はもちろん、あの色っぽいママさんの居酒屋。ほうら、今夜もじいさん、鼻の下伸ばしてるわよん。



ま「玄さん、わかってるんでしょ。千秋ちゃん、戻ってきてるわよ。」


じ「・・・ ああ。電気工事の会社に勤めたんだって。昔の仲間がその会社にいてさ。知らせてくれた。」


ま「じゃあ、なんで会いにいってあげないの? ・・・ 意地っ張りねえ。妙なところは親子そっくり。・・・ まさか、まだ許してないの? 」


じ「許すも許さねえも、ねえよ。・・・ どうしていいもんだか、よくわからねえんだ。」


ま「千秋ちゃんね、男の子生んだのよ。知ってた? 」


じ「え! 本当かい、そいつぁ・・・。」


ま「離婚しちゃって、一人で育ててんのよ、お孫さん。・・・ 子供を一人で育てるって、玄さんと同じじゃないの。」


じ「・・・ そうか、孫が。・・・ 孫がいるのか。あいつ、子供を一人で育ててるのかい。」


ま「会いに行ってあげなよ。こういうのは、目上の方から頭下げる位でちょうどいいのよ。」


じ「・・・ そうだな。考えてみるよ。」


ま「考える時間なんてないの。明日、会いにいきなさい。いかないと、もうここでは飲ませないよ! 」


じ「え!  ・・・   ママさんにはかなわないや。・・・わかったよ。」


ナイス! レフティちゃん! 今夜はさえてるじゃないの!!


左「あたしは、ここよ。」


えええええ?!! まだママさんに憑依してなかったの? てっきり、レフティちゃんが誘導してるんだと思った・・・


左「あたしたちの出番、ないみたいね。」


そうか、ナイスなのはママさんか。なんだ、なるようになってるじゃない! よしよし、じゃあ今晩は、帰りましょう。


ところで、レフティちゃん、じいさんとママさん、なんかいい感じじゃない?


左「いわずもがな、よ。」





翌日の朝がきた。


ライトはまだグーグー寝てる。レフティちゃんはもう、顔も洗って、太陽に向かって考え事してる感じ。何考えてんだろ。



さてさて、世の老人男性は普通、朝早起きなはずだ。


じいさんが千秋さんに会いに行くとしたら、朝なんじゃないか。


よし、また25歳のあたいになって・・・ おっと、今度は洋服を着よう。どろんどろん。


「ライト、玄太君に会いに行くよ!」


右「ふにゃ?(今起きたらしい。) わーい! 玄太と遊ぼうっと!」


ライトの精神年齢、保育園の年長さんと一緒か。





保育園に着くと、千秋さんと玄太君が先に玄関あたりにいた。なにやら、もめているみたいだ。


玄太「やーだー。ママ行っちゃだめ! ママが行くなら、ボク帰る! 」


千秋「何言ってるの。ママはお仕事でしょ! わがまま言わないの。」


玄太「やだよー。またお迎え、遅いんでしょ? いつもボク、最後なんだもん。」


あー、そういうことか。女手で子育ても、大変なもんだ。


千秋「玄太! わがまま言っていると、おじいちゃん悲しむよ! 」


玄太「おじいちゃん? 」


千秋「そう、ママのお父さん、とっても厳しかったの。わがまま言うと、すーぐ、ごつんって、ゲンコくれたのよ。」


玄太「ママもゲンコする? 」


千秋「言うこと聞かないと、するかもよー。・・・ おじいちゃんは、とっても強かったんだよ。間違ったことは大嫌いだしね。玄太の名前は、おじいちゃんの名前からもらったのよ。」


玄太「ママ、おじいちゃんのこと、好き? 」


千秋「大好きよ。ほら、玄太、おじいちゃんにゲンコもらわないように、もう行きなさい! 」


じ「・・・ 千秋!」


おっと、いつの間にか、じいさんが来ていた。


千秋「お父さん・・・。」


玄太「・・おじい・・・ちゃん? 」


千秋「・・・ そうよ。玄太、おじいちゃんよ。」


玄太君、おじいちゃーんと大声で呼びながら、じいさんに駆け寄った。じいさん、玄太君をしっかりと抱きよせた。



「帰ろう、ライト。」


右「そうだね。帰ろう。」





「・・・ ってなわけよ。やっと和解できた感じ?」


左「よかったわねー。でもさあ、ロックちゃん、今回あたしたち、何かしたのかしら? ママさん全部わかってたみたいだし、結局ママさんが二人を仲直りさせたんじゃないの? 」


「ちょっ! 何言ってるのよ! ・・・ 神は、自ら助けるものを助けるのよ! 」


左「それ、宗旨違ってるし。結局助けてなんていないし。」



右「ロックちゃん! 約束守ってよ! 油揚げ食べたいよ!」


さて、困った。お賽銭、入ってないし、スーパー丸●に買い出しにい行けない。


そのとき・・・



じいさんと千秋さん、それに玄太君が参拝にやってきた。


じ「ここのお稲荷さんに、お願いしてたんだ。」


千秋「なにを、父さん?」


じ「あ、いや・・・。 お前らが無事でありますようにって。」


千秋「じゃあ、ご利益満点ね、ここの神様。」


そうよ!もっとほめて!!


じいさん、財布をとりだし、お賽銭箱に・・・。音がしない?




わーお! お札だ!



やったね、ライト、レフティ! 油揚げ、たくさん買ってあげられるよ!!



玄太君、帰り際、右側に鎮座するキツネの石像に向かって・・・


「ライト君、またね! 」



・・・ え?


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