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正しくなくても、君のそば  作者: カティオ


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第3章 失敗(後半)

数日後、生徒会室に貼られた進行表が、一枚だけ差し替えられていた。

透が気づいたのは、たまたま早く来ただけだった。


行事担当の名前。

一箇所だけ、入れ替わっている。


理由は、想像できた。

前回の会議で決まった分担を、実際の稼働時間に合わせて微調整したのだろう。

より無理のない形に。


「これ、変わった?」

会計の生徒が、軽い調子で聞く。


「うん。本人から相談があって」

九条は資料をめくりながら答えた。


「大変そうだったから」


言い方は穏やかで、誰も疑問を持たない。

大変なら、変える。

それは正しい。


「そっか」

会計はそれで納得した。


透は、名前の移動をもう一度だけ見た。

最初に移された生徒ではない。

別の、あまり目立たない位置にいた名前。


「じゃあ、この体制でいこう」

九条が言う。


異論は出ない。

出るはずがなかった。


会議が終わり、透は資料を戻しに廊下へ出た。

曲がり角の先で、声が聞こえる。


「……私、外れたんだって」

小さな声。


透は足を止めた。

声の主は、差し替えられた名前の生徒だった。


「え、そうなの?」

友人の声。


「うん。無理しなくていいって」

少し笑っているような、そうでもないような声。


「まあ、確かに忙しそうだったもんね」


「そうだね」


会話は、そこで終わった。

慰めでも、反論でもない。

確認だけが残る。


透は、角を曲がらずに、その場に立っていた。

聞かなかったことにするには、近すぎた。


放課後、教室に戻ると、九条は一人で黒板の前に立っていた。

文化祭の流れを書き直している。


「九条」

誰かが声をかける。


「さっきの変更、助かるよ」

軽い調子だった。


「そう?」

九条は振り返り、頷いた。


「少し余裕ができると思う」


余裕。

それは誰にとっての余裕なのか。


その問いは口に出されない。

出す必要もない。


透は、資料を抱えたまま立っていた。

役割の一覧を、もう一度だけ見る。


そこに書かれているのは、判断の流れと、責任の所在。

迷ったとき、決める人、取りまとめる人。


正しく整理されている。

曖昧さは、ほとんどない。


廊下に出ると、後ろから声がした。


「九条がやってくれるなら、安心だよね」


「うん。揉めなくて済む」


安心。

揉めない。


その言葉が、並んで歩きながら、軽く交わされる。

誰も、重く受け取らない。


透は、足を止めなかった。

止める理由は、まだなかった。


校舎の外では、夕方の準備が進んでいる。

文化祭は、滞りなく動き出していた。


正しさは、まだ誰も傷つけていない。

間違いも、見当たらない。


それでも、透の中で、何かが確定した。

正しくやっているのに、間違えている――そんな失敗もあるのかもしれない。

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