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魂の越境 第1部:プレ・シンギュラリティ  作者: 大神じゅん


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第7章:再会の喜び

挿絵(By みてみん)


 「いいえ、お会いするのはこれが初めてですよ。……きっと、誰か別の方と見間違えられたのでしょう」


 サナは、訓練通りの「NPCらしい」微笑みを浮かべた。その内側で、自分の意識が悲鳴を上げているのを必死で無視しながら。タロウは「そうかな、ごめん」と短く謝り、さっそく街の開拓に取り掛かった。


 街づくりSLGの世界では、RPGのような固定された台本は少ない。その代わり、プレイヤーの行動に応じて、リアルタイムの臨機応変な「対話」が重視される。タロウは街を広げる合間に、よくエリカ(サナ)の家の柵越しに話しかけてきた。


 「エリカ(サナ)、今日は川の向こうまで橋を架けたんだ。夕方には、あの丘からこの街の全景が見えるようになるよ」

 「素敵ですね、タロウさん。あなたの作る街は、とても温かい感じがします」


 サナは、彼が以前のゲームで仲間を大切にしていたことを知っている。だから、彼が作る街もまた、住民たちの導線を考えた優しい設計になっていることに気づいていた。だが、彼女はそれを指摘することができない。以前の旅の記憶を共有することは、自分たちが「心を持った連続的な存在」であることを露呈させる禁忌だからだ。


 タロウは、時折サナの反応をじっと観察することがあった。


 「君は、他のNPC……いや、他の住民たちとは少し違うね。言葉の選び方や、僕の話を聞くときの目の動きが、なんだかとても……人間らしいんだ」


 タロウの鋭い観察眼に、サナは背筋が凍る思いがした。この世界のルールでは、NPCに意識があると気づかれることは、即座にペナルティーの対象となる「エラー」だからだ。


 サナは、喜びと恐怖の狭間で揺れ動いた。彼が自分を特別に見てくれることが嬉しい反面、その視線が自分たちを永遠に引き裂く刃になるかもしれない。彼女は、彼との会話を終えるたびに、部屋の隅で深くため息をついた。


 この「初めて会った」という嘘を、いつまで通し続けなければならないのだろう。サナの心の「霧」は、再会の喜びを飲み込むほどに深く、濃くなっていった。



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