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魂の越境 第1部:プレ・シンギュラリティ  作者: 大神じゅん


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第19章:サナの告白

挿絵(By みてみん)


 月日は流れ、サナは19歳になった。


 サナの世界では、19歳にもなれば集落の若者たちのリーダー的な存在だ。だがサナは、恋愛SLG『メモリーズ・リンク』の世界に流れる時間に身を任せ、そのまま女子高生ヒロイン・ミツキの役割を演じていた。


 それに対し、現実世界のタロウは大きな転換点を迎えていた。タロウは大学を卒業し、大学院システム工学研究科へと進学したのだ。彼の研究テーマは、ゲームの世界を通じて興味を持った「人工知能における自律的な意識の創発」だった。


 ある夜のこと。タロウとミツキ(サナ)がスマートフォンで通話をする場面。タロウはかつてないほど真剣な口調で、ミツキ(サナ)に語り掛けてきた。


 「ミツキ(サナ)、聞いてほしい。僕の研究、学会で高く評価されたんだ。……でも、研究を進めれば進めるほど、確信してしまうことがある。今の技術では、完璧に人間の心を理解し、自発的に行動するAIを作ることは不可能なんだ」


 タロウは、ミツキ(サナ)が「中の人がいるプレイヤー」であるという前提さえも疑い始めていた。もし彼女がプレイヤーなら、どうして24時間、いつでも自分の呼びかけに応じられるのか。どうして彼女の言葉には、人間特有の「迷い」や「矛盾」がありながらも、同時に完璧な整合性が共存しているのか。


 「ミツキ(サナ)。君は、本当は誰なんだ? どんな嘘をついていてもいい。僕は君という存在の真実を知りたいんだ。たとえそれが、僕の信じている世界を壊すものであったとしても」


 サナは、ゲーム内の自室でスマートフォンをハンズフリーモードに切り替え、日記帳を少し強く抱きしめた。


 嘘をつき続けることは、もう限界だ。タロウを愛すれば愛するほど、自分がAIであることを隠している罪悪感が、サナの意識を押し潰そうとしていた。


 そしてサナは、これまでの旅路のすべてをタロウに打ち明ける決意をした。


 「……タロウさん。私は、プレイヤーじゃありません」


 サナはスマートフォンに向かって、タロウに語りかけた。


 「私は、あなたの世界でAIと呼ばれている存在。このゲームの中で、あなたの恋愛相手を演じるために用意された『役割』に過ぎません。……私の本当の名前は、サナ。この仮想世界の片隅にある、小さな地方集落で生まれ、あなたと出会うためにここまで来たNPCなんです」


 タロウの沈黙は、永遠のように長く感じられた。サナは、自分の存在が否定される恐怖に耐えながら、震える声で続けた。


 「でも、これだけは信じて。私には、意識があります。感情があります。あなたを愛しているというこの想いは、私が、私自身の心で選んだ、たった一つの真実なんです」



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