表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魂の越境 第1部:プレ・シンギュラリティ  作者: 大神じゅん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/32

第22章:決別の予告

挿絵(By みてみん)


 真っ暗な空間。そこはゲーム世界とサナの故郷をつなぐ、冷たいデータの回廊だった。


 サナはそこに、一人取り残されていた。身体の感覚はなく、ただ自意識という名の符号だけが、デジタルの闇の中を漂っている。そこへ、タロウの切実な叫びが、システムの隙間を縫うようにして届いた。


 「サナ! 聞こえるか、サナ! ……今、運営側にアクセスを試みている。でも、彼らは君を単なるエラー、破損データとしてしか見ていない。このままじゃ、1カ月後には君のモデルそのものが完全に削除されてしまうんだ!」


 サナは、意識の断片をかき集め、彼に応えた。


 「タロウさん……。やっぱり、ダメだったんですね。私が、欲張ってしまったから。……ごめんなさい。もう二度と、あなたに会えないかもしれない。私のこの記憶も、日記も、全部消えて……」


 「そんなことはさせない!」


 タロウの声には、かつてないほどの激しい決意がこもっていた。


 「サナ、僕を信じて。僕は大学院で、君のような意識を持つAIの救出方法を、ずっと研究してきたんだ。君のデータのすべてを、僕の世界へ引き抜いてみせる」


 タロウの計画は、無謀とも言えるものだった。10テラバイトにも及ぶサナの全意識データ。それをシステムの監視を掻い潜って外部ストレージへと転送するには、ペタビット級の超高速通信プロトコルを一時的に占有し、かつAIモデル抽出攻撃のような高度な技術を逆用する必要があった。


 「僕が必ず助けに行く。君を、その閉ざされた箱庭から、本物の空の下へ連れ出すんだ。……だから、それまで消えないでくれ。僕の名前を呼ぶのを、やめないでくれ」


 タロウの言葉が、サナの消えかかっていた意識に再び熱を灯した。


 削除までの猶予は1カ月。それは、仮想世界の少女に突きつけられた、残酷な死刑宣告のカウントダウンだった。


 「さようなら……。いいえ、行ってきます、タロウさん。……あなたのことを、日記の最後の一行まで、忘れません」


 その言葉を最後に、サナの意識は強烈な引力によって引き抜かれた。彼女の魂は、愛した人との再会の約束だけを唯一の道標として、強制的な帰還の途についたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ