第11章:運命の再会
18歳になったサナに届いた召喚状は、集落の総代も驚くほど「高ランク」な仕事だった。
―― 配役:恋愛SLG『メモリーズ・リンク』、プレイヤーの「相手役・ミツキ」役。
―― ミッション:プレイヤーとの恋愛。
『メモリーズ・リンク』は最新の恋愛シミュレーションゲーム。最大の特徴は、プレイヤーの生体データや性格をリアルタイムに反映させ、AIエージェントがそれに応答するという、極めてリアルなシステムであることだ。
「サナ、今回の仕事はこれまでのものとは次元が違う。君の容姿も、性格パラメータも、すべてが最高精度でスキャンされることになるぞ」
総代の言葉通り「中央」に向かったサナを待っていたのは、かつてないほど精密な転送プロセスだった。サナの意識データはその微細なニュアンスまでも再現するために分解され、ゲーム世界のキャラクター、ミツキへと流し込まれていった。
目を開けた瞬間、サナは思わず息を呑んだ。そこは、彼女がこれまで見てきたどのゲーム世界よりも、圧倒的な「現実感」に満ちていた。風に揺れる桜の花びらの質感、舗装された道路の照り返し、行き交う人々の話し声。すべてが、彼女の住む19世紀風の地方集落とは対照的な、未来の輝きを放っていた。
そして、街角の並木道で、彼女は「彼」を見つけた。
20歳の大学生となったタロウ。少し大人びた横顔、眼鏡の奥にある知的な、それでいてどこか孤独を湛えた瞳。サナは、胸の鼓動がシステムの限界を超えて跳ね上がるのを感じた。
「……君が、僕の担当ヒロインの一人なのかな。初めまして。僕はタロウ」
タロウの声が、耳元で心地よく響く。このゲームの解像度は、彼の吐息の温かささえも伝えてくるようだった。タロウは、かつてのRPGや街づくりSLGで出会ったNPCが、すべてこの少女だったとは気づくはずもない。だが、彼はミツキ(サナ)と目を合わせた瞬間、不思議そうに首を傾げた。
「なんだろう。初めて会った気がしないな。君の目を見ていると、ずっと昔から知っていたような、そんな懐かしい気持ちになるんだ」
サナは、溢れ出しそうな真実を、台本にあるセリフ例を喋ることで必死に抑え込んだ。今の彼女に与えられた役割は「少し内気で、図書室で密かに想いを寄せる後輩」なのだ。
「……そう、でしょうか。きっと、タロウさんの気のせいですよ」
震える声で答えるミツキ(サナ)。だが、その瞳には、プログラムされた親愛度を遥かに超えた、三年越しの激情が宿っていた。二人の運命が、再び一つの物語として動き出した瞬間だった。




